アヘン(阿片)(読み)アヘン

百科事典マイペディア 「アヘン(阿片)」の意味・わかりやすい解説

アヘン(阿片)【アヘン】

ケシの未熟な果実に傷をつけ,しみ出た液汁を乾固したもの(生アヘン),およびこれを吸煙用,医薬用に加工したもの。麻薬。吸煙用アヘンはエキス状でアヘン煙膏ともいう。アヘンの主成分はアルカロイドで,モルヒネが最も多く,その他コデインパパベリンノスカピンなど二十数種に及ぶ。モルヒネによる鎮痛・鎮静作用,パパベリンによる鎮痙(ちんけい)作用等の薬理作用があり,アヘン末,アヘン散,アヘンチンキなどの製剤として用いられる。疾病外傷などの激痛応急の鎮痛剤として内服するほか,小手術の局所麻酔の補助として用いることがある。アヘン自身が麻薬で,またモルヒネ等の原料ともなるので,国際的にも取締りが厳重,国内的にもあへん法麻薬取締法で規制されている。→アヘン中毒
→関連項目劇薬向精神薬生薬ドーフル散

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世界大百科事典 第2版 「アヘン(阿片)」の意味・わかりやすい解説

あへん【アヘン(阿片) opium】

ケシPapaver somniferum L.の未熟の果実に傷をつけ,浸出してくる白色乳液が空気に触れ,乾燥して黒色をおび,固形となったもの。産地によって形状が異なり,300~700gくらいの重量のもち状,球円状,円錐状の形にして商品にされる。 作用の本体となるのは全量の約25%を占める20種以上のアルカロイドであるが,これらは化学的には次のように二つに大別される。一つはフェナントレン骨格をもつモルヒネ(10~16%),コデイン(0.8~2%),テバインthebaine(0.5~2%)であり,他の一つはイソキノリン骨格をもつパパベリンpapaverine(0.5~2.5%),ノスカピンnoscapine(ナルコチンともいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アヘン(阿片)」の意味・わかりやすい解説

アヘン(阿片)
アヘン
opium

麻薬の一種。ケシの実からとれる乳液を乾燥したもの。初めは白色の液体であるが,空気に触れて凝固し,褐色固体となる。アヘンアルカロイド (モルヒネ,コデイン系およびパパベリン) を含む。アヘンアルカロイドは,鎮痛作用と麻酔作用を有し,嗜癖をもたらすモルヒネやコデインなどのグループと,鎮痛・麻酔作用をもたず嗜癖をもたらさないパパベリンやノスカピンなどのグループに分類できる。中毒性の強いものであるため,麻薬及び向精神薬取締法でケシの栽培,アヘンの製造は厳重に制限されている。アヘン喫煙は 18世紀なかばに中国から全世界に広がった。

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世界大百科事典内のアヘン(阿片)の言及

【向精神薬】より

…これが精神状態を抗不安薬で良くした最古の記録である。このほかにアヘンとブドウ酒が有効だと古くから信じられてきた。アヘンは前4000年にすでに採集され,ヒッポクラテスもこれを使ったという。…

【モルヒネ】より

モルフィンともいう。アヘンの主成分で,産地によって異なるがアヘンに9~14%含まれる。モルヒネは1805年ドイツの薬剤師F.W.A.ゼルチュルナーによって初めて分離され,1952年M.ゲーツらによって化学的に合成された。…

【薬用植物】より

…それらの中で,薬効と関連するものを有効成分という。化学成分の研究は1803年F.ゼルチュルナーがアヘンからモルヒネを単離して以来,キナ皮からキニーネ,タバコからニコチン,吐根からエメチン,コカ葉からコカイン,さらにストリキニーネ,アトロピン,ヒヨスチアミン,エフェドリンといった重要な,生理活性の強いアルカロイドがいろいろな薬用植物から次々と単離された。さらに1837年J.F.リービヒとF.ウェーラーがアミグダリンを加水分解して糖を得たことから,配糖体が薬効成分として大きな位置を占めることが知られるようになった。…

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