ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェスト」の意味・わかりやすい解説
ウェスト
West, Nathanael
[没]1940.12.22. カリフォルニア,エルセントロ
アメリカの作家。本名 Nathan Wallenstein Weinstein。 1924年ブラウン大学卒業後,一時ホテルの支配人をしていたが,その後しばらくパリに出て,ダダ,シュルレアリスムの影響下に『バルソ・スネルの夢の生活』 The Dream Life of Balso Snell (1931) をパリで出版,次いで新聞の身上相談欄担当者を主人公に,現代社会を風刺した傑作『ミス・ロンリーハーツ』 Miss Lonelyhearts (33) を発表して文名を確立した。アルジャー流のアメリカの夢や,ファシズムを批判した辛辣な成功物語『大枚百万ドル』A Cool Million (34) の完成後は,しばらくハリウッドでシナリオを書き,その経験に基づいてハリウッドの映画界を鋭く批判した『いなごの日』 The Day of the Locust (39) を発表。 40年ルース・マッケニーの『妹アイリーン』 My Sister Eileen (38) のモデルといわれる妻とともに自動車事故にあい,短い生涯を閉じた。その風刺的でグロテスクな作風は,のちのブラック・ユーモア派や不条理の文学に影響を及ぼした。
ウェスト
West, Franz
[没]2012.7.26. ウィーン
オーストリアの芸術家。現代的なコラージュや家具,彫刻,公園に設置された色とりどりのインスタレーションまで幅広い作品を制作し,高い評価を受けた。1960年代にオーストリア美術界の主流だったウィーン・アクショニストの挑発的で暴力的なパフォーマンスアートを否定し,鑑賞者が手に取ることのできる小さなオブジェなど,より親しみやすい芸術を目指した。1970年代に素描やコラージュの制作を始め,1977~82年ウィーンの応用美術アカデミーで彫刻家ブルーノ・ジロンコリのもとで学ぶ。2009年,ボルティモア美術館で,1972~2008年の作品を集めた回顧展が開催された。また,カラフルなループ状のオブジェ『エゴとイド』も制作した。1990年のベネチア・ビエンナーレにオーストリア代表として参加,2011年には同ビエンナーレで「生涯功績への金獅子賞」を贈られた。
ウェスト
West,Sir Edward
[没]1828.8. ボンベイ
イギリスの判事,経済学者。オックスフォード大学で古典と数学に優秀な成績を収め,1814年イナー・テンプルから弁護士資格を得て,"A Treatise of the Law and Practice of Extents in Chief and in Aid" (1817) を著して有名になる。 1823年以降ボンベイ市最高裁判所長官を務める。穀物法論争初期の『土地への資本投下に関する一論』 An Essay on the Application of Capital to Land (1815) においてトマス・ロバート・マルサス,デービッド・リカードらと並んで収穫逓減の法則の最初の定式化を行ない,また価値論と密接に組み合わせたかたちではないが差額地代論を展開した。
ウェスト
West, Dame Rebecca
[没]1983.3.15. ロンドン
イギリスの女流作家,ジャーナリスト。本名 Cicely Isabel Fairfield。初め女優として立ち (筆名はイプセンの『ロスメルスホルム』のヒロインにちなむ) ,1910年代から左翼系の雑誌に寄稿,おもに女性問題を扱った。『兵士の帰還』 The Return of the Soldier (1918) ,『考える葦』 The Thinking Reed (36) などの小説のほか,ユーゴスラビアの政治を扱った『黒い小羊と灰色の鷹』 Black Lamb and Grey Falcon (2巻,42) ,反逆罪に関する評論『反逆の意味』 The Meaning of Treason (49) ,ニュルンベルク裁判のルポルタージュ『火薬列車』A Train of Powder (55) ,H.ジェームズや D.H.ロレンスなどの作家論がある。
ウェスト
West, Benjamin
[没]1820.3.11. ロンドン
イギリスで活躍したアメリカの画家。6歳で絵をかきはじめ,1760年イタリアに遊学,古典美術の影響を受けた。 63年ロンドンに渡り古典的な歴史画で有名になる。『ウォルフ元帥の死』 (1771,ケンジントン宮殿) は歴史画に近代性を導入した作品として著名。その後ロマン派的発想による宗教画を描く。 72年国王ジョージ3世の知遇を得て宮廷画家となり,81~1801年ウィンザー城礼拝堂の壁画を制作。ロイヤル・アカデミーの設立者の一人で,レイノルズのあと長年 (92~1805,07~20) にわたって会長をつとめた。
ウェスト
West, Charles Dickinson
[没]1908.1.10. 東京
イギリスの来日教師。ダブリン大学卒業。造船所設計技師長。 1882年6月工部大学校 (現東京大学工学部) に招聘され,機械工学担当主任教授として着任,以後,病死するまで 20年余在職し,日本における各種工学の基礎を確立,あわせて造船学をも指導し,海軍の技術発達に多く貢献した。 1300人余に上る日本人技術者を養成したといわれ,その忍耐強い教授法は大学当局で称賛の的となった。勲二等を授与された。
ウェスト
West, Anthony
[没]1987.12.27. コネティカット
イギリス生まれの評論家,小説家。アメリカに帰化。小説『闇夜』 On a Dark Night (1949) ,評伝『D. H.ロレンス』 (1948) など。 H.G.ウェルズと R.ウェストの息子。
ウェスト
West, Mae
[没]1980.11.22. ハリウッド
アメリカの女優,劇作家,コメディアン。セックス・コメディー『ダイヤモンド・リル』 (1928) などを自作,自演した。その後多くの映画に出演。 1930~40年代のセックス・シンボルといわれた。
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