アセトアニリド(英語表記)acetanilide

翻訳|acetanilide

デジタル大辞泉 「アセトアニリド」の意味・読み・例文・類語

アセトアニリド(acetanilide)

アニリン無水酢酸を反応させて得られる無色板状結晶染料中間体として重要。また、アンチフェブリンの商品名で解熱剤に用いられたが、現在は使用されていない。化学式C6H5NHCOCH3

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精選版 日本国語大辞典 「アセトアニリド」の意味・読み・例文・類語

アセトアニリド

〘名〙 (acetanilide) アニリンと氷酢酸または無水酢酸原料として作られる無色の結晶。アンチフェブリンの名称解熱剤に用いられる。劇薬

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改訂新版 世界大百科事典 「アセトアニリド」の意味・わかりやすい解説

アセトアニリド
acetanilide


水に難溶の無色の結晶。融点115℃。アニリンに無水酢酸を作用させて作る。希塩酸またはアルカリ水溶液中で加熱すると加水分解されてアニリンと酢酸になる。窒素原子の非共有電子対がカルボニル基の酸素原子に引き寄せられているので,窒素原子とベンゼン環上の電子密度がアニリンにくらべて小さい。

したがって,アセトアニリドはアニリンにくらべて酸化を受けにくく,また求電子試薬に対する反応も穏やかである。
アセチル化
執筆者: アセトアニリドはアンチフェブリンantifebrinとも呼ばれ,19世紀末のコールタールを原料とする化学工業の発達とともに生まれた医薬。安価で比較的強力な解熱・鎮痛薬として,とくに頭痛や月経痛の緩解の目的などに家庭薬としても一時は広く使われた。しかし副作用,とくにヘモグロビンメトヘモグロビンに変えたり,赤血球を破壊したりするような血液毒性の危険性が高いために現在は使われていない。このような毒性は早い段階から知られていたので,それを改良するための研究から生みだされたのがフェナセチンp-エトキシアセトアニリド)やアセトアミノフェンで,これらは現在も医薬として使われている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトアニリド」の意味・わかりやすい解説

アセトアニリド
あせとあにりど
acetanilide

酢酸とアニリンのアミド。アセチルアニリン、N-フェニルアセトアミドともいう。アニリンに無水酢酸あるいは塩化アセチルを反応させて得られる。無色の板状結晶。冷水に約0.5%、熱水には約5%溶ける。アルコール、クロロホルム、エーテルなどの有機溶媒にはかなり溶けるが、石油には溶けない。金属ナトリウムと反応してN-ナトリウム誘導体を生成し、強酸の作用により不安定な塩を生成する。染料など各種有機化合物の合成原料として重要である。また鎮痛、解熱作用があり、1886年にアンチフェブリンという商品名で解熱剤として初めて医薬に供されたが、劇薬であり強い副作用があるため現在では使用されていない。

[山本 学]

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化学辞典 第2版 「アセトアニリド」の解説

アセトアニリド
アセトアニリド
acetanilide

N-phenylacetamide.C8H9NO(135.17).C6H5NHCOCH3アニリンと氷酢酸,無水酢酸あるいは塩化アセチルとを反応させると容易に得られる.また,アニリンとケテンからも得られる.無色の板状結晶(水).融点113~115 ℃,沸点304~305 ℃.1.219.熱水,エタノール,エーテルなどに可溶.各種有機化合物の原料になる.LD50 800 mg/kg(ラット,経口).[CAS 103-84-4]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アセトアニリド」の意味・わかりやすい解説

アセトアニリド
acetanilide

アンチフェブリンともいう。化学式 C6H5NHCOCH3 。アニリンを酢酸,または無水酢酸と加熱して生成する。無色板状晶。融点 113~114℃。水に少量溶けるがエチルアルコール,メチルアルコールには易溶である。クロロホルム,エーテルに可溶。鎮痛剤,解熱剤として用いられる。

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百科事典マイペディア 「アセトアニリド」の意味・わかりやすい解説

アセトアニリド

無色の結晶。融点115℃,沸点305℃。熱水に可溶,有機溶媒に易溶。各種有機化合物の合成原料として重要。アニリンと無水酢酸からつくる。解熱鎮痛剤としても用いられていたが,血液関係に副作用が強くでるので,1971年使用禁止された。(図)

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