オゾン層(読み)オゾンソウ(英語表記)ozone layer

翻訳|ozone layer

デジタル大辞泉 「オゾン層」の意味・読み・例文・類語

オゾン‐そう【オゾン層】

大気の成層圏の、地上から10~50キロにある、オゾン濃度の比較的高い層。生物に有害な紫外線を吸収する働きがある。

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精選版 日本国語大辞典 「オゾン層」の意味・読み・例文・類語

オゾン‐そう【オゾン層】

  1. 〘 名詞 〙 地上一〇~五〇キロメートルの上空にあって、オゾンを多量に含む層。生物に有害な紫外線が地表に届かないよう吸収する働きがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「オゾン層」の意味・わかりやすい解説

オゾン層 (オゾンそう)
ozone layer

上空大気中でオゾン量の多い領域。1880年から82年にかけてシャピュイM.J.Chappuis(フランス)とハートリーW.N.Hartley(アイルランド)により独立に発見された。地上高度20kmないし25kmを中心に,厚さ約20kmにわたり分布する。中心付近の密度はおよそ5×1012分子・cm⁻3で,鉛直気柱内の全量は平均8×1018分子・cm⁻2(0℃,1気圧において0.3cmの厚みに相当)である。オゾンは波長200~300nmの紫外線を強く吸収するので,生物細胞中の核酸を壊してしまう太陽紫外線放射が地上に侵入するのを防いでくれる。それゆえに,オゾン層は地上生物の生存にとって不可欠の存在である。

 オゾン層の紫外線遮へい効果は300nm付近から長波長側では不完全となり,太陽紫外線(波長域305±10nm)がわずかに地上に漏れ出してくる。この紫外線はUV-Bとも呼ばれ,生物機能に損害を与えるが,これに対して地上生物は進化の過程で種々な防御機能を獲得している。UV-Bの地上照射量はオゾン量の変動に敏感であるから(変化率にして約2倍の増幅度がある),オゾン量の長期変動は地上生物にとって重要な環境因子である。

 大気中のオゾンO3は酸素原子Oが酸素分子O2と結びついてできる。オゾン層内においては,この酸素原子は太陽紫外線(波長242nm以下のエネルギーの高い部分)の解離作用によって,大気の主成分である酸素分子から作られる。地球大気の酸素分子は光合成を行う生物によってもたらされたものであるから,オゾン層は生物自身が作り出したものだといえる。地球の歴史を通じてオゾン層の消長は生物進化と相互に影響しあっている。オゾン層が貧弱で紫外線遮へい効果の弱かった初期段階では,生物は水中でのみ生存可能であった。水中で光合成を行う生物が現れ,大気中の酸素分子濃度をしだいに増やしていった。こうして古生代の中ごろ(約4億年前)には,大気中の酸素濃度は現在の1/100程度になった結果,現在と同程度の紫外線遮へい効果をもつオゾン層ができあがり,陸上に生物がすめるようになったものと推測されている。こうしたことから,オゾン層は他の惑星にはない,地球大気に特有の存在であることが理解できる。

 オゾンは太陽紫外線により速やかに分解されるが,この際生じた酸素原子がオゾンを再生するので,この分解過程では正味のオゾン消失はない。オゾンの消失につながる反応としては,オゾンと酸素原子との反応がある。これに加えて,大気中に微量に存在する水素酸化物,窒素酸化物,塩素酸化物などの気体が触媒反応サイクルを形成しており,これによって効率よくオゾンを壊す。オゾンの生成反応は,最終的にはこれらの消失反応と釣合いを保ち,安定なオゾン層が保持されている。しかし近年,超音速航空機の排出する窒素酸化物,スプレー缶や冷凍機などに使われ大気中に棄却されたクロロフルオロメタンなどの塩化炭素(別称フロン)などがオゾンの消失反応を高め,その結果オゾン層が侵食されるのではないかと懸念されている。オゾン量のレベルが長期的に低下した場合,UV-B地上照射量の増加により皮膚癌の発生率を高める。また作物収量減などに加えて生態系に種々な影響を与えるものと予測されている。

 オゾン層は日により季節により変化する。この変化の仕方は地球上の場所によって異なっており,とりわけ緯度・季節変化に際だった特徴がある。太陽直下の低緯度上空でたくさん作られたオゾンは,空気の動きにより高緯度上空へ運ばれる。このためオゾン量は高緯度の方が低緯度よりも多く,また季節では春に極大,秋に極小となる。こうした変動は大気の大規模な運動に原因がある。一方,オゾン層の吸収する太陽紫外線のエネルギーは,大気を暖める熱源として,成層圏形成の主要因となっているが,同時に大気の大規模運動もひき起こすので,オゾン層は上空における大気の運動と密接な関係にある。大気の大規模な運動は地球全体の気候と深いつながりがある。またオゾンは赤外線を強く吸収・放出するので大気の熱放射にも影響を与える。これらの点からオゾン層は気候を左右する因子として重要である。
執筆者:

1985年採択された〈オゾン層保護のためのウィーン条約〉および87年採択の〈オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書〉にもとづき,数回にわたる議定書締約国会議を経て,フロンやハロンなどの規制が強化されている。日本では1988年3月,〈ウィーン条約〉と〈モントリオール議定書〉の国内実施法として〈特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法〉(略称,オゾン層保護法)が制定された。
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百科事典マイペディア 「オゾン層」の意味・わかりやすい解説

オゾン層【オゾンそう】

高度25kmあたりを中心にほぼ成層圏と同じ領域で特にオゾンを多く含む大気層。波長240nm以下の太陽紫外線は地上には到達せず,主として上部成層圏で酸素に吸収され同時に酸素を分解してオゾンを生成する。オゾンは太陽紫外線を吸収し加熱されるため50kmあたりはその上下より気温が高い。生成されたオゾンは下部成層圏に運ばれオゾン層を形成する。→オゾンホール
→関連項目オゾンオゾン層破壊オゾン層保護条約グリーンピース紫外線西暦2000年の地球大気大気汚染大気浄化法地球環境ファシリティフロンUVカット商品

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化学辞典 第2版 「オゾン層」の解説

オゾン層
オゾンソウ
ozonosphere

地球大気に入射する太陽の紫外線は,その強い作用により酸素分子 O2 をオゾン O3 にかえる.このオゾン濃度が比較的高い成層圏(地上10~50 km)下部の層をいう.オゾン濃度は上空20 km 付近において最大で,この高度でのオゾン濃度は最大5×1012 molecule cm-3,同高度での空気の密度は1.7×1018 molecule cm-3 であり,その濃度は約3 ppm 程度である.太陽光線中の生物に有害な短波長紫外線(200~300 nm)を吸収して,地上に到達することを防いでいる.近年,スプレー噴射剤や洗浄剤,冷媒として使用されたクロロフルオロカーボンなどが成層圏に達して,紫外線との反応により塩素原子を発生し,オゾン層を破壊することが問題となっている.オゾン濃度の希薄部分をオゾンホールとよび,オゾン層破壊の進行により,地上での紫外線量が増加し,北欧,オーストラリアなど高緯度地域を中心に,皮膚がんや白内障の増加が報告されている.同時に,植物やプランクトンなどの生態系や気候などへの影響も懸念されている.こうしたことから,オゾン層を保護するための国際的な取り組みとして,1985年にオゾン層保護のためのウィーン条約が,1987年にオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のオゾン層の言及

【オゾン】より

…大気中では,酸素に紫外線があたると光化学反応を起こして生成する。濃度が比較的高いところは,地上約20~25kmの高度に,厚さ約20kmにわたって分布し,オゾン層と呼ばれている。紫外線に富む高山,森林,海岸などの空気中にも存在するが,塵埃(じんあい)などで分解されやすく,地表付近の濃度はきわめて低い。…

※「オゾン層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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