翻訳|Java man
オランダの解剖学者デュボアE.Duboisが,1891-93年にインドネシアのジャワ島にあるトリニールTrinil村のソロ河の河岸で,頭骨,大腿骨,歯を発掘し,ピテカントロプス・エレクトスPithecanthropus erectus(直立するサル人間という意味)と命名した原人の通称。今日では,ホモ・エレクトスHomo erectusに含まれる。ホモ・エレクトスの模式標本は,この頭骨(Trinil 2)。ヒトがサルの仲間から進化したというダーウィンの進化論を,サルとヒトの中間状態を示す化石の発見により実際に証明したという歴史的な意義も大きい。年代は120万年前から12万年前,あるいは4万年前と推定されている。トリニール以外にも,サンギランSangiranでは120万~70万年前,サンブンマチャンSambungmacanでは約30万年前,ガンドンNgandongとガウイNgawiでは15万~4万年前,プルニンPerning(モジョケルトModjokerto)では100万年前(180万年前という報告もある)と推定される化石が見つかっている。
ジャワ原人化石の調査は,デュボア以来,オランダ人のオッペンノールトW.F.F.OppennoorthやケーニヒスワルトG.H.R.von Koenigswaldによってなされてきたが,第2次大戦後は,インドネシア人研究者が主導し,ガジャマダ大学のヤコブT.Jacobとバンドン工科大学のサルトノS.Sartonoが中心となっていた。1975年から東京大学の渡邊直經がバンドン地質研究開発センターとの共同調査を進め,とくにジャワ原人化石包含層の同定と年代学的研究が発展した。その共同調査は,1990年代からバンドン地質研究開発センターのアジズF.Aziz,国立科学博物館の馬場悠男と海部陽介,お茶の水女子大学の松浦秀治と近藤恵たちに受け継がれ,化石の発見・研究や年代の推定に関する成果をあげている。
→ガンドン →サンギラン →サンブンマチャン →ソロ人 →トリニール →ホモ・エレクトス
執筆者:馬場 悠男
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(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)
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…ドイツの生物学者E.ヘッケルがいつか発見されるはずの人類の祖先の呼名として提唱し,のちにオランダの解剖学者E.デュボアがインドネシアのジャワ島で実際に発見した化石人類に与えた名称。ジャワ原人と訳される。ピテカントロプスの発見は,ジャワ島中央部を流れるソロ川沿岸のトリニールTrinilで,1891年から翌年にかけてデュボアが頭蓋冠と歯と大腿骨の化石を発掘したのに始まる。…
※「ジャワ原人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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