ケラチン(英語表記)keratin

  • Keratinドイツ語
  • keratin英語
  • 〈ドイツ〉Keratin

翻訳|keratin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

動物体の角,蹄,爪,髪,羽などに含まれている硬蛋白質一種。ときに 10~15%に及ぶシスチンを含むことが特徴の一つで,分子内にペプチド鎖間のS-S結合が多いことから,物理的・化学的抵抗力が強く,蛋白分解酵素に作用されにくく,10%以上の濃度のカセイソーダでようやく分解される。天然のものはα-ケラチンといわれる分子構造であるが,引伸ばすとβ-ケラチンとなる。一方,水蒸気加熱や薬品処理で,もとよりも短くなる超収縮 (過収縮) の現象もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

硬タンパク質の一種。動物がその生体外界から隔離するために形成した保護外被,すなわち皮膚角質層,毛髪,羊毛,羽毛,角,つめ,うろこ,くちばしなどを形成している類似タンパク質の総称角質ともいう。丈夫で弾性に富み,化学的に安定である。水をはじめとするすべての中性溶媒に不溶。タンパク分解酵素の作用も受けにくい。アミノ酸組成システインが多く,16%にも達するものがある。ペプチド鎖はその大部分がα構造をとり,さらにそのペプチド鎖が集まり,互いに左巻きにねじり合って超らせんを形成していると考えられている。

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大辞林 第三版の解説

毛髪・爪・ひづめ・角・羽毛などの主成分となっている硬タンパク質の総称。水に溶けにくく安定している。角質。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

硬タンパク質の一つで、毛髪、つめ、皮膚などの構造タンパク質(生体内で構造・形態などを形成・保持するタンパク質)の総称。角質ともいう。水およびすべての中性溶媒に不溶である。また、ペプシントリプシンなどのタンパク分解酵素の作用を受けにくい。ケラチンの分離は、原料を粉末にして熱有機溶媒および熱水による処理ののち、タンパク分解酵素で共存するタンパク質を除去してケラチンを残す。ケラチンはα(アルファ)-ケラチン群とβ(ベータ)-ケラチン群に分けられるが、α-ケラチンが主である。α-ケラチン群はシスチン含有量の多いことが特徴で、ペプチド鎖はジスルフィド結合(-S-S-)に富み、網状につながった繊維構造をもつ。角(つの)やつめのシスチン含有量は約22%、皮膚、毛髪、羊毛では10~14%である。また、他のアミノ酸もほとんどのものを含む。β-ケラチン群は、爬虫(はちゅう)類、鳥類の鱗(うろこ)、つめ、嘴(くちばし)などを構成し、シスチンを含まず、側鎖のアミノ酸としてグリシン、アラニンが多い。X線回折像をみると、α-ケラチン群は互いに似ており、β-ケラチン群とはポリペプチド鎖のねじれ方や巻き方が異なる。α-ケラチン群はポリペプチド鎖がすべて平行で、α-螺旋(らせん)構造とよばれる構造をもち、β-ケラチン群はポリペプチド鎖間に水素結合をしたβ-シート(折り紙構造)とよばれる構造をもつ。毛髪などに張力をかけたり湿らせたりすると伸びるが、この状態のX線回折像は、β-ケラチン群の像に似ており、いわば「β型」をとっているようにみえる。この状態のケラチンをβ-ケラチンとよぶこともある。この見かけのα-β転移は可逆的で、張力を取り去ると自然に収縮する。羊毛が弾性を示すのはこのためとされているが、熱水、水蒸気、アルカリなどで処理すると、繊維は「β型」に固定されて収縮できなくなる。パーマネントセットされた毛髪はこの状態である。前記のように構造タンパク質として存在するほか、細胞骨格に含まれる中間径フィラメントの一つであるケラチンフィラメントを形成する。また、水疱(すいほう)形成を示す皮膚疾患にはケラチン遺伝子の突然変異が原因となっているものがある。[飯島道子]
『D・ヴォート、J・G・ヴォート著、田宮信雄他訳『ヴォート生化学』(1996・東京化学同人) ▽宮本武明他編『21世紀の天然・生体高分子材料』(1998・シーエムシー) ▽R・K・マレー他著、上代淑人・清水孝雄監訳『ハーパー生化学』原書28版(2011・丸善)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (Keratin) 羊毛、羽毛、蹄爪や毛髪などの硬蛋白質の総称。水およびすべての中性溶媒に溶けない。角質。
※他人の顔(1964)〈安部公房〉黒いノート「それはケラチンと呼ばれる、微量の蛍光物質を含んだ角質蛋白の一種だった」

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化学辞典 第2版の解説

角質タンパク質ともいう.は虫類,鳥類,ほ乳類の表皮角質,毛,爪,角,羽毛,卵殻などの構成タンパク質で,シスチンを多く含む(11~12%).電子顕微鏡による観察では,直径約20 nm繊維が六角格子状または層状に並び,この繊維はさらに9本の細繊維が円筒状になったものである.細繊維は直径約2 nm で,αヘリックスペプチドが2本ないし3本より合わされたと仮定すると矛盾しない.X線回折法による研究から,細繊維は0.51 nm ピッチのαヘリックス構造をとり,水蒸気で引き伸ばした羊毛,毛髪ではβ構造をとると考えられている.[CAS 169799-44-4]

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世界大百科事典内のケラチンの言及

【角質】より

…つめ,ひづめ,毛,ウシの角の外被,ヒゲクジラのひげ,爬虫類のうろこ,くちばしの外被,カメの甲羅の表面など,本来,空気中で生活する脊椎動物の体表に生じる硬い死組織を総称する語。角質の主成分はケラチンと呼ばれる硬タンパク質である。この点で,無機塩類(カルシウム)を主成分とし,体の内部に生じた硬組織である骨や歯とは異なる。…

【毛】より

…毛小皮は毛の最外層をなすもので,そこには角質化変性が最も進み,無核性となった扁平な表皮細胞が屋根瓦状配列を示すのが認められる。角質化変性とは,表皮細胞内にケラチンが蓄積して,やがて細胞自体の死に至る過程(すなわちケラチンという物質塊のみが残る)をいう。この過程の進行中に表皮細胞内のメラニンもしだいに溶解するのであるが,メラニンの細胞内絶対量が初めから多い場合は,毛の髄質と皮質にメラニンがかなり残存し,毛は生毛,終毛を問わず黒褐色となる。…

【硬タンパク質】より

…植物界では硬タンパク質の代りにセルロース類が同じ役割をしているものと考えられている。 例としては骨,皮,腱などに含まれているコラーゲン,靱帯や動脈などの成分であるエラスチン,毛髪,羽毛などのケラチン,絹のフィブロイン,カイメンのスポンジ(海綿質)などが知られている。不溶性の原因はコラーゲンの場合には年齢とともに生ずる分子間の橋かけ結合であり,エラスチンの場合には分子内の橋かけ結合によるものと考えられている。…

※「ケラチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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