(読み)サキ

デジタル大辞泉 「先」の意味・読み・例文・類語

さき【先/前】

元から遠い、突き出ている部分。先端。突端。「岬の―」「針の―で突く」「鼻の―」
長いものの末端。はし。「ひもの―」
続いているものなどの一番はじめ。先頭。「列の―」「みんなの―に立って歩く」
ある点や線を基準にして、その前方。「仙台から―は不通」「三軒―の家」「駅は目と鼻の―だ」「―を行く車に追いつく」
金額・数量などが、ある額・量を超えること。「千円から―の品はない」
継続している物事の残りの部分。「話の―を聞こう」「―を急いでいる」
行き着く所。目的の場所。「―へ着いてからのことだ」「行く―」
未来のある時点。将来。前途。「―を見通しての計画」「―の楽しみな青年」
時間的に前。あることより前。「代金を払うのが―だ」「ひと足―に帰る」⇔あと
10 現在からそう遠くない過去。以前。「―の台風の被害」「―の大臣」
11 順序の前の方。「名簿の―の方に出ている」「だれが―に入りますか」「お―にどうぞ」⇔あと
12 優先すべき事柄。「地震のときは何より火を消すのが―だ」「あいさつより用件が―だ」
13 交渉の相手方。先方。「―の出方しだいだ」
14 相場で、「先物」の略。
15 行列先導をする役。さきおい。さきばらい。
「―なるをのこども、う、促せや、など行ふ」〈かげろふ・上〉
16先駆け」の略。先陣。
「内々は―に心を掛けたりければ」〈平家・九〉
17幸先さいさき」の略。
「其様な―の悪い事をおしゃるぞ」〈虎寛狂・河原太郎
[下接語]明かり先あてあと売り先売れ先襟先縁先生い先老い先おくみかい肩先かど気先切っ先口先下馬先玄関先剣先小手先の先さい潮先仕事先舌先しょう太刀先旅先使い先筒先勤め先つまつま手先出先手羽先得意先嫁ぎ先とつ届け先供先・取引先・庭先軒先刃先鼻先鼻の先馬場先春先筆先ペン先棒先ほこ穂先真っ先水先店先むな目先矢先やり行き先行く先指先(ざき)先先
[類語](1先端突端あたま末端先っぽヘッドはなはしっこ突先とっさき突端とっぱな一端いったん/(4まえ/(8あとのち後後あとあと後後のちのち先先直後事後その以後爾後じご以降今後将来未来近未来行く末末末前途向後自今来たる目先行く先行く手行く行く行方先行き生い先後年他年この後これから向こう

せん【先】[漢字項目]

[音]セン(呉)(漢) [訓]さき まず
学習漢字]1年
〈セン〉
空間的にいちばん前の方。「先端先頭先導先方
時間的に早い方。ある時点より前。また、最初。「先客先刻先妻先日先生先祖先着先輩先発機先祖先
今の一つ前。「先月先週先先代
碁・将棋で、先番。「先手せんて互先たがいせん
さきにする。さきんずる。「率先優先
(「」の代用字)突出している。「先鋭
〈さき〉「先棒先程後先
[名のり]すすむ・ひろ・ゆき
[難読]幸先さいさき先蹤せんしょう舳先へさき

さっき【先】

《「さき」の促音添加》時間的に少し前であること。先刻。さきほど。「さっきのことは謝る」「さっきから電話が鳴っている」「さっき聞いたばかりの話」
[類語]先程今しがた先刻最前先に今今たった今今時分今頃今どき今さらナウ

せん【先】

まえ。以前。昔。もと。「に会った人」「その話はから知っていた」
現在のものの前のもの。さき。「の場所から移した」
人よりさきに事を行うこと。さきがけ。
「―と仰せらるるに依って、愚僧から参らうか」〈虎寛狂・宗論
囲碁・将棋で、さきに打ちはじめるほう。先手。
剣道で、機先を制すること。

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精選版 日本国語大辞典 「先」の意味・読み・例文・類語

さき【先・前】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ものの先端や末端。つきでてとがっている部分。はし。
    1. [初出の実例]「則ち、十握の劔を抜きて倒(さかしま)に地(つち)に植(つきた)てて其の鋒端(サキ)に踞(うちひくみにゐ)て大己貴(をほなむち)の神に問ひて曰(のたま)はく」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
    2. 「さきの方すこし垂りて、色づきたる事、ことのほかに、うたてあり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  3. 空間的にまえ。⇔あと
    1. (イ) 進んでいく前方。まえ。
      1. [初出の実例]「〈本〉あかがり踏むな 後なる子 我も目はあり 佐支(サキ)なる子」(出典:神楽歌(9C後)早歌)
    2. (ロ) 貴人の行列の先頭にたつこと。先導するもの。道をひらくもの。先駆。さきばらい。→さきを追う
      1. [初出の実例]「時(とき)に、熊之凝(くまのこり)といふ者有(あ)り。忍熊王(をしくまのきみ)の軍(いくさ)の先鋒(サキ)と為(し)て」(出典:日本書紀(720)神功摂政元年三月(北野本南北朝期訓))
    3. (ハ) 本陣の前にある部隊。さきがけ。先陣。先鋒。
      1. [初出の実例]「其の将智尊精兵を率て先鋒(サキ)として距く」(出典:日本書紀(720)天武元年七月(北野本訓))
  4. 時間的にそれより前。その時より前。⇔あと
    1. (イ) それが行なわれる前、また、直前。
      1. [初出の実例]「是(これ)より先(サキ)天稚彦と味耜高彦神(あちすきたかひこねのかみ)と友善(うるは)し」(出典:日本書紀(720)神代下(寛文版訓))
    2. (ロ) 今に近い過去のある時。現在より以前。さっき。
      1. [初出の実例]「故、其の八上比売は、先(さき)の期(ちぎり)の如く美刀阿多波志都(みとあたはしつ)〈此の七字は音を以ゐる〉」(出典:古事記(712)上)
    3. (ハ) 今の世から遠くへだたった過去。むかし。→いんさき
      1. [初出の実例]「さきの世の契しらるる身のうさに行末かねて頼みがたさよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    4. (ニ) 「先の」の形で、かつて、また現任者の前に、ある官職にあったことをいう。先代。前任。前(ぜん)
      1. [初出の実例]「かへるさきのかみのよめりける」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二六日)
  5. 時間的にそれより後。その時よりあと。
    1. (イ) 今に近い将来。今度。
      1. [初出の実例]「さきの朔日の御礼までは余程日かずもあり」(出典:滑稽本・人情穴探意の裡外(1863‐65頃)三)
    2. (ロ) 現在より以後。将来。未来。前途。ゆくすえ。
      1. [初出の実例]「正長元年よりさき者、かんへ四かんかうに、をゐめあるへからす」(出典:柳生徳政碑文(1428頃))
      2. 「イヤ坊様精が出るよ。したが先(さキ)の知ぬ後生願ふより施餓鬼おんぞうでもじろかい」(出典:浄瑠璃神霊矢口渡(1770)四)
  6. 順番や序列が前であること。また、上であること。
    1. (イ) 上位にあるもの。また、上位の場所。
      1. [初出の実例]「年兄は遅くともさきに着くべし。同じ年は鬮(くじ)に取るべし」(出典:申楽談儀(1430)附載・魚崎御座之事)
    2. (ロ) 一番初めにしなければならない、重要なこと。専らとすること。→先とする
      1. [初出の実例]「如来の法はいづれをもみな同けれど、とく仏の位にいたる事はこの道よりさきなるはなし」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
  7. その行為の目的や相手となる人、あるいは場所。先方。相手。
    1. [初出の実例]「是も能いかへ物では御座れども、先に鷹が御座らぬに依て、鷹のない犬斗りは入りますまい」(出典:虎寛本狂言・富士松(室町末‐近世初))
  8. 数量などが、ある基準より多いこと。それ以上であること。
    1. [初出の実例]「六十円から以上(サキ)ぢゃ有りませんか」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前)
  9. さいさき(幸先)」の略。
    1. [初出の実例]「こなたは此酒を誰が物じゃと思ふて、其様なさきのわるい事をおしやるぞ」(出典:虎寛本狂言・河原太郎(室町末‐近世初))
  10. さきもの(先物)」の略。

せん【先】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 進んでゆく方向でまえに位置すること。また、順序でまえ。さきに立ってみちびくこと。先頭。さき。
    1. [初出の実例]「是為朝敵之最臣之道不命乎。又為神敵之先。為天之理不誅乎」(出典:太平記(14C後)九)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・正月〕
  3. 他よりさきんじて行なうこと。さきがけ。
    1. [初出の実例]「機早なる若大衆共、武士に先をせられじとや思けん」(出典:太平記(14C後)一五)
    2. [その他の文献]〔漢書‐英布伝〕
  4. 先祖。祖先。父祖。
    1. [初出の実例]「契は薛殷の先ぞ。后稷は周の先ぞ。伯夷は斉太公の先祖也」(出典:史記抄(1477)三)
    2. [その他の文献]〔書経‐太甲中〕
  5. 囲碁・将棋などで、相手よりさきに始める方。または、囲碁で下手が常に黒を持ち先に打つ手合割。先手。
    1. [初出の実例]「盤、取りにやりて、われはと思ひて、せんせさせたてまつりたるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
    2. [その他の文献]〔酉陽雑俎‐語資〕
  6. 現在のもののまえにその位置を占めたもの。さき。
    1. [初出の実例]「妙喜の神(しん)たくをききましたら、せんの女房死霊だと申ました」(出典:咄本・喜美賀楽寿(1777)法力)
    2. 「先(セン)の場所(ところ)へ列ぶのだ、先の場所へ」(出典:足跡(1909)〈石川啄木〉)
  7. 今は過去になっている時。まえかた。以前。
    1. [初出の実例]「せんはさかねだりなる口舌(くぜ)御申かけ余りなる御事」(出典:浮世草子・小夜衣(1683)五)
  8. せんせい(先生)」の略。
    1. [初出の実例]「せんの仰せらるるからは、正筆にいつわりあるべからず」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)上)
  9. せんど(先途)」の略。
    1. [初出の実例]「さる程にここをせんとぞ吹き給ふ。姫君は聞召、中納言の笛の音と、聞知給へば」(出典:御伽草子・梵天国(室町末))

まずまづ【先】

  1. 〘 副詞 〙
  2. 他のもの、他の事態より先んずるさまを表わす語。最初に。まっさきに。いちはやく。
    1. [初出の実例]「春されば麻豆(マヅ)咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮さむ」(出典:万葉集(8C後)五・八一八)
  3. 一つの意志・判断を、他のことをさしおいて表明しようとする気持を表わす語。何はさておき。ともかく。文頭に用いて、推量や命令の表現を伴ったり、以下の記述を略して用いたりする。
    1. [初出の実例]「まづかくなんと物し侍らむ、とて立てば」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. 「すでにさしちがへんせし所に〈略〉これは何事をしたまふぞ、まづとどまり給へと申ければ」(出典:狂言記・七騎落(1660))
  4. 自分の判断や主張を、恐らく正確であろう、そのような言い方で表現して大過あるまいと、吟味肯定する気持を表わす語。まあ大体。おおよそ。多分。
    1. [初出の実例]「やまざくら瓦ふくもの先ふたつ〈芭蕉〉」(出典:俳諧・笈日記(1695)中)
    2. 「まづ損はしねへつもりサ」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
    3. 「どこへ行っても仕事に追われ、ゆっくり市内御見物などということはまずない」(出典:マイクとともに(1952)〈藤倉修一〉アメリカさん)
  5. ( 特に、否定的な表現を伴って ) その事態が動かしがたいことを、いやだ、困ったことだ、などの気持を込めて強調する語。どうにもこうにも。いかにも。
    1. [初出の実例]「先づ心も得ぬ事なれば」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)

さっき【先】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「さき(先)」の変化した語 ) 時間的に少し前であることを表わす語。副詞的にも用いる。さきほど。今しがた。先刻。
    1. [初出の実例]「扨はさっきは熊谷の直家とそれ程くさりあふたよな」(出典:浄瑠璃・大原御幸(1681)二)

まんずまんづ【先】

  1. 〘 副詞 〙 「まず(先)」の変化した語。やや、俗っぽい言い方。
    1. [初出の実例]「おしゃう人はこのよしをきこしめし、まんすはみたりまさゆめを」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)

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