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クマ クマ Ursidae; bear

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

クマ
クマ
Ursidae; bear

食肉目クマ科に属する動物の総称。7種から成る。体長 100~280cm,体重 27~800kgでヒグマホッキョクグマ食肉類中最大。からだつきはがんじょうで,毛色は黒,こげ茶,茶,白などであり,メガネグマのように部分的に模様を有するものがいる。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クマ
くま / 熊
bear

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科に属する動物の総称。この科Ursidaeの仲間は陸上では最大の食肉類で、アライグマ科に近縁である。アジア、ヨーロッパ、南北アメリカに分布するが、アフリカ、オーストラリアにはいない。[渡辺弘之]

形態

大きさは種類により異なるが、もっとも小さなマレーグマで頭胴長1.4メートル、体重65キログラム、最大のヒグマの1亜種アラスカのコディアク島に生息するアラスカヒグマ(コディアクヒグマともいう)やホッキョクグマでは2.8メートル、700~800キログラムになるという。体つきは頑丈で、大きな体を支えるため四肢は短く太い。前後肢とも幅広く5指。大きな鉤(かぎ)づめがあり、木登り、穴掘りに使う。足裏全部を地につけて歩き、後肢で立ち上がることもできる。目は小さく、耳は短く丸い。あごは発達し、犬歯は大きく、臼歯(きゅうし)は短く扁平(へんぺい)で植物質のものを擦りつぶすのに適する。毛は長くて粗く、尾は短い。歯式は

で合計42本である。[渡辺弘之]

種類

7属8種、またはアラスカヒグマを独立種とし7属9種に分ける。北極地方にクリーム色のホッキョクグマThalarctos maritimus、ヨーロッパからアジア、さらに北アメリカに褐色のヒグマUrsus arctos、北アメリカに黒色のアメリカクロクマEuarctos americanus、灰色のハイイログマU. horribilis、南アメリカのアンデス山脈にメガネグマTremarctos ornatus、アフガニスタンから東アジア、海南島、台湾、日本にツキノワグマ(アジアクロクマ、ヒマラヤグマともいう)Selenarctos thibetanus、東南アジアにマレーグマHelarctos malayanus、インド、スリランカにナマケグマMelursus ursinusがいる。メガネグマ、ツキノワグマ、マレーグマ、ナマケグマでは毛は黒く、前胸部に白斑(はくはん)、いわゆるツキノワ(月の輪)をもつものが多い。
 日本には北海道にヒグマの1亜種エゾヒグマU. a. yezoensis、本州、四国にツキノワグマの1亜種ニホンツキノワグマS. t. japonicusが分布するが、互いに津軽海峡を越えていない。ニホンツキノワグマは本州では山口県から青森県までの脊梁(せきりょう)山脈沿いに広く、四国では何か所かに隔離状態で分布し、九州ではまだ生存するといううわさはあるが、第二次世界大戦後、確実な捕獲例はなく、絶滅視されている。[渡辺弘之]

生態

子グマを連れた雌親のほかは、主として単独で生活する。食肉類であるが、食性は雑食性で、草本植物の根や新芽、樹木の果実、昆虫、魚類など、なんでも食べる。しかし、ホッキョクグマ、ヒグマ、ハイイログマなどは肉食、マレーグマ、ツキノワグマ、メガネグマ、ナマケグマなどでは草食の傾向が強い。ニホンツキノワグマでは春はブナの新芽、タムシバの花、スゲ、フキ、ウワバミソウなどの草本類、タケノコ、夏はアリなどの昆虫、蜂蜜(はちみつ)、秋はミズナラ、クリ、ウワミズザクラ、ミズキなどの樹木の実を主として食べている。登山者の捨てた残飯、ごみなども好んで食べる。
 動作はのろまにみえるが、走るのは速い。ツキノワグマ、マレーグマ、メガネグマなどは木登りが上手、ホッキョクグマ、ヒグマなどは泳ぎが上手である。高緯度地方に生息するヒグマ、ツキノワグマ、ハイイログマなどは、冬は樹洞あるいは地中に穴を掘って冬ごもりする。しかし、ホッキョクグマでは冬ごもりしない。冬ごもりするものでは、この期間中に雌は出産する。産子数は1、2頭で、2頭の場合は雌雄1頭ずつのことが多い。冬ごもり中は外へ出ず、秋にとった栄養分だけで過ごす。体温も低下するが、爬虫(はちゅう)類のような冬眠ではないので、意識はある。妊娠期間は7~8か月、受精卵の子宮粘膜への着床が遅れたり、着床してもしばらく発育しないという。生まれた子グマは300グラム程度、雌親の体に比べて、きわめて小さい。寿命は、ニホンツキノワグマでは、動物園で36年生きた記録がある。野生のものでは歯の断面に現れる年輪から判定して24年というものがあったので、最長30年であろう。
 ニホンツキノワグマでは、その生息地は、冬ごもり前の食べ物であるコナラ、ミズナラなど落葉広葉樹のある所、また冬ごもりのための樹洞のある所、すなわち天然林に限られている。しかし、これら地域が急速に開発されていること、また、スギ、ヒノキなどの樹皮剥皮(はくひ)の被害を防除するために有害獣駆除が続けられていることから、生息数、生息域は急速に減少しているといわれる。また、このツキノワグマではアルビノ(白化型)が新潟県などで数回捕獲されている。それらはシロクマとよばれ、ホッキョクグマと混同されている。[渡辺弘之]

人間生活との関連

日本では春先、冬ごもり穴から出たものを雪上で追う巻狩り、積雪期、冬ごもり中のものを捕獲する穴熊(あなぐま)撃ちが行われる。有害獣駆除では檻(おり)を仕掛けるが、効率はよい。毛皮は敷物に、胆嚢(たんのう)は「熊の胆(い)(熊胆(ゆうたん))」と称し健胃薬として利用されるが、肉はあまりおいしくない。狩猟によるツキノワグマの捕獲数は年間900~1300頭、有害獣駆除により捕獲されるものが900~1600頭に及ぶが、近年、有害獣駆除による割合が大きくなってきている。
 いずれのクマもときとしてヒトを襲うことがあり、ウシ、ウマ、ヒツジなど家畜類への被害も多い。ニホンツキノワグマではスギ、ヒノキ、カラマツなどの針葉樹の樹皮をはぎ、形成層をかじる、いわゆるクマはぎの森林被害が、静岡、三重、和歌山など太平洋岸地域の各県に多く発生し、その面積は毎年400~1200ヘクタールにも及んでいる。アメリカクロクマにも同様な習慣があり、ダグラスモミの剥皮が問題になっている。また、クマ類は、クリ、カキ、リンゴ、ナシなどの果樹、トウモロコシ、ソバ、カボチャ、スイカ、タケノコなどの作物にも被害を与えるほか、蜂蜜を好み、ミツバチの巣箱を荒らすことも多い。一方、クマには訓練をして芸を教えることができ、サーカスなどでは人気者になっている。[渡辺弘之]

民俗

クマは日本でもっとも大きい狩猟獣で、クマを神聖視する伝えもある。古く『古事記』(712)にも、神武天皇(じんむてんのう)が熊野村(和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡)を訪れたとき、大きなクマが現れると、天皇とその軍勢は体の力が抜けて倒れたとある。クマを神霊とみたのであろう。熊の胆(い)や毛皮は商品的価値があるため、東北地方の狩猟民またぎにとっては第一の獲物であった。山ことばでは、ヤマノオヤジ、クロゲ、ナビレ、イタチなどとよばれ、イタチとよぶのは、イタチに出会うことを忌む習慣と表裏をなす観念であろう。村で祀(まつ)る熊野権現(ごんげん)をクマの神のように伝える例もあり、なかには神としてとることを禁じている土地もある。またマタギの間には、特殊なクマの伝えもある。とくに「ミナグロ」とよばれる全身真っ黒なクマを、山の使いとか化身とかいい、これをとったときはまたぎをやめなければならないという。反対に、真っ白なクマ(白化型)は「ミナシロ」とよばれ、ミナグロ以上に神聖視されて畏(おそ)れ敬う。
 クマの狩猟儀礼はもっとも丁重で、クマをとったらかならず熊祭をするものだともいう。しとめられたクマが最後にあげる声は「三途(さんず)声」といって、山の神がまたぎにクマの体を与える許しの声であると伝え、この声を聞くと、「勝負、勝負」と神へのお礼を表す声をかけて皮をはぎ取り、毛祭(けまつり)をする。頭を川上にして置き、毛皮をかけて唱え言をするが、済んだらそれを上下逆さにしてかけ直す。これは人間の死者の逆さ着物の作法に相当するもので、クマに引導を渡す意味がある。解体したら、内臓と、首と背からとった肉片を12ずつ、クロモジなどでつくった串(くし)2本に刺して火にあぶり、山の神に供えて、またぎたちも食べる。
 アイヌでも、クマはシカと並ぶ重要な狩猟獣で、一般にクマを山の神とし、カムイ(神)といえばクマをさす。アイヌの観念では、クマの肉は神からの贈り物で、殺されたクマの霊魂は、役目を果たしてクマの世界へ帰るという。クマの子を神からの預かり物として2~3歳まで飼育し、狩猟期の前になると儀礼的に殺害する熊送りも、親の国へ帰ったクマの子が、人間にたいせつにされたので、もっとクマを人間に遣わすように伝えてほしい、と願うものである。樺太(からふと)(サハリン)やアムール川河口に住むニブヒ(ギリヤーク)人や、隣接して住むツングース系の諸民族でも、クマは神から遣わされた神聖な獣であるとし、アイヌと同じ熊送りを行う。北方ユーラシアから北アメリカの狩猟民の間でも、クマの頭や骨を、儀礼的に処置する習俗が広くみられ、頭を木の上や特定の棒、柱の上、あるいは屋根の上に掲げる作法が特徴的である。日本でも福島県会津地方には、クマの頭を棒に刺して常緑樹の下に立て、山の神を祀る風習があった。[小島瓔
 アイヌの熊送りと同種の儀礼は、ロシアのニブヒ人にもある。クマをとらえると村に運んで檻(おり)に入れ、老いたクマなら数か月、子グマならば成獣になるまで村全体でたいせつに飼育した。時がくると、クマは檻から引き出され、棒を立ち巡らせた神聖な場所で矢を射かけて殺された。死んだクマは村へ戻され、その肉を長老が厳粛に煮て、切り落としたクマの頭にまず供え、その後特別の容器に盛り分けて共食の宴が開かれた。このような祭宴は死者の追悼儀礼と組み合わされることもあり、イヌがクマへの供え物として殺され、供えられることもあった。
 北アメリカ先住民のスーなどの平原インディアンでは、クマを崇拝する特別の結社があり、クマが病気を治療する役割を担っていたことなども知られている。クマを直接によぶことを忌む習慣は、日本ばかりでなく外国でもみられ、スウェーデンでは「おじいさん」、フィンランドでは「森のリンゴ」などの呼称が使われる。
 約10万年から3万5000年前にかけて生存したヨーロッパのネアンデルタール人の遺跡からは、ホラグマの骨がたくさん出土するが、なかには当時すでにクマに対する儀礼や祭祀(さいし)が行われていたことを暗示するような証拠も残されている。たとえばスイスのドラッヘンロッホの洞穴遺跡では、地中につくられた石室の中にホラグマの頭蓋骨(とうがいこつ)が7個、洞穴の入口のほうに顔を向けて整然と積み重ねられていた。また同じ洞穴の奥には壁龕(へきがん)(彫像などを置くために設けられた壁面のくぼみ)がつくられ、6個の頭蓋骨が安置されていた。クマの強大さが、おそらく人々に畏怖(いふ)の念を呼び起こし神聖視されることになったのであろう。このような太古に芽生えたクマにまつわる超自然的観念は、現在の諸民族の神話や伝承、そして儀礼のなかにも生き続けている。クマは太陽や月、あるいは雷や水と結び付いて崇拝されることもあり、また人間の祖先として語られることもある。カリフォルニア州の先住民モドックは、天界の精霊の娘とグリーズリー(ハイイログマ)が結婚してできた子供たちが人間になったという話を伝えている。[松本亮三]

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