医学上〈頭〉といえば狭義のそれをさすことが多く,狭義の頭と顔との境は鼻のつけねからまゆと頰骨弓(きようこつきゆう)(頰骨のたかまり)とを通り,耳の穴に達する線となる。耳の後方は直接に首と接しており,乳様突起から外後頭隆起という頭の後面正中線にある突起まで引いた線がその境である。頭は前頭部,頭頂部,後頭部,側頭部,耳介部,乳突部の6部に分けられる。前頭部のことを額(ひたい)ともいう。頭は表面が円滑で,ほとんど突出もくぼみもない。全面が厚い皮膚でおおわれ,皮膚には前頭部(大部分),耳介部,乳突部を除いては頭髪がはえている。皮膚の下には帽状腱膜という広い結合組織の膜があり,この膜は後方は後頭筋,前方は前頭筋につながっている。これらの筋および帽状腱膜の下は骨膜をへだててすぐ頭骨(頭蓋骨)であり,頭蓋骨のなかには脳膜に包まれて脳が蔵されている。頭型の人類学的価値ははなはだ重要である。種々の人種の頭型を比較するために頭示数cephalic index of the livingというものが用いられる。これは(頭幅÷頭長)×100で,したがって〈頭の長幅示数〉とも称せられる。ここに頭幅とは頭のいちばん幅の広いところの左右径,頭長とはまゆの間と後頭部の最も突出した点との間の直線距離(すなわち最大長径)である。上から見た頭の形は,頭示数が小さいほど前後に細長く,大きいほど幅が広い。74.9以下のものを長頭,80以上のものを短頭,その間の値を有するものを中頭といい,これによって諸人種の頭型を比較すると,黒人は長頭,白人は中頭,中国人および日本人は短頭と中頭との中間,蒙古人,満州人,朝鮮人は短頭ということになる。頭の形は同じ人種内でも男女の間にかなりの差がある。その最も大きな点は,女の頭は比較的小さいこと,ことに高さが低いことである。頭の高さの測り方の一つに頭耳高があるが,これは耳の穴の上縁を通る水平面から頭の頂点までの高さである。 →頭骨 執筆者:藤田 恒太郎+藤田 恒夫
頭痛は脳または脳膜の症状であるが,英語でheadache,ドイツ語でKopfschmerz,フランス語でmal à la têteとすべて頭で代用する。ケルススもcapitis doloresとラテン語の頭の語を使った(《医術について》)。〈頭を悩ます〉も〈頭が良い〉も同様である。頭はさらに転用されて〈頭を丸める〉など〈髪〉を意味したり,〈筆頭〉や英語の〈headline〉のように物事の上部・始まりを指すようになる。