改訂新版 世界大百科事典 「サキシマスオウノキ」の意味・わかりやすい解説
サキシマスオウノキ
Heritiera littoralis Dryland ex Ait.
マングローブ背後の湿地林に生育するアオギリ科の常緑高木で,アフリカ東岸地方から東南アジア,ポリネシアにわたる広い範囲に分布し,日本の奄美大島にまで達する。地上に広くはう鋭い巨大な板根(ばんこん)は異観を呈し,西表(いりおもて)島東岸にこの巨木群がみられる。樹高20~25m,直径60~80cmになり,樹皮は灰色~褐色で,薄片状にはげる。葉は単葉で互生し,葉柄1~3cm,葉身は長さ15~22cmの楕円形~長卵形,全縁で,裏面は銀色~黄褐色の鱗片でおおわれる。花は単性,淡黄緑色の小花で,腋生(えきせい)する円錐花序に多数つく。萼は鐘形で先が4~5裂し,花弁はない。おしべは中央に環状に集まり,4~5個の葯をもつ。果実はやや木質,長さ3~5cmの楕円形の袋果で,裂開しない。木材は暗灰褐色~暗褐色の心材をもち,気乾比重0.85~1.00で重硬。木材の組織中に粒状のケイ酸SiO2を多く含み,のこぎりなどの磨耗を早めるため加工しにくい。しかしシロアリに強く,自生地域では建築材として用いる。材を煎じると紅汁が出るが,宮古・八重山列島(先島)ではマメ科のスオウにならって,これで布を染める。和名はこれに由来する。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報