精選版 日本国語大辞典 「端」の意味・読み・例文・類語
はし【端】
〘名〙 (「はじ」とも)
(イ) 細長い物の末の部分。また、平らな物などの周辺の部分。へり。ふち。さき。
※書紀(720)一五・顕宗元年二月(寛文版訓)「縄の端(ハシ)に鐸(ぬりて)を懸けて」
(ロ) 特に、畳のへり。また、敷物などの縁。
※枕(10C終)二七八「畳一ひらをながさまにはしをはしにして、長押(なげし)の上に敷きて」
(ハ) 物を切り離した、小さいほうの部分。切れっぱし。断片。
※蜻蛉(974頃)上「脛を布のはしして引きめぐらしたるものども」
(ニ) 多くある物の中の一部分。また、ひとつのまとまりをなしているものの一部分。
※蜻蛉(974頃)上「おほかたふるものがたりのはしなどをみれば」
※今昔(1120頃か)五「其に我も獣の端也」
(ヘ) 物事の大切でない部分。枝葉末節。
② ある場所を中心としてその周辺の部分。
(イ) 中心からはずれた隅の方の場所。末端の方の場所。
※大和(947‐957頃)一四九「はしにいでゐて、月のいといみじうおもしろきに、頭かい梳(けづ)りなどしてをり」
(ハ) 家屋の出入り口のほう。玄関など。
③ 物のはじめの部分。
(イ) 書物のはじめの部分。序。また本文の冒頭の部分。
※中右記‐長治二年(1105)九月一五日「禁中殿上人御書所衆第一帙令書写、第一巻端二枚許主上宸筆令書写御也」
(ロ) 文書、手紙などの右端。左端を奥というのに対していう。
※平家(13C前)三「奥よりはしへよみ、端より奥へ読けれ共」
※源氏(1001‐14頃)若菜下「などか、なのめにて、なほ、この道を通はし知るばかりのはしをば知りおかざらむ」
※太平記(14C後)一一「御泪の故(もと)と成し山雲海月の色、今は龍顔を悦ばしむる端(ハシ)と成て」
⑤ (「間」の字をあてることがある) ある物事が行なわれたちょうどその折。…する間に一方で。あいだ。きわ。まぎわ。
※万葉(8C後)一九・四一六六「うち嘆き しなえうらぶれ しのひつつ あらそふ波之(ハシ)に」
⑥ いいかげんに扱われるような、つまらないもの。また、二つのものの中間的存在。どっちつかずの中途半端なこと。
※万葉(8C後)一四・三四〇八「新田山嶺には着かなな我(わ)に寄そり波之(ハシ)なる児らしあやに愛(かな)しも」
⑦ 中心ではない、ちょっとした部分。ちょっと表われた部分。
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「のちに知らるることばのはし」
⑧ 「はしじょろう(端女郎)」の略。
※浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)上「端は、局に立給ふ御方也、端居の儀也」
はした【端】
〘名〙
① (形動) 物事のどちらともつかないこと。どっちつかずで中途はんぱなこと。また、そのさま。
※竹取(9C末‐10C初)「御子は立つもはした居るもはしたにてゐ給へり」
② (形動) 数のそろわないこと。数が足りないこと。また、そのさま。はんぱ。〔観智院本名義抄(1241)〕
※浮世草子・世間胸算用(1692)一「惜や片足は野ら犬めに喰へられ、はしたになりて」
③ (形動) 数がある単位、あるまとまった数よりも余っていること。また、そのさまやその余った数量。余計。端数。はんぱ。
※史記抄(1477)一八「左が四なれば、まうはしたな数は、ないほどに、右も亦四なり」
④ =はしたもの(端者)①
※増鏡(1368‐76頃)六「御童・下仕へ・御はした・御雑仕・御ひすなどいふ物まで、かたちよきをえりととのへられたるは」
⑤ =はしたがね(端金)
※談義本・教訓雑長持(1752)鉢坊主身の上を懺悔せし事「半銭(ハシタ)で買(かは)れぬ物斗(ばかり)」
はな【端】
[1] 端、先端の意。
① 物の先端の部分。はじ。末端。
※類従本有房集(1182頃)春「霞たつゑしまのはなをみ渡せはたみかへしたる心ち社すれ」
※自然と人生(1900)〈徳富蘆花〉湘南雑筆「磯の尽端(ハナ)に行けば」
② 二つ以上並ぶものの先の方をさしていう。
(イ) 駕籠(かご)の先棒。
※歌舞伎・扇音々大岡政談(天一坊)(1875)四幕「『それぢゃあ手めえ後へ廻れ』『手めえにははなが担げるものか』」
(ロ) 列の先頭。
※歌舞伎・茲江戸小腕達引(腕の喜三郎)(1863)序幕「真身のおれが、先頭(ハナ)に居るから猶聞けねえ」
③ 時間的に先の方をさしていう。はじめ。最初。発端。
※歌舞伎・盟三五大切(1825)序幕「なアに、上げ汐の鼻までは気遣ひない」
[2] 〘語素〙 動詞の連用形に付いて、その動作をしはじめた頃、その動作状態にはいった直後の意を表わす。多く連濁して「ばな」となる。「出ばな」「寝入りばな」など。
は【端】
[1] 〘名〙
① はし。はた。へりの部分。ふち。
※万葉(8C後)一五・三六二三「山の波(ハ)に月傾けば漁(いざ)りする海人のともしび沖になづさふ」
② はんぱであること。はした。端数。
※申楽談儀(1430)能の色どり「児(ちご)なんどをばはにいだすべからず」
③ 三味線で、棹や胴の表面から弦までの距離をいう。
[2] 〘語素〙
① 数の程度を表わす。「年端」
② 場所を表わす。「行端」「逃端」
たん【端】
〘名〙
① 物のはし。さき。
② 物事がはじまるきっかけ。いとぐち。はじめ。
※正法眼蔵(1231‐53)仏性「有仏性の道にも、無仏性の道にも、通達の端を失せるがごとくなり」 〔孟子‐公孫丑〕
③ ⇒たん(段)
ばた【端】
〘語素〙 名詞について、そのものの端の部分やその近辺の意を表わす。「舟ばた」「道ばた」「いろりばた」など。
ば【端】
〘語素〙 名詞や動詞の連用形に付いて、はし、末の意を表わす。「さがりば」「かかりば」「のきば」など。
ばな【端】
〘語素〙 ⇒はな(端)(二)
はじ【端】
〘名〙 ⇒はし(端)
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