ポントピダン(読み)ぽんとぴだん(英語表記)Henrik Pontoppidan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポントピダン」の意味・わかりやすい解説

ポントピダン
ぽんとぴだん
Henrik Pontoppidan
(1857―1943)

デンマークの代表的自然主義作家。田舎(いなか)牧師の子に生まれる。コペンハーゲンの師範学校理工科に学ぶが、1879年中途退学、同年処女作の小説『教会の舟』を発表して作家の道に入り、一時実兄の経営する国民高等学校教師を務める。短編集『田舎町の画面』(1883)をはじめ『小屋から』『幽霊』『雲』など暗鬱(あんうつ)な農村生活を描く自然主義的作品で知られたが、しだいに初期のグルントビー的な農村賛美に批判的となる。三部作『約束された土地』(1891~95)は宗教的民衆運動とその指導者の真理探求の悲劇的苦闘を描く大作で、その名声により作者は国民作家の地歩を築く。『記録』(1890)は彼には珍しい浪漫(ろうまん)的童話集。それ以後は『幸福なペール』全8巻(1898~1904)、『死者の王国』全5巻(1912~16)、4巻の回想録などが代表作。これらの作品ではポントピダンは教会とキリスト教を離れ、個我の展開を追求しているかにみえる。1917年、同じデンマークの作家ギェレルプとともにノーベル文学賞を受賞

[山室 静]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポントピダン」の意味・わかりやすい解説

ポントピダン
Pontoppidan, Henrik

[生]1857.7.24. フレデリシア
[没]1943.8.21. オルドルプ
デンマークの小説家。牧師の家に生れたが,聖職を嫌って土木工学を修め,のち数年間国民高等学校の教師をつとめた。出世作『約束の地』 Det forjættede Land (3巻,1891~95) はトルストイアンの牧師がその理想に敗れて狂気に陥るまでを描いたもの。『幸福のペール』 Lykke-Per (98~1904) ,『死者の国』 De dødes Rige (12~16) ,『人間の天国』 Mands Himmerig (27) など,いずれも社会の虚偽偽善をあばいた作品。 1917年ノーベル文学賞を受賞。

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