あど(読み)アド

デジタル大辞泉 「あど」の意味・読み・例文・類語

あど[副]

[副]《上代東国方言といわれる》
疑問を表す。どのように。いかに。
高麗錦こまにしき紐解きけてるがに―せろとかもあやにかなしき」〈・三四六五〉
(あとに係助詞」を伴って)反語を表す。どうして…なのか。
上野かみつけの安蘇のま麻群そむらかきむだれど飽かぬを―か我がせむ」〈・三四〇四〉

あど[名]

(ふつう「アド」と書く)狂言で、主役であるシテ(またはオモ)に対する相手役
話し手調子を合わせる応答相づち
「老いの繰り言細やかに、詞の―も針を持つ」〈浄・二つ腹帯

アド

アドレス」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「あど」の意味・読み・例文・類語

あど

  1. 〘 名詞 〙
  2. 相手に調子を合わせて受け答えをし、あいづちをうつこと。→あどを打つ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「人のいろかほ、気もつかず、あどにのっては過言のみ」(出典:仮名草子・悔草(1647)中)
  3. ( 「アド」と書くことが多い ) 能狂言で、狂言の脇師(わきし)をいう。主役であるオモあるいはシテの相手をする役。→オモシテ
    1. [初出の実例]「あどはさきへいる、してはほうろくうちはりいり候」(出典:虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初))
  4. 芸事などをともにするときの相手方
    1. [初出の実例]「中居たいこのわきまへもなきものをあどにして、れんがの会にててがらをとり」(出典:洒落本・彌味草紙(1759))

あど

  1. 〘 副詞 〙
  2. 疑問に用いる。いかに。何と。どう。
    1. [初出の実例]「わが背子を安杼(アド)かも言はむ武蔵野(むざしの)のうけらが花の時無きものを」(出典:万葉集(8C後)一四・三三七九)
  3. 下に、反語の助詞「か」を伴って反語に用いる。どうして。
    1. [初出の実例]「常陸なる浪逆(なさか)の海の玉藻こそ引けば絶えすれ阿杼(アド)か絶えせむ」(出典:万葉集(8C後)一四・三三九七)

あどの語誌

「万葉集」では、巻一五に一例見られるが、巻一四の東歌には七例見られるところから、東国語と考えられる。上代東国語では、疑問詞「なぜ」に相当する「あぜ」があり、「あぜ」と「と」との融合といわれる。また、「あに」と「と」との融合、「など」の転ともいう。


アド

  1. [ 1 ] 〘 造語要素 〙 ( [アメリカ] ad [英語] advertising の略 ) 広告。〔外来語辞典(1914)〕
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. アドレナリン」の略。
      1. [初出の実例]「アドもやっぱり這入(へえ)った方が効くなア」(出典:アパアトの女たちと僕と(1928)〈龍胆寺雄〉七)
    2. ( 「アドレス」の略 ) 住居、家、かくれがをいう。
      1. [初出の実例]「こんなに早く太田が私の家(アド)を吐かうなどとは」(出典:党生活者(1933)〈小林多喜二〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「あど」の意味・わかりやすい解説

アド (あど)

狂言の役種。主役をシテと称するのに対し,脇役をいう。アドが2人以上になると主(おも)アド・次アド,あるいは一のアド・二のアド・三のアドと呼ぶこともあるが,和泉流では主アド以外は一括して小アドという。また参詣人,花見客など同性格の数人一団の登場者は立衆,その統率者は立頭(たちがしら)と呼ぶ。アドの語源は,人を率いる意の〈あどもふ〉とも,応答する・相槌を打つ意の〈あどうつ〉ともいわれる。
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百科事典マイペディア 「あど」の意味・わかりやすい解説

アド

狂言の脇役(わきやく)。シテ(主役)の相手役。二人以上のときは,一のアド(主(おも)アド),二のアド(次(じ)アド)などと区別し,二のアド以下を小アドともいう。多人数で出るときは総括して立衆(たちしゅう)という。能のワキ(脇役)は独立した職種であるのに対し,狂言方はシテにもアドにも扮(ふん)する。
→関連項目オモ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「あど」の意味・わかりやすい解説

アド

狂言で,シテに対する相手役。2人以上登場する場合は,おもな役1人を主 (おも) アドまたは一のアドといい,以下,次 (じ) アド (二のアド) ,三のアドという。和泉流では主アド以外は小アドと呼び,役柄により,主 (しゅう) または女 (おんな) と呼ぶ。大勢物の場合,その他大勢を立衆 (たちしゅう) といい,その先頭を立頭 (たちがしら) という。舞狂言の場合は,能と同じにワキと呼ぶ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「あど」の意味・わかりやすい解説

アド
あど

狂言でシテ(主役)以外の役をいう。調子をあわせて応答する意をもつ古語「あど(を)うつ」から生じたという説などがあるが、語源は未詳。重要度に従い、主(おも)アド、次(じ)アド、あるいは一のアド、二のアド、三のアドなどともいう。また和泉(いずみ)流ではアド1人のほかはすべて小アドとよぶ。

[小林 責]

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「あど」の解説

アド

正式社名「株式会社アド」。英文社名「Ado Corporation」。サービス業。平成8年(1996)設立。本社は川崎市高津区坂戸。人材派遣会社。自動車・医療機器・電子機器の設計やシステム開発などの技術者派遣を行う。エコロジーをテーマにした雑貨ショップ「クリティカル・パス」も運営。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

世界大百科事典(旧版)内のあどの言及

【狂言】より

…一番の狂言に登場する人物は,ほとんどが2~4人,中には多人数物もあるが,それも主要人物はやはり2,3人で,それ以外の者は立衆(たちしゆう)と呼ばれて一団となって行動する。主役をシテ,それ以外をアドと呼ぶが,和泉流では主アド以外を特に小(こ)アドと呼んでいる。上演時間は大部分は20~40分で,1時間に及ぶものは《武悪》《釣狐》《花子(はなご)》等,数曲にすぎない。…

【脇役】より

…例えばブロードウェー演劇を対象とするトーニー賞には,助演男優賞と助演女優賞という部門があるのがそれである。 なお,日本の能のワキはシテを中心とする劇の展開を助けるという意味で,また狂言のアドはシテに対して副次的な役であるという意味で,いずれも一種の脇役であるといえる。【喜志 哲雄】。…

※「あど」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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