のどのしくみとはたらき(読み)のどいんとうこうとうのしくみとはたらき

家庭医学館 「のどのしくみとはたらき」の解説

のどいんとうこうとうのしくみとはたらき【のど(咽頭、喉頭)のしくみとはたらき】

◎のどとは
◎のどの主要な症状

◎のどとは
 俗にのどと呼んでいるのは、医学上でいう咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)とを合わせた部分のことです(図「のどのしくみ(咽頭・喉頭)」)。
 こののどは、空気を出入りさせる気道きどう)(呼吸器)、声をつくる発声器(喉頭)、飲食物を通過させる消化管という3つの重要な役割をはたしています。
●咽頭(いんとう)のしくみとはたらき
 口を開けると見えるつきあたりの部分を中咽頭(ちゅういんとう)といい、これより上方の鼻の奥部分までを上咽頭(じょういんとう)といいますが、軟口蓋(なんこうがい)(図「口蓋扁桃の位置」)の影に隠れていて見えません。中咽頭から下の喉頭の部分までを下咽頭(かいんとう)といいますが、ここも舌で隠されていて見えません。
 上咽頭と中咽頭の境には、パッサーバン隆起(りゅうき)という隆起があって、飲食物を飲み込んだり、声をだしたりすると、ここがふくらみ、飲食物が鼻に入ったり、声が鼻に抜けないようにします。このはたらきは、軟口蓋との共同作業で行なわれています。
 下咽頭は食道に連結しており、喉頭は気管に連続しています。この喉頭の上には喉頭蓋(こうとうがい)というふたがあって、飲食物が通過するときには気管の入り口をふさぎ、飲食物が気管に入らないように保護しています。
●咽頭のおもな病気
 咽頭に炎症がおこるのを咽頭炎(いんとうえん)といい、かぜの初期におこることが多いものです。
 のどがつかえたりする感じがするとがんではないかと心配になりますが、この症状ががんであることはまれで、診察をしても、のどに病変の見当たらない咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)(「咽喉頭異常感症」)のことが多いものです。
扁桃(へんとう)のしくみとはたらき
 咽頭の粘膜(ねんまく)の下には、病原微生物の感染に備え、たくさんのリンパ組織が存在します。
 このリンパ組織が集まって大きくなったものを扁桃(へんとう)といい、上咽頭にある咽頭扁桃(いんとうへんとう)(アデノイド)や耳管扁桃(じかんへんとう)、口を開けたときに両側に見える口蓋扁桃(こうがいへんとう)、舌のつけ根にある舌扁桃(ぜつへんとう)などがその代表です。
 これらの扁桃は、中咽頭を取り囲むように存在しワルダイエルのリンパ環(かん)(咽頭環(いんとうかん)、扁桃輪(へんとうりん))と呼ばれています。
●扁桃のおもな病気
 扁桃に炎症がおこるのが扁桃炎(へんとうえん)(「急性扁桃炎」)で、口蓋扁桃の炎症とアデノイド増殖症(ぞうしょくしょう)(「アデノイド増殖症(腺様増殖症/アデノイド/咽頭扁桃肥大症)」)がその代表です。
 扁桃炎をおこすのはおもに子どもで、学童期をすぎると扁桃が萎縮(いしゅく)し、おこりにくくなる傾向がある、といわれています。これは、成長とともに体内の免疫機構(めんえききこう)が整い、扁桃の役割が終了するためと考えられています。
●喉頭(こうとう)・声帯せいたい)のしくみとはたらき
 男性ののどには、のどぼとけがあります。喉頭は、この位置にあります。
 喉頭の左右の壁からは、2枚のひだが張り出しています。これが、声のもとになる音をつくる声帯(せいたい)(図「声帯付近の縦断面(左右)」)です。
 声を出していないときには、2枚の声帯の間(声門(せいもん))は開いていますが、声を出すときにはぴったりと閉じられます。
 この声門を呼気(はく息)が通り抜けると声帯が震え、音が出ます。これが、声のもとになる原音(げんおん)です。
 この原音は、咽頭、鼻腔(びくう)、口腔(こうくう)で修飾されて声になります。
 女性の声帯は、長さが16~17mmですが、男性は約20mmと長く、幅も広いので、女性よりも太く、低い声になります。
 この声帯を動かしているのは反回神経(はんかいしんけい)です。反回神経が喉頭の筋肉を動かし、その筋肉が声帯を動かすというしくみになっています。
 また、喉頭の粘膜は非常に敏感で、異物が入ってくると、せき反射がおこり、異物を排出しようとします。
●喉頭・声帯のおもな病気
 喉頭炎(こうとうえん)(「急性喉頭炎」)が単独でおこることはまれで、たいていは咽頭炎(いんとうえん)(「急性上咽頭炎」)や扁桃炎(へんとうえん)といっしょにおこります。
 喉頭と声帯は腫瘍(しゅよう)の発生しやすい部位で、喉頭(こうとう)がん(「喉頭がん」)のほか、いろいろな腫瘍が発生します。
 声やことばに障害がおこること(「音声障害(声の病気)」)もありますが、その原因はさまざまです。

◎のどの主要な症状
 のど(咽頭、喉頭)に異常がおこったときの症状には、つぎのようなものがあります。
●発熱
 のどに、急性咽頭炎(きゅうせいいんとうえん)(「急性咽頭炎(のどかぜ)」)、急性喉頭炎(きゅうせいこうとうえん)(「急性喉頭炎」)などの急性の炎症がおこると、たいていは熱が出ます。急性扁桃炎(きゅうせいへんとうえん)(「急性扁桃炎」)のときには、38℃を超える高熱になります。
 熱が出ると、頭痛、全身倦怠(ぜんしんけんたい)(だるさ)、食欲不振などを感じることが少なくありません。
●知覚過敏(ちかくかびん)
 急性や慢性の炎症がおこると、粘膜が過敏になって、ちょっとした刺激が加わっても、のどがきゅっと細くなったり、嘔吐(おうと)がおこったりします。また、飲酒や喫煙でも同じような知覚過敏がおこります。
●知覚異常
 灼熱感(しゃくねつかん)(焼ける感じ)、蟻走感(ぎそうかん)(アリがはう感じ)、掻爬感(そうはかん)(かきむしられる感じ)、圧迫感、乾燥感、異物感(何かつかえている感じ)、掻痒感(そうようかん)(かゆい感じ)、閉塞感(へいそくかん)(のどが塞(ふさ)がっている感じ)などの症状をのどに感じることがあります。
 のどの病気の症状のこともありますが、いくら検査をしても、のどに病変が見つからないこともあります。
●痛み
 のどに炎症、蜂巣織炎(ほうそうしきえん)、結核(けっかく)、腫瘍、潰瘍(かいよう)、鋭い異物などが存在すると、のどに痛みを感じます。
 とくに飲食物を飲み込むときに強く感じることが多く(嚥下痛(えんげつう))、つばを飲み込むのも苦労することがあります。
●嚥下障害(えんげしょうがい)(飲み込みづらい)
 のどの痛みや腫瘍があると、飲み込みづらくなります。
 迷走神経、舌咽神経(ぜついんしんけい)、上喉頭神経(じょうこうとうしんけい)、舌下神経(ぜっかしんけい)がまひしても飲み込みづらくなります。
 反回神経まひでは、嚥下障害とともに声がれ(嗄声(させい))がおこります。重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)(「重症筋無力症」)、強皮症(きょうひしょう)(「強皮症(全身性硬化症)」)、球(きゅう)まひ、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)(「筋萎縮性側索硬化症(ALS/アミトロ)」)でも同様です。
●呼吸困難(息苦しい)
 扁桃の病気、のどの腫瘍や異物、喉頭けいれんなどで気道が狭くなると呼吸困難がおこります。
●喘鳴(ぜんめい)
 気道が狭くなると、ゼイゼイという喘鳴がおこることがあります。
●いびき(「いびきと対策」)
 いびきの原因はいろいろですが、アデノイド増殖症(「アデノイド増殖症(腺様増殖症/アデノイド/咽頭扁桃肥大症)」)、咽頭の腫瘍(コラム「咽頭の良性腫瘍」)など、のどに原因があっておこるいびきもあります。
●せき
 のどに炎症、異物などが存在すると、三叉神経(さんさしんけい)、迷走神経が刺激されてせきが出ます。異物感のときはせきばらい(咽頭性声咳(いんとうせいせいがい))になります。
●たん
 のどに炎症がおこるとたんが出ます。のどに腫瘍があると血(けっ)たんとなり、慢性喉頭炎などのときには悪臭がします。
●声がれ(嗄声(させい)(音声障害(声の病気)の「音声障害のいろいろ」))
 声がれの原因はさまざまですが、喉頭炎(「急性喉頭炎」)、声帯ポリープ(「声帯ポリープ(喉頭ポリープ)」)、喉頭がん(「喉頭がん」)などがその代表です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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