Sm.原子番号62の元素.電子配置[Xe]4f 66s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量150.36(2).質量数144(3.07(7)%),147(14.99(18)%),148(11.24(10)%),149(13.82(7)%),150(7.38(1)%),152(26.75(16)%),154(22.75(29)%)の7種の天然に存在する同位体と,質量数128の放射性同位体が知られている.天然に存在する同位体のうち,146Sm,147Sm,148Sm はそれぞれ,半減期1.03×108 y,1.06×1011 y,7×1015 y のα放射体である.1879年,L.de Boisbaudranによりサマルスキー石から分離された.元素名はサマルスキー石にちなんで命名された.サマルスキー石,ガドリン石,セル石に含まれる.地殻中の存在度3.5 ppm.塩化物の溶融塩電解により得られる金属は銀白色.融点1077 ℃,沸点1791 ℃.密度7.52 g cm-3(20 ℃).沸点はEuと同様,ほかのランタノイド元素( > 3000 ℃)よりいちじるしく低い.標準電極電位 Sm3+/Sm-2.30 V.第一イオン化エネルギー5.644 eV.希酸に可溶.熱水とも反応する.酸化数2,3の化合物があるが,SmⅢの化合物はほかの希土類元素と同様の性質をもつ.化合物の色は黄色で常磁性は希土類元素中もっとも弱い.Sm2+,Sm3+ の電子配置は4f 6,4f 5.SmⅡの化合物は,YbⅡ,BaⅡの化合物に類似し,硫酸塩,リン酸塩は水に難溶.水溶液中で容易に酸化され,EuⅡ化合物より不安定である.耐熱性永久磁石,サマリウム-コバルト磁石(SmCo5,Sm2Co17,Sm2(Co,Fe,Cu,Zr))用が最大の用途である.1980年代にはウォークマンなどヘッドフォンに多用されたが,より安価で強力なNd-Fe-B磁石にとってかわられた.携帯電話用にはまだ使われることもある.[CAS 7440-19-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第3族に属し希土類元素の一つ。1879年、フランスのボアボードランがサマルスキー石から分離し、鉱物の発見者であるロシアのサマルスキー・ビホベッツVasilii Erafovich Samarski-Bykhovets(1803―1870)にちなんで命名した。主要鉱物はサマルスキー石、ガドリン石、セル石などである。酸化物を金属ランタンで還元して灰白色の金属を得る。空気中で150℃以上に熱すると酸化物になる。熱水、希酸に水素を発して溶ける。普通、酸化数+Ⅲの化合物をつくるが、+Ⅱのものもある。サマリウム(Ⅲ)化合物の常磁性は、希土類元素化合物中もっとも弱い。天然に存在する同位体のうちサマリウム147はα(アルファ)放射体なので弱い自然放射能をもつ。
[守永健一・中原勝儼]
サマリウム
元素記号 Sm
原子番号 62
原子量 150.36±3
融点 1080℃
沸点 1790℃
比重 7.36
結晶系 六方
元素存在度 宇宙 0.23(第65位)
(Si106個当りの原子数)
地殻 6.0ppm(第39位)
海水 0.43×10-3μg/dm3
周期表第Ⅲ族に属する希土類元素の一つ。1879年フランスのボアボードランP.E.L.de Boisbaudran(1838-1912)がサマルスキー石から新元素を分離し,その鉱物の発見者ロシアのサマルスキーV.E.Samarskiiにちなんで命名した。サマルスキー石,ガドリン石,セル石などの中にセリウムなどの希土類元素とともに少量含まれて産する。無水塩化物SmCl3の溶融塩電解または溶融アルカリ金属での還元によって単体が得られる。単体は灰色の金属。熱水とは反応して水素を発生する。希無機酸には溶けやすい。熱すると200~400℃で酸化物となる。
執筆者:中原 勝儼
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