改訂新版 世界大百科事典 「ミヤコドリ」の意味・わかりやすい解説
ミヤコドリ (都鳥)
チドリ目ミヤコドリ科Haematopodidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は極地とポリネシアの島々を除いて世界的に分布し,1属6種(学者によっては4種または7種)に分類される。日本には1種ミヤコドリがまれに渡来する。全長40~52cm。体は太り,白色と黒色の色彩のものと全身黒色のものとの2型がある。一つの種の中にも両方の型があるとする説と両者を別の種とする説があり,どちらをとるかによって種の数が違ってくる。
くちばしは橙赤色で,長くて太く,先は縦に平たい。脚は比較的短くて太く,淡紅色。海岸や河口の干潟,砂浜,岩場などにすみ,地上や浅水中を歩いて餌を探し,ときには走ることもある。飛翔(ひしよう)は直線的で力強く,はばたきは速い。群飛するときには隊列を組む。クリーッまたはピリーッと聞こえる大きな声で鳴く。貝類,甲殻類,ゴカイ類,昆虫などをとらえるが,とくに二枚貝の殻を開いて食べるのがうまい。つがいをつくるときには数羽の雄が一列に並んで輪をつくり,くちばしを下にして,甲高い声で鳴きながら並んで走る儀式的な動作が知られている。砂上や石のある地上のくぼみに貝殻や小石を敷いて簡単な巣をつくり1腹2~4卵を産む。擬抱卵や擬傷の動作をする。雛は綿羽に包まれていて,孵化(ふか)後まもなく巣を離れ,親鳥の保育を数ヵ月受けて独立する。
ミヤコドリHaematopus ostralegus(英名oystercatcher)はヨーロッパ沿岸部,ロシア平原から中央アジア,アジア大陸東岸の一部,南アフリカの一部,オーストラリアなどに分布し,数亜種に分かれ,体の色が白色と黒色のものと,全体が黒いものとがある。日本には旅鳥または冬鳥として渡来し,海岸や河口の干潟や入江にすむが,近年は数が少ない。頭部,胸,背,翼,尾の先は黒く,他は白く,翼には幅の広い白帯がある。くちばしと脚は紅色。なお,《伊勢物語》に出てくるミヤコドリは,この鳥ではなくカモメ科のユリカモメであるという説がある。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報