シラン(紫蘭)(読み)しらん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シラン(紫蘭)」の意味・わかりやすい解説

シラン(紫蘭)
しらん / 紫蘭
[学] Bletilla striata (Thunb.) Reichb.fil.

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。偽鱗茎(ぎりんけい)があり、エビネ状に連なる。葉は4、5枚互生し、長楕円(ちょうだえん)形、長さ20~30センチメートル、幅2~5センチメートル、縦じわが目だつ。葉の間から高さ30~70センチメートルの花茎を出し、5~6月、紅紫色の花を数個まばらに開く。側花弁は平開し、径約5センチメートルで目だつ。唇弁は内側に巻いて筒状となり、5条の縦ひだがある。距(きょ)はない。低山のやや湿った草地や林縁に生え、関東地方以西の本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。偽鱗茎は漢方で止血痛み止めに用いる。名は花色に基づく。

 シラン属は粉質の花粉塊があり、葉が基部で関節し、花序は頂生するなどの特徴がある。東アジアに9種分布する。

[井上 健 2019年5月21日]

 園芸品種としては、白色花のシロバナシラン、葉の縁に白色の覆輪斑(ふ)があるフクリンシランがある。また、サワラン、ナリヤランなどとの交雑種も作出されている。性質は強健で育てやすく、地被植物として利用される。繁殖は3~4月または10月、株分けで行う。腐植質壌土がよい。

[猪股正夫 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シラン(紫蘭)」の意味・わかりやすい解説

シラン(紫蘭)
シラン
Bletilla striata

ラン科の多年草。日本の中南部から,沖縄や中国の暖帯にかけて分布する。湿原や崖などによくみられる。地下に多肉の球茎がある。葉は長楕円形で縦皺があり,葉柄は鞘となって茎をいだき,茎の基部に5~6枚が集まってつく。5月頃に,1本の花茎が伸長し3~7個の花をつける。花は白色,桃色,紫紅色で美しい。ラン科の植物で畑土で栽培できるものはごく少ないが,シランは観賞用として比較的容易に植えることが可能である。

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