翻訳|Cassini
NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)が1997年10月にタイタンⅣ型ロケットにより打ち上げた史上初の土星探査機。プロジェクト名はカッシーニ・ホイヘンスCassini-Huygens。土星本体を探査する「カッシーニ」(NASA)と、土星の最大の衛星タイタン(チタン)に着陸する「ホイヘンス」(ESA(イーサ)、ヨーロッパ宇宙機関)の二つの探査機が同時に打ち上げられた。打上げ後、金星、地球、木星の順にスイングバイ(天体の万有引力を利用して衛星の加速、減速、軌道変更を行う技術)を行い、2004年7月に土星の周回軌道に乗った。同年12月にはタイタンに接近し、翌2005年1月に「ホイヘンス」を切り離してパラシュート降下させて、着陸に成功した。
「カッシーニ」本体は長さ約6.7メートル、最大直径4メートル、打上げ時の質量約5700キログラム(「ホイヘンス」を含む)。土星は太陽から遠く、太陽電池パネルで安定した発電ができないため、原子力電池(放射性同位体熱電対)が搭載された。「ホイヘンス」は、直径約2.7メートルの円盤型をした質量約320キログラムの着陸機で、タイタンの大気組成や風速などを観測する。「カッシーニ」には12種類の観測機器(プラズマ計測器、コズミック・ダスト計測器、赤外線計測装置、イオンおよび中性子質量分析器、画像化サブシステム、磁力計、磁気圏画像化装置、レーダー、電磁波およびプラズマ科学装置、電磁波科学サブシステム、紫外線画像化装置、可視および赤外線マッピング装置)が搭載された。カッシーニが土星軌道に投入されてから、タイタンが地球のように雨や川、湖、海をもつことがわかった。さらに土星の衛星を7個発見し、写真を33万2000枚撮影するなど多くの成果をあげた。「ホイヘンス」はタイタンの着陸地点上空8キロメートルで、解像度20メートルのタイタンの映像を撮影した。その後タイタンに着陸し、大気の組成、風速、気温、気圧等を観測した。搭載機器はエアロゾル計測器、画像カメラ、スペクトル放射計測器、ドップラー風観測器、ガス・クロマトグラフィーと質量スペクトロメーター、大気構成計測装置、表面計測科学パッケージである。
「カッシーニ」による周回探査は、2017年9月にカッシーニ本体を土星の大気圏に突入させて運用を終了した。
なお、カッシーニの名はフランスの天文学者ジョバンニ・カッシーニに、ホイヘンスの名はオランダの物理学者クリスチャン・ホイヘンスに由来する。
[森山 隆 2017年9月19日]
イタリア系フランス人の天文学者。カシニともいう。ニース近郊に生まれ、ジェノバで聖職修業中に、ガリレイの弟子カバリエリに師事して数学・天文学を修得し、1650年25歳でボローニャ大学教授に任ぜられた。惑星観測の業績でピカールの推挙によりルイ14世の招きを受け、1669年に新設のパリ天文台初代台長に就任した。その後、子孫4代にわたり同天文台長を襲職、一門で学界を指導した。1665年に木星の大赤斑(せきはん)を発見、その移動による木星自転周期を確定し、1666年には土星の自転をも検出、1668年には木星のガリレオ衛星4個の運行表を作成した。この表は航海上の経度算定の必要資料となり、また、レーマーの光速測定に基礎手段を供した。パリ転任後、1671年にヤペトゥス、1672年にレア、1684年にディオネとテチスと土星の4衛星を次々に発見した。また1672年にはギアナに出張中のリシェJean Richer(1630―1696)との共同により火星接近の地心視差を測定した。この値は天文単位距離に7%まで近似した。1673年フランスに帰化。1675年に土星の環(わ)の精密測定を行い、A環とB環との間に「カッシーニの空隙(くうげき)」を発見し、環の本体は粒塊の集合組織であることを推定したが、これはのちにマクスウェルの理論と、キーラーJames Edward Keeler(1857―1900)のスペクトル観測によって確かめられた。そのほか黄道光、黄道傾斜、月の秤動(ひょうどう)を観測した。
[島村福太郎]
(葛西奈津子 フリーランスライター/2017年)
(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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