アメリカの論理学者、哲学者。オベリン大学卒業、ハーバード大学大学院修了。1930年代ウィーンに遊学し、論理実証主義者と交わる。ハーバード大学で長く教え、のちに同大学名誉教授。集合論の公理系を二つ(それぞれNF、MLの略称で知られる)提出した。また、論理学の研究から示唆を得て、「存在するとは、変項の変域に入ることである」とする、有名な存在論的なテーゼをたてた。存在論のうえでは唯物論、認識論のうえではプラグマティズムの流れに属する。分析哲学の世界では、きわめて影響力の大きい大御所であった。来日したこともあり、日本の哲学者のなかにも弟子が多い。著書は多数あるが、『論理学的観点から』(1953,1961, Harvard University Press)が、小冊子ながらその哲学への入門に適している。
[吉田夏彦 2015年10月20日]
『中山浩二郎・持丸悦郎訳『論理学的観点から――9つの論理・哲学的小論』(1972・岩波書店)』▽『W・O・クワイン著、杖下隆英訳注『現代論理入門――ことばと論理』(1972・大修館書店)』▽『W・V・O・クワイン著、大出晁・宮館恵訳『ことばと対象』(1984・勁草書房)』
アメリカの論理学者,哲学者。長くハーバード大学で教え,現代アメリカを代表する哲学者の一人。数理論理学でも独自の論理体系をつくったが,若いころ影響を受けたカルナップ等への批判を通じて,独自の意味論と存在論を構築するに至った。外界を叙述するための言語として数理論理学の言語に理想的枠組をみて,日常言語をこれに合うように再組織しようとする。そして存在の構造はこのような言語で原理的に語れるとする。哲学者がいかなる存在論をとっているかは彼の使う言語からわかると考えるが,いかなる存在論をとるべきかについては叙述の便宜以外の規準は認めない。一方,分析的命題と総合的命題の原理的区別を認めないため,意味という独自の存在領域を認めず,経験的命題はすべてそれを含む体系とのかかわりでしか検証されないし,ある言語の他の言語への根元的翻訳は不可能とする。主著《数理論理学》(1940),《語と対象》(1960)。
執筆者:中村 秀吉
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…哲学的問題に対し,その表現に用いられる言語の分析から接近しようとする哲学。論理分析logical analysis,哲学的分析philosophical analysisともいう。言語の分析にかぎらず広く言語の考察から哲学的問題に迫ろうとする哲学をすべて〈分析哲学〉と呼ぶこともあるが,これは不正確である。 言語分析は20世紀の初頭,B.A.W.ラッセルとG.E.ムーアによって始められたといってよい。…
※「クワイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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