日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンリ(3世)」の意味・わかりやすい解説
アンリ(3世)
あんり
Henri Ⅲ
(1551―1589)
フランス国王(在位1574~1589)。アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの第3子。ユグノー戦争(1562~1598)に参加、1569年、ジャルナックとモンコントゥルの戦いで新教徒軍を破った。1573年にポーランド国王に選ばれたが、シャルル9世の急死によりフランス王位を継承。宗教戦争を超えたところでフランスの統一を願うポリティーク派の意見に傾き、新教徒には寛容王令を公布して一定の譲歩を示した。王弟アランソン公の死後、王位の推定相続人となった新教徒のアンリ4世および、リーグ(旧教同盟)のギーズ公アンリと、いわゆる「三アンリの戦い」guerre des trois Henriを進めたが、パリ攻囲のとき狂信的なカトリック僧によって暗殺された。母后カトリーヌがもっとも期待した国王で、文筆の才にも恵まれていたが、美男の小姓を愛する倒錯した性におぼれ、フランスの統一を達成できなかった。彼の死によってバロア朝は断絶し、王位はブルボン家に移った。
[志垣嘉夫]