21番染色体が3本あることにより、精神発達の遅れ、特徴的な
卵子や精子がつくられる過程で、染色体がうまく分かれないことによります。まれに21番染色体が別の染色体に結合しているために起こることもあります(
つり上がった眼、幅広く扁平な鼻、
半数に心臓の異常がみられ、その他、腸の奇形や
特徴的な症状から診断されます。確定診断は染色体検査によります。
根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行います。合併症の早期発見や健康管理のため、定期的な健診が大切です。平均寿命は約50歳といわれています。
重い合併症のないダウン症候群の子は元来健康な子どもなので、訓練・教育的な対応が重要です。最近は早期からの集団保育・教育が望ましいといわれています。家族の会などから情報を得ることも役立ちます。
遺伝カウンセリングも重要です。とくに転座型の場合は、次の子どもの再発率を知るためには両親の染色体検査が必須です。
小林 武弘
21番染色体のトリソミーによる疾患です。目じりが少しつり上がり両目の間隔が広く、鼻筋が低く舌がやや大きい顔つきが共通で、手足が小さく筋肉の緊張が弱いなどの症状があります。先天性の心疾患、食道や十二指腸の
心疾患が重症であれば発達が進みにくいこともあり、手術がすすめられることもあります。発達が遅れやすいので注意が必要ですが、医療機関の受診や遺伝カウンセリングの際、あるいは保健所、親の会などで積極的に情報を得ることが助けになります。
適切な赤ちゃん体操や訓練に早期から取り組むとともに、保育所・幼稚園で集団の一員として過ごすことによって、著しい進歩がみられる場合が多く、社会の各方面での活躍が注目されている方も少なくありません。
出生の頻度は新生児800人に1人で、多くの両親の染色体構成は正常ですが、数%に親の染色体
21番染色体が1本過剰になるのは、卵子形成時の減数分裂に伴う染色体分配の異常によることが多く、このことが高齢出産でダウン症候群の出生の確率が上昇する原因とされています。
古山 順一, 玉置 知子
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
特有な顔貌(がんぼう)と精神遅滞を特徴とする、常染色体異常による疾患である。650~700人に1人の割合で出生する。
イギリスの医師ダウンLangdon Downが1866年に、特殊な精神遅滞の一群を「蒙古人型白痴(もうこじんがたはくち)」と報告したので、蒙古症(モンゴリズムMongolism)ともよばれてきたが、1959年にレジャンJ. Lejeuneらによって病因が染色体異常であることが究明され、疾患単位として確立して以来、ダウン症候群とよばれるようになった。
臨床像としては、体型は低身長で肥満傾向がみられ、筋緊張が低下するので、乳児期の首の座りや寝返りなどの運動発達が遅滞する。知能は種々の程度の精神遅滞を示す。性格は温順である。顔貌が特徴的で、頭は幅が広い短頭、顔は平坦(へいたん)、目は目じりが外上方につり上がり、目頭は瞼(まぶた)が垂れ下がって覆われ、鼻根部は幅広くて扁平(へんぺい)で、鼻梁(びりょう)(鼻すじ)が低く、いわゆる鞍鼻(あんび)を示す。また、口を開いて舌を出していることが多く、歯や耳の変形を認めることがある。手では、指、とくに第5指(小指)が短く、内方に彎曲(わんきょく)し、斜指症を示す。手掌では猿線(さるせん)(手掌を横断する線)が半数近くにみられる。
ダウン症候群は、先天性心疾患、消化管の形態異常、白血病の合併頻度が高い。
診断は、臨床的特徴と皮膚紋理(掌紋)から比較的容易であるが、染色体検査によって確定する。
染色体異常は常染色体21番目のトリソミーtrisomy(三染色体性)で、通常は1対2本の染色体が減数分裂時の不分離によって3本あり、ダウン症候群では90~95%にみられる。このほか、過剰の21番目の染色体が他の染色体に転座している転座型トリソミーや、21番目のトリソミーと核型正常細胞が混在しているモザイク型トリソミーなどが、わずかながらみられ、混在の度合いによって臨床症状が著しく異なる。
[山口規容子]
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常染色体異常に起因する症候群の一つ。1866年,J.L.H.ダウンが特異な顔貌をもつ精神遅滞として記載し,この名がある。かつては蒙古症(モンゴリズムmongolism)とも呼ばれたが,これは人種的偏見に基づく不適切な表現であるため,今日では用いられない。21番めの染色体の異常が原因で,出生約700人に1人の割合でみられるが,母親の出産年齢が高いほどその頻度は大きくなる。染色体の異常のほとんどは21番染色体が3本ある21トリソミー(90~95%)で,そのほか,転座型(5~6%),モザイク型(1~3%)がある。頭蓋は小さく,眼はつり上がり,特有の顔貌となり,四肢は小さく短く,全身に種々の合併症をもつことがある。皮膚紋理(指紋や掌紋)にも異常がみられる。一般に精神遅滞と発育障害が伴い,普通の子どもより感染症に対する抵抗力が弱い。
→染色体異常
執筆者:小室 裕明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…(a)染色体異常 染色体の数もしくは構造上の変化によって異常がでる場合,これを染色体異常と呼ぶ。染色体の数が47になるものとしては,たとえばダウン症候群(蒙古症ともいう。21番目の常染色体が1個余分にある),クラインフェルター症候群(性染色体がXXYの構成となる)などがある。…
…両側性の網膜芽細胞腫がその例で,染色体の13qに欠損がある。メンデル式遺伝ではないが,先天的に常染色体の異常があり,癌を発生しやすい病気として,ダウン症候群(白血病),クラインフェルター症候群(乳癌)その他がある。また常染色体劣性遺伝病として,癌を多発するものとして,色素性乾皮症(皮膚癌),毛細血管拡張性失調症(悪性リンパ腫や白血病),ブルーム症候群(白血病)などがある。…
…ただし,モノソミーの場合は生存が困難になるところから比較的例が少なく,異数体としてよく知られているものにはトリソミーが多い。ダウン症候群(21トリソミー),18トリソミーなどがある。なお,異数体ではないが,受精後第1分裂に際し染色体の不分離が起こると,同一個体内に2種類以上の遺伝子型の異なる細胞群が混在することになるが,これをモザイクmosaicという。…
… 多因子性遺伝による場合のほかに,ヌーナン症候群やマルファン症候群などのような単一遺伝子による遺伝性疾患において,心臓病を合併しやすいことが知られている。また染色体異常であるダウン症候群(21トリソミー)では約50%の頻度で先天性心疾患を合併し,とくに心内膜床欠損を伴いやすい。13トリソミーや18トリソミーではさらに高率に心臓奇形を伴っている。…
…後述の先天代謝異常の検査の場合に比べて,一定の検査によって多数の疾患を診断できること,治療不可能な対象疾患の頻度がはるかに高いなどの理由から,早期に実用化され,威力を発揮している。主として転座型ダウン症候群の子をもつ妊婦,21‐トリソミー 21‐trisomy(21番目の染色体が3本ある異常)の出生頻度の高い高年妊婦(一般妊婦では胎児600人に1人であるが,45歳以上では50人に1人の率となる)や放射線大量暴露の場合,LSDなど特殊薬剤使用の場合など,異常の存在する危険度の高い妊婦の場合に行われる。
[先天性代謝異常の診断]
羊水上澄み成分中の物質の異常増加,羊水細胞成分の組織化学的検査(異常物質の細胞内蓄積),培養細胞による酵素活性測定など,対象疾患によって異なる種々の方法により診断する。…
※「ダウン症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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