ハミルトンの原理(読み)はみるとんのげんり(英語表記)Hamilton's principle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハミルトンの原理」の意味・わかりやすい解説

ハミルトンの原理
はみるとんのげんり
Hamilton's principle

イギリスの数学者・物理学者のW・R・ハミルトンが1834年に与えた力学原理。力学系の実現される運動は、運動の経過全体に関するある量が極値になっているという条件によって特徴づけられていることを示した原理。この原理に基づいて運動を決定できるが、それはニュートンの運動方程式によるものと同等である。後者微分形式で時々刻々の運動をその直前の状態から因果的に決定するのに対し、この原理は運動全体にわたる積分量に対して条件づけるので、あたかも運動が合目的的におこっているような表現になっているのが特徴である。

 力がポテンシャルから導かれる場合、運動の始まりと終わりの時刻の間の経路に沿ってラグランジュ関数の値が定まりその時間積分が得られる。経路を仮想的に微少変化させるとこの積分値も変わる。ハミルトンの原理は、これらの積分値が実現される運動に対して極値をとるということを述べた変分原理である。変分の際、独立な変分量のとり方によってラグランジュやハミルトンの方程式を導くことができ、また力学以外の物理法則もこの形に書かれるものがあり、包括的な定式化と考えられる。

永田 忍]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハミルトンの原理」の意味・わかりやすい解説

ハミルトンの原理
ハミルトンのげんり
Hamilton's principle

力学における変分原理の1種。時刻 t1t2 の間の実際の運動経路は同じ両端点を通る経路のなかでラグランジュ関数 L の時間積分 最小になるという原理。これからラグランジュの運動方程式が導かれる。全エネルギーが一定な経路だけに限って変分をとれば最小作用の原理に一致する。

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