モデル(英語表記)model

翻訳|model

精選版 日本国語大辞典 「モデル」の意味・読み・例文・類語

モデル

〘名〙 (model)
① ある事柄の手本や見本となるもの。原型、典型、ひな型
※続一年有半(1901)〈中江兆民〉二「小野の小町が美の意象のモデールと成り、累ねの顔が醜の意象のモデールと成る等」
② 絵・彫刻・人物写真の素材となる特定の人物や物。また、職業としてポーズを提供する、若い女性など。
※当世媛鏡(1894)〈正岡子規〉二一「細君が画の模本(モデル)となるべき美人ならば」
③ 文芸作品の素材とした実在の人物や事件。
※厨川辰夫宛夏目漱石書簡‐明治四〇年(1907)一一月二日「小野さんのモデル事件は小生も新聞にて読み候」
④ 模型。
※機関車に巣喰ふ(1930)〈龍胆寺雄〉「蚤取器の方は完全なモデルがもうちゃんと出来てるんで」
⑤ 商品や試みなどの標準とされるものやその形式。
原子椎茸と(1954)〈吉村昌光〉一二「天然ガス鉱泉を利用するモデル工場を建設して」
⑥ 「ファッションモデル」の略。
※女であること(1956)〈川端康成〉安心して「ファッションショウがすぐはじまるからと、〈略〉十人のモデルはここの女給で」

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デジタル大辞泉 「モデル」の意味・読み・例文・類語

モデル(model)

模範・手本または標準となるもの。また、今後の範とするために試みられたもの。「緑化モデル地区」「モデルスクール」
模型。また、展示用の見本。「プラスチックモデル
ある事象について、諸要素とそれら相互の関係を定式化して表したもの。「計量経済モデル
美術家・写真家が制作の対象とする人や物。「ヌードモデル
小説・戯曲などの題材となった実在の人や事件。「モデル小説」
ファッションモデル」の略。
機械・自動車などの型式かたしき。型。「ニューモデル
[類語](1手本模範規範典型亀鑑規矩原型原形プロトタイプ形式体裁フォーム年式かた様式型式かたしき書式フォーマットスタイルパターンタイプ類型定型ひな形方式見本サンプルスタンダード/(3類型型式かたしき様式タイプパターン

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改訂新版 世界大百科事典 「モデル」の意味・わかりやすい解説

モデル
model

モデルには基本的に二つの意味がある。一つは,絵画,彫刻,写真,小説などでのモデルであり,これはいわば〈原型〉としてのモデルである。人は,この意味でのモデルに基づいて,何かを作るわけである。いま一つは,プラスチックモデルで代表されるようなモデルであり,これはいわば〈模型〉としてのモデルである。この場合には,人は,何かに対してそのモデルを作るわけである。したがって第1の意味では,モデルは何かに先立ち,第2の意味では,何かがモデルに先立つことになる。そして,科学においてモデルというとき,それは第2の意味においてである。すなわち,科学におけるモデルは,模型としてのモデルである。しかし,こういっても,それにはさまざまな種類がある。

 まず大きく分けると,科学におけるモデルは,〈対象モデル〉と〈モデル理論〉に分けられる。そして一般に科学においてモデルというとき,それは対象モデルを意味することが多い。対象モデルはさらに〈単純化モデル〉〈構成モデル〉〈近似モデル〉〈同型モデル〉〈相似モデル〉などに分けられる。単振動,完全流体などは単純化モデルである。このモデルは,実際の対象が一応はわかっているが,そのままでは複雑でとり扱えないとき,あるいはそのままでとり扱う必要がないときなどに用いられる。これに対し,実際の対象がそもそも最初からわかっていないとき,それはかくあるであろうと理論的に想像して構成されたモデルが,構成モデルである。太陽系のモデル,原子模型などは,この種のモデルである。単純化モデルと構成モデルは,いずれも近似のモデルであるから,まとめて〈近似モデル〉といえよう。同型モデルには2種類ある。物理的な同型モデルと数学的な同型モデルである。電流を説明するのに水流をもってするとき,水流は電流の物理的な同型モデルである。なぜなら電流と水流は,ある範囲内で,同じ型のふるまいを示すから。これに対し,交流をサインカーブやコサインカーブで表すとき,それらは交流の数学的な同型モデルである。なぜならサインカーブやコサインカーブは,交流と同じ型のふるまいをし,だからこそ科学者は,実際の交流ではなくサインカーブやコサインカーブを見て,仕事をすることができるのである。相似モデルとは,巨大な,または微小な,要するに一目ではわからない対象を,一目でわかるように相似に縮小または拡大したものである。プラモデル,地図,拡大図などはこの例である。

 以上のような対象モデルに対し,そのうちの近似モデルに対して立てられた理論が,モデル理論である。それは,あるべき理論に対しての近似であり,模型であって,その意味ではやはり一種のモデルである。自然科学,社会科学を問わず,近代科学における理論はみなこの種のものである。

 以上のほかに,理論的な意味でモデルと称されるものがある。例えば,ブール代数の公理系は,命題の計算としても,〈ベンの図式〉が示すように,平面上の領域の計算としても,真として解釈可能である。このように,ある公理系がある種のものの集合によって真として解釈可能であるとき,その集合をその公理系のモデルという。これは,論理学や数学において用いられる論理的な意味でのモデルである。
執筆者:

美術におけるモデルとは,画家,彫刻家の目の前にあって制作の拠り所となるもの,とりわけ人物で,人体の構造や動作の正確な把握がモデル使用の第1の目的であるため,裸体であることが多い。

 古代ギリシアの芸術家は,競技場で運動する裸体の青年たちをモデルにしたと推定される。女性に関しては,クラシック時代後期の彫刻家プラクシテレスが初めて裸体のアフロディテ像を作ったとき,美しい遊女フリュネがモデルとなったと伝えられる。キリスト教的かつ観念的な中世美術においては,裸体はもちろん着衣でも,モデルに拠る制作は行われなかった。ルネサンスに再びモデルが使用されるようになったことは,完成作の写実性のみならず,特にイタリアに多いポーズするモデルの写生素描に明らかであるが,女性像のための習作でもモデルは男性である。工房に働く多数の若い徒弟を写生するのが簡便で風紀上も問題が少なかったためばかりでなく,男性の肉体の方が女性に比べより完全であるという理念的根拠もその背景にあった。16世紀後半のイタリアにおけるアカデミーの発生に伴って,男性の職業的モデルが登場し,古代彫刻の石膏模刻の写生素描を経てモデルの写生に進むという美術教育課程もここに定まり,この伝統が現代まで継承される。女性モデルは,公式には1759年にフランスの王立絵画・彫刻アカデミーにおいて着衣のそれが初めて認められた。16世紀以来芸術家が個人的に裸婦を写生することはあったにしても,美術学校に裸体女性モデルが導入されるのは19世紀後半のことである。伝統的にはモデルの写生は完成作のための習作であるが,19世紀以降〈人物画〉として写生それ自身を目的に描かれるようにもなった。特定の個人の姿を写した肖像についても描写された対象をモデルと呼ぶが,英語ではこれは普通〈シッターsitter〉(肖像を制作してもらうため座る人)という。なお,彫刻,建築のための雛型もモデルと呼ばれ,イタリア語のモデロmodelloは絵画の構図習作も含む。
素描
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モデル」の意味・わかりやすい解説

モデル
model; modello

美術用語。絵画や彫刻そのほかの芸術表現のために使用する対象物。デッサンなどの練習用に使用する場合,作品の発想を定着させるために借りる場合,肖像などのように対象物そのものを表現する場合などのように,目的によりそれぞれ異なった意味で使用される。絵画,彫刻作品の注文が大作であるとき,その全体の構想をあらかじめ小さな作品にスケッチし,依頼者の了承を得る場合などに使用する絵画,彫刻をモデロともいう。

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