( 1 )寛永二年(一六二五)、江戸両国薬研堀で中島徳右衛門が売り出したのを初めとする。「随・守貞漫稿‐五」に「七味蕃椒と号て、陳皮、山椒、肉桂、黒胡麻、麻仁〈略〉を竹筒に納れ、鑿を以て突二刻之一売る。諸食にかけて食ふ人多し」とみえ、薬味として当時の人々に好まれ、振売りも行なわれていたことが記されている。
( 2 )「しちみ」は、「酸・苦・甘・辛・鹹」の五種の食味を「五味」、また「淡」を加えて「六味」と呼びならわしてきたことに倣ったもので、主に関西で用いられた。関東では「なないろとうがらし」と呼んできたが現在では「しちみとうがらし」の呼称が一般的である。
トウガラシ粉にゴマ,陳皮(ちんぴ)(ミカンの皮),ケシの実,アサの実,粉サンショウなどを加えた混合香辛料。京坂で七味唐辛子,江戸で七色(なないろ)唐辛子と呼んだ。トウガラシ粉の配合率によって大辛(おおがら),中辛(ちゆうがら),小辛(こがら)などと呼び,そば,うどんの薬味,コイこく,ドジョウ汁の吸口などに用いる。江戸で七色唐辛子が始まったのは,石塚豊芥子(ほうかいし)が《近世商賈尽狂歌合》(1852)で考証しているように安永(1772-81),天明(1781-89)のことと思われ,6尺ほどもある大きな張子のトウガラシをかついだ七色唐辛子売が人気を呼んだ。また,文政(1818-30)ころから神田明神前に七色唐辛子屋ができ,その女主人が歌舞伎の〈外郎(ういろう)売〉もどきに効能を述べ立てながら調合して売ったが,それが評判でたいへん繁盛したという。
執筆者:鈴木 晋一
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トウガラシ(唐辛子)、サンショウ(山椒)の実、アサ(麻)の実、ケシ(芥子)の実、陳皮(ちんぴ)、ゴマ(胡麻)、シソ(紫蘇)の実または青海苔(のり)を混ぜて粉にした日本独特の混合香辛料。麺(めん)類の薬味として、また鍋(なべ)料理、汁物、漬物にも用いられ、味覚を刺激し食欲を増す効果がある。東京を中心とする関東では七色(なないろ)唐辛子といい、関西では「七味蕃椒」と書いて「しちみとうがらし」とよんだりする。辛味の中心となる唐辛子の配合量により、大辛(おおから)、中辛(ちゅうから)、小辛(しょうから)と分けられる。江戸時代の初期、寛永(かんえい)(1624~44)のころ、江戸・両国(りょうごく)の橋のたもと、薬研堀(やげんぼり)の辛子屋徳右衛門(とくえもん)が、生唐辛子、焼き唐辛子を主材料に、6種の薬味を加えて「七色唐辛子」の名で売り出したのが最初といわれている。当時の七色には、ニッケイ(肉桂)およびカシアやホオズキ(酸漿)が混ぜられたこともあるという。現在も徳右衛門の店の8代目が浅草にあって老舗(しにせ)を誇り、関西では京都・清水坂(きよみずざか)の七味屋が古くから知られている。
[齋藤 浩]
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