チリに産するソーダ硝石NaNO3の鉱石。チリ北部のアタカマ砂漠地帯に長さ700km,幅15~80kmの範囲に多数のチリ硝石鉱床が分布する。鉱床は水溶性の塩類によって膠結された層状の砂質礫からなり,ソーダ硝石の平均品位は約25%,カリ硝石,岩塩,およびナトリウム,カルシウム,マグネシウムの硫酸塩を伴い,微量のヨウ素酸塩,ホウ酸塩,臭化物,およびリン酸塩を含む。アンモニアの合成とアンモニア酸化法による硝酸の合成が確立されるまで肥料や火薬の重要な原料であった。
執筆者:鞠子 正
チリ硝石がチリの輸出品となるのは1850年ころからであるが,1860年以後,爆薬の製造に用いられるようになって輸出は大きく拡大した。しかし,硝石の採掘される地帯が当時ボリビアとの国境地帯からボリビアにかけての海岸部であったので,この地帯の領有をめぐって,ボリビア,ペルーを相手に太平洋戦争(1879-84)が行われた。チリが勝利してこの地帯を併合してからは,第1次大戦に至るまで硝石の輸出はますます拡大した。しかしアンモニア,硝酸の合成化学工業の発達により輸出は衰退し,今日の硝石の採掘はわずかな量(1980年62万t)にとどまっており,かつての硝石の生産地の多くはゴースト・タウンとなっている。
→硝酸ナトリウム
執筆者:細野 昭雄
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もっとも代表的な硝酸塩鉱物の一つ。乾燥気候地域の土壌表面に皮膜状をなして産し、肥料として用いられる。その名にあるように南米チリには大きな鉱床があり、鉱床中には、副成分として、銅、クロム、ヨウ素などの鉱物が存在することがある。自形の報告はないが、その原子配列は方解石と同構造である。日本では、栃木県宇都宮市大谷(おおや)の凝灰岩(大谷石)の表面に、雨水のかからない箇所で少量着生することが知られている。
[加藤 昭]
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天然産硝酸ナトリウムNaNO3のこと.慣用的にはチリのAtacama砂漠地帯に多量に産出する天然硝酸ナトリウム鉱を精製したものをさす.純度は94~97%.N 15.5~16%.六方晶系a:c = 1:0.8276.密度2.24~2.29 g cm-3.融点306.8 ℃.硝酸およびヨウ素の重要な原料資源である.水溶性で硫安より吸湿性が大きい.窒素肥料として1870年ころから用いられ,また硝酸火薬製造原料として重要であったが,アンモニア合成,硝酸合成工業の発達によりその需要は低下した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
「硝酸ナトリウム」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし88年の国民投票で軍事政権は不信任され,89年の大統領・国会議員選挙を経て,90年にチリは民政に復帰した。【吉田 秀穂】
【経済】
チリでは中央集権的な寡頭政治による政治的安定が早くから確立しており,経済的にも,はじめは小麦の輸出,次いで銅,チリ硝石の輸出(1879‐83年の太平洋戦争における勝利により硝石地帯の領有確定)により,早くから繁栄がみられた。しかし1929年の世界恐慌はこのような一次産品輸出経済に強い打撃を与えた。…
※「チリ硝石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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