チーズ(英語表記)cheese

翻訳|cheese

デジタル大辞泉 「チーズ」の意味・読み・例文・類語

チーズ(cheese)

牛などの乳を乳酸菌酵素を加えて凝固させ、微生物の作用によって発酵・熟成させた食品。ナチュラルチーズプロセスチーズに大別される。乾酪。

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精選版 日本国語大辞典 「チーズ」の意味・読み・例文・類語

チーズ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] cheese )
  2. 牛乳や山羊(やぎ)の乳などに乳酸菌を加えて発酵させて作った食品。多くの種類があるが、ナチュラルチーズとプロセスチーズに大別される。乾酪。フロマージュ
    1. [初出の実例]「乾牛酪(チース)七千『ポント』」(出典:西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉外)
  3. 繊維工業で、木管または紙管に円筒状に糸を巻いたもの。の形に似るところからの称。

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改訂新版 世界大百科事典 「チーズ」の意味・わかりやすい解説

チーズ
cheese

牛乳,脱脂乳,クリーム,羊乳などを原料とし,レンネット凝乳酵素)の作用や乳酸菌などの細菌,アオカビなどのカビあるいは酵母など,各種の微生物の働きを利用して製造されるもの(ナチュラルチーズ)で,それをさらに加工したものはプロセスチーズと呼ばれる。

アラビアの商人が,ヒツジの胃袋で作った水筒に乳を入れて旅をしている間に,太陽熱で暖められた乳が胃袋の凝乳酵素の働きにより固まって,チーズのようなものが初めてできたというアラビアの民話がある。史実では,前3500年ころにメソポタミア地方で乳牛の飼育,搾乳,乳加工が行われていたことを示す石版が発見されており,エジプト,インド,中央アジア地方でも前4000-前2000年にチーズなどが製造されたといわれる。これがトルコを経てギリシアに伝わり,《オデュッセイア》にもチーズの記載が見られる。その後,イタリア半島からヨーロッパ各地へ広がり,各国に独自のチーズが多く作られてきた。日本では,奈良・平安時代および江戸時代にチーズのようなもの((そ),醍醐(だいご)など)が作られた記録があるが,本格的な製造は1875年に北海道七重勧業試験場で試みられ,1900年には函館トラピスト修道院でも製造が始められた。本格的なチーズ工場は32年北海道遠浅に建設されたのが最初である。

チーズはナチュラルチーズと,プロセスチーズの二つに大別される。

種類がひじょうに多く,おもなものだけでも世界中で400種類以上あるといわれる。それらの名称には原産地名や外観,形態に由来するものが多い。主要なチーズは,チーズの硬さやその熟成に関与する微生物の種類などにより,表1のように分類される。(1)パルメザンチーズParmesan cheese イタリアのパルマ市原産のひじょうに硬いチーズで,粉末チーズとして用いられる。直径30~45cm,高さ15~25cm,重さ15~35kgの円筒形で,熟成期間は3~4年である。(2)エメンタールチーズEmmental cheese スイスのエメ川の流域原産で,同国の代表的なチーズ。スイスチーズともいわれる。弾力のある組織をもち,クルミのような風味がある。直径1m,重さ100kgにも及ぶ大きな円盤形で,世界最大のチーズ。熟成期間は10~12ヵ月である。熟成中にプロピオン酸菌によるガス発酵があり,チーズ内部に指先ぐらいのガス孔(チーズの目)が形成される。フランスで作られる同種のチーズとしてグリュエールチーズがある。(3)ゴーダチーズGouda cheese オランダ南部のゴーダの原産。直径30~35cm。高さ10~13cm,重さ約8kgの円盤形で,熟成期間は3~6ヵ月である。温和な風味が特徴である。(4)エダムチーズEdam cheese オランダ北部のエダムが原産のチーズで,ゴーダチーズとともにオランダの代表的なチーズである。表面が赤色のワックスまたはセロハンで覆われているので,赤玉チーズとも呼ばれる。扁平な球形で直径15cm,重さ約2kgである。熟成期間は3~5ヵ月。(5)チェダーチーズCheddar cheese イギリスのチェダー村原産のチーズ。通常は直径37cm,高さ30cm,重さ約35kgの円筒形であるが,直方体のものも作られる。熟成期間は3~6ヵ月で,温和な酸味がある。(6)ブリックチーズbrick cheese アメリカで作られるチーズで,幅13cm,長さ8cm,高さ25cm,重さ約2kgの煉瓦形である。熟成期間は2~3ヵ月で,やや刺激性の風味がある。(7)ロックフォールチーズRoquefort cheese フランスのロックフォール村で羊乳からアオカビによる熟成により作られる有名なチーズ。直径約20cm,高さ8~10cm,重さ2~3kgの円筒形で,熟成期間は2~5ヵ月である。アオカビによるチーズの脂肪分解によって生ずる鋭い刺激臭のある風味が特徴である。アオカビの菌糸がチーズ内部に脈状に広がり,切断面には美しい大理石模様が見られる。牛乳を用いて各国で作られる同種のチーズはブルーチーズと呼ばれる。(8)カマンベールチーズCamembert cheese フランスのカマンベール地方で,シロカビを用いて熟成させるチーズ。直径12cm,厚さ3cm,重さ約300gで,熟成はほぼ3週間で完了し,チーズの表面にはシロカビがフェルト状に生育する。タンパク質の分解が比較的速やかなのが特徴である。(9)カテージチーズcottage cheese 通常は脱脂乳から作られる熟成させないチーズで,低カロリー高タンパク質食品としてアメリカでは大量に消費されている。食味をよくするために少量のクリームを添加することもある。(10)クリームチーズcream cheese クリームまたはクリームを添加した牛乳から作られる熟成しないチーズ。アメリカで最も普及しているチーズの一つである。バターのような滑らかな組織をもち,風味はおだやかで,濃厚な脂肪の味がする。

 チーズは種類によって製法が異なるが,ゴーダチーズのような硬質チーズでは原料乳を殺菌し,これに乳酸菌スターター(乳酸菌をあらかじめ脱脂乳に培養しておいたもの)を加えると,乳酸菌は牛乳の乳糖を発酵して乳酸を生成する。この乳酸はチーズ製造中の雑菌繁殖を抑制する役割をもつとともに,次に加えるレンネットの作用を助ける働きをする。レンネットは子牛の第四胃から抽出される凝乳酵素で,牛乳を豆腐状に凝固させる。牛乳成分のうち,レンネットにより凝固するのは牛乳の主要タンパク質であるカゼインで,脂肪はそれ自体作用は受けないが,凝固するカゼインに包みこまれる形でカード(牛乳の凝固物をいう)に含まれる。カードをさいの目に切断し,ゆっくりかくはんしながら38℃くらいまで加温すると,カードが収縮してホエー(乳清)がカード内部から排出され,白色のカード粒と黄緑色のホエーに分かれる。このうちカード粒を集めて型に詰め,チーズプレスにより圧搾したのち加塩する。加塩には食塩を表面にすりこむ方法と食塩水に1~3日間漬けこむ方法がある。食塩はチーズの保存性と食味をよくする。加塩後は水分の蒸発と雑菌の繁殖を防ぐために表面をパラフィンまたはプラスチックフィルムで被覆し,湿度80~90%,10~15℃の熟成室で3~6ヵ月間熟成する。熟成中には,乳酸菌などの微生物のタンパク質分解酵素や脂肪分解酵素により,アミノ酸などの水溶性窒素化合物,遊離脂肪酸などが生成し,それぞれのナチュラルチーズに特有の風味が生まれてくる。カテージチーズのような非熟成チーズではカード粒子を集め,冷水で2~3回水洗したのち加塩し,容器に詰め冷蔵するので,タンパク質や脂肪の分解による濃厚な味はないが,新鮮で爽快な風味がある。

種類や熟成度の異なるナチュラルチーズを混合,加熱融解して均質にし,成型,包装したもので,乳固形分を40%以上含む。プロセスチーズの特色は,加熱され,密封されているので保存性がよいこと,原料チーズの配合により好みの風味のものが作れること,温和な風味はナチュラルチーズに比べれば万人向きといえること,種々の形や大きさの包装が可能なので多彩な商品ぞろえができることなどである。製法は原料としてはゴーダチーズとチェダーチーズが多く用いられる。これをチョッパーおよびチーズグラインダーにより粉砕して配合し,リン酸ナトリウムクエン酸ナトリウムとともに80~120℃で数分間加熱して融解させる。これらの塩類はカルシウムイオンと結合する性質をもち,カルシウムと凝固していたカゼインから,カルシウムを奪うことによりカゼインを可溶化させる。そのためチーズが溶けやすくなる。融解したチーズは70℃以上で流動性のあるうちに,アルミ箔あるいはワックス被覆セロハンに充てん,密封して冷却する。

一般にチーズにはタンパク質と脂肪が20~30%ずつ含まれているが,カテージチーズ,クリームチーズのような特異な成分のチーズでは,それぞれタンパク質と脂肪を多量に含んでいる。しかも,熟成されるチーズの場合には,これらの成分は乳酸菌などの酵素作用により水溶化が進み,消化吸収されやすい形に変化している。また,カルシウム,ビタミンA,ビタミンB2などのすぐれた給源でもあり,きわめて栄養価の高い食品といえる。カマンベールチーズのような熟成期間の短い,換言すれば熟成速度が速いチーズは過熟になりやすく,冷蔵しても適食期間は長くない。カテージチーズのような熟成させないチーズは冷蔵が必要である。一方,硬質チーズは熟成後冷蔵すれば保存性はよく,プロセスチーズも長期冷蔵保存が可能である。しかし,切口は乾燥して硬くなるので表面をポリエチレンフィルムなどでおおっておかなければならない。

1種またはそれ以上のナチュラルチーズあるいはプロセスチーズに,クリーム,牛乳,脱脂乳,香辛料,調味料などを加え,プロセスチーズと同様の方法で製造されるもので,製品中のチーズ分は51%以上である。

プロセスチーズに練乳,粉乳,バター,クリーム,濃縮ホエーなどを加え,室温でも塗り広げやすいように硬さを調節した半固体状のチーズ様食品である。成分組成によりプロセスチーズに該当するもの(乳固形分40%以上)と,チーズフードに該当するもの(チーズ分51%以上)がある。チーズ類の標準成分を表2に示す。

日本ではナチュラルチーズのほとんどが北海道で作られる。年間生産量は約10万tであるが,その1.5倍の量がオーストラリアニュージーランド,オランダ,デンマークなどから輸入されている。国産品の大部分と輸入品の半量はプロセスチーズに加工されている。全消費量の2/3がプロセスチーズであるが,近年はナチュラルチーズの消費が増加傾向にある。デザート,つまみ,おやつのようにそのまま食べるほか,チーズの種類により,おろしたり,すりつぶしたり,溶かしたり,形のままで,各種の料理,ピッツァ,サラダ,スープ,製菓など,いろいろな用途がある。
執筆者:

チーズはそのまま食べるだけでなく,各種料理の材料としても重要で,利用範囲はきわめて広い。スイスの名物料理フォンデュはおろしたチーズを白ブドウ酒で煮溶かし,パンの小片を浸して食べるもので,エメンタールとグリュエールを使う。グラタンにはおろしチーズが欠かせないが,スパゲッティ,マカロニなども熱いところへミートソースやトマトソースをかけ,その上へ山のようにパルメザンをかけて食べる。サンドイッチではフランス風のクロックムッシューがある。パンの間にチーズとベーコン,ハム,トマトなどをはさみ,チーズが溶ける程度に両面を焼く。野菜や肉にはさんで揚げるなどの料理も多く,ソースに用いることもある。菓子にもいろいろ使われるが,代表的なのはチーズケーキで,小麦粉,牛乳,鶏卵,生クリームなどとともにカテージチーズを使い,オーブンでふっくらと焼き上げる。
執筆者:


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食の医学館 「チーズ」の解説

チーズ

《栄養と働き》


 チーズの誕生は紀元前4000年ころのエジプト・メソポタミア文明でのこと。羊(ひつじ)の胃袋でつくった袋に入れてあった牛乳が、酵素の働きで偶然かたまったのが発祥といわれます。
 その後、チーズはアジアやヨーロッパにも広く伝播(でんぱ)。とくにヨーロッパでは、食生活に深く浸透しており、いわば日本の漬けものに相当するような身近な存在です。また、その製法も地域ごとにさまざまな発達を遂げ、フランスには「一村一チーズ」という言葉があるほど、数多くの種類がつくられています。
〈たんぱく質、ビタミンA、カルシウムなどの含有量は牛乳の数倍〉
○栄養成分としての働き
 チーズは、いってみれば牛乳や山羊(やぎ)乳などのエッセンスを凝縮した食品。それだけに、極めて栄養価が高いことが特徴です。
 各栄養素の含有量は、製法や原料とする乳の種類によって異なりますが、基本的に原料乳のもつ栄養素が凝縮されていると考えて差し支えありません。一般的なプロセスチーズの場合、たんぱく質、脂質、ビタミンAは牛乳の約6倍、カルシウムは約6倍、ビタミンB2も約2倍含まれています。
 しかも、発酵、熟成の過程を経ることで、たんぱく質や脂質が消化吸収されやすい形になっている点も見逃せません。
 こうしたことから、チーズは健康に対して大きな効用を示す、すぐれた食品といえます。
 たとえば、豊富なたんぱく質は冷え症や虚弱体質、胃潰瘍(いかいよう)、肝臓病などの改善に有効です。なかでも、肝機能を強化する働きをもつアミノ酸の一種、メチオニンが豊富なので、肝臓の調子がよくない人にはおすすめ。酒の肴(さかな)にすれば、アルコールの分解を助けて、悪酔い、二日酔いを防いでくれます。
 また、ビタミンAは気管支炎(きかんしえん)や鼻炎、疲れ目、ドライアイ、肌荒れ、髪のいたみの改善などに効果があるほか、感染症の予防にも有効。カルシウムは、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、くる病などの骨の病気はもちろん、イライラや情緒不安定、不眠症、高血圧などの改善に効果を発揮します。
 これらに加えて、加熱加工をしていないナチュラルチーズの場合、乳酸菌や酵素が生きたまま含まれていることも大きな特徴です。そのため、常食すればヨーグルトと同様に、腸内の善玉菌の増加を促進し、便秘(べんぴ)や痔(じ)、吹き出ものの予防、解消をはじめとした、健康へのさまざまな効用が期待できるのです。

《調理のポイント》


〈チーズは、製造方法で2種にわけられる〉
 チーズは、その製造方法によってプロセスチーズとナチュラルチーズの2種類に大別されます。
 このうち、ナチュラルチーズは、牛乳、山羊乳、羊乳などの原料乳に、酸や酵素を加えて凝固させたあと、発酵、熟成のみを行ったもの。加熱や殺菌などの加工を行わないため、チーズ本来の味わいや風味、個性が楽しめます。
 ヨーロッパでチーズといえば、通常はこのナチュラルチーズを指しています。
〈ナチュラルチーズはタイプごとの持ち味を知って使うのがコツ〉
 ところで、先にも述べたように、ナチュラルチーズには地域ごとに非常に多くの種類があり、持ち味も千差万別。
 これらは一般に原料乳や製法によって、以下の7種類のタイプに分類されます。
・フレッシュタイプ/原料乳を乳酸菌や酵素、酸で凝固させただけで、熟成せずに食べるもの。カテージチーズやマスカルポーネ、フェタなどがその代表で、サラダやデザート、パスタなどに用いられます。クセがなく、だれにも好まれる味ですが、日持ちはしません。
・白カビタイプ/凝固させた原料乳の表面に、白カビを繁殖させてつくるもので、日本人にもなじみ深いカマンベールやブリーがその代表。熟成がすすむほど、中までクリーミーになり、味わいや香りが増します。
・青カビタイプ/凝固させた原料乳の中に、青カビを繁殖させてつくります。舌を刺激するような風味があり、好き嫌いが分かれますが、慣れるとクセになる味。そのまま食べるほか、ソースの隠し味に使っても、料理を引き立てます。代表的なものはロックフォールやゴルゴンゾーラなどです。
・ウオッシュタイプ/熟成中にチーズの表面に繁殖する微生物を、塩水や酒で洗いながらつくるため、この名があります。独特の強い香り、トロリとやわらかい舌触り、コクのある味わいなどが特徴です。
・シェーブルタイプ/シェーブル(山羊の乳)を原料とするチーズ。牛乳のチーズにはないクセのある強い風味が特徴で、通好みの味として珍重されています。
・セミハードタイプ/一般に水分含有量38~42%、熟成期間が3~6か月のもの。そのまま食べるほか、削ってパスタに加えたり、グラタンなどに利用されます。代表的なものは、ゴーダやサムソー。
・ハードタイプ/水分含有量38%以下、熟成期間が6か月以上のもの。そのまま食べるほか、削って粉チーズのように利用されるのが特徴。代表的なものには、パルミジャーノ・レッジャーノ、エメンタール、チェダーなどがあります。
〈保存性が高いプロセスチーズ〉
 一方、現在、日本で主流となっているのがプロセスチーズ。
 こちらは何種類かのナチュラルチーズを混ぜ合わせたのち、加熱して溶かし、味を調えて再びかためたものです。
 こうした工程を経ているため、保存性が高いうえ、味の面でもクセがなく、だれにでも食べやすいのが利点です。
 その反面、乳酸菌などは生きていないので、菌の働きによる健康への効用は望めず、また、味わいのうえでも個性や変化に乏しい点も否めません。
 利用法としては、そのまま食べるほか、ピザやグラタンなどの料理に使うのが一般的です。比較的、賞味期限の長いプロセスチーズですが、やはり新鮮なほうが味がよいのは当然。開封後はなるべく早く使いきるようにし、保存する場合は、きっちりラップに包んで、かならず冷蔵庫に入れるようにします。
〈コレステロールや塩分には注意〉
 なお、チーズは栄養的にたいへんすぐれた食品ですが、エッセンスが凝縮されているぶん、エネルギー量やコレステロール値が高く、全般に塩分も多いという問題があります。
 そのため、食べすぎないように注意しましょう。肥満やコレステロールが気になる人は、低脂肪で塩味のついていない、プレーンタイプのカテージチーズを利用するといいでしょう。

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百科事典マイペディア 「チーズ」の意味・わかりやすい解説

チーズ

動物の乳をレンニン(凝乳酵素)や乳酸などで凝固,発酵させた食品。最も一般的な硬質チーズでは,原料乳にスターター(乳酸菌のもと),次いでレンネット(凝乳剤)を加え凝固物を作る。それを細かく切断後,攪拌(かくはん)し上澄みを除去する。その後,型詰,加塩し,3〜6ヵ月熟成させて製品とする。硬質チーズにはチェダー,ゴーダ,エダム,パルメザンなどガス孔のないものと,グリュエールのようにガス孔のあるものとがある。軟質チーズは熟成期間がないか短いもので,保存性は低い。カマンベール,カテージなどが代表的。半硬質チーズではブリックやアオカビを使ったロックフォールやブルーチーズなどが有名。 以上はナチュラルチーズと呼ばれるが,日本ではこれらを混合・殺菌したプロセスチーズが一般的。近年はナチュラルチーズの消費もふえている。チーズは古代アジアで発明され,仏教でいう醍醐(だいご)はそれに近いものといわれる。ヨーロッパへ伝わって以後,著しく発達,地方特産品を含め数百種類がある。タンパク質と脂肪に富む栄養価の高い食品で,粉末にしてスープ,グラタン,フライなど各種料理に使ったり,溶かしてソースのようにも用いる。
→関連項目乳製品

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「チーズ」の解説

チーズ[加工食品]
ちーず

北海道地方、北海道の地域ブランド。
日本での本格的なチーズづくりは、1875(明治8)年に北海道開拓庁、七重勧業試験場で練乳とチーズを試作したのが始まりといわれる。1904(明治37)年、函館・トラピスチヌ修道院がチーズを製造。1928(昭和3)年、北海道酪農販売組合連合会(現・雪印乳業株式会社)がチーズの試作を開始し、翌年発売した。一般の食卓にチーズが登場するようになったのは戦後からで、プロセスチーズ(ナチュラルチーズを加熱して溶かし固めたもの)が長い間主流であった。1970年代後半にチーズ工房が現れ、ナチュラルチーズ(乳酸菌あるいは酵素で凝乳をつくり、乳清を除いて固形化したもの)がつくられるようになった。現在では全道に60以上の工房もあり、国産ナチュラルチーズの9割は北海道産である。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

化学辞典 第2版 「チーズ」の解説

チーズ
チーズ
cheese

牛乳を低温殺菌した後,凝乳酵素(レンニン)と塩化カルシウムを加えて凝固させたものに,乳酸菌スターターを加えて発酵させてカスタードとし,圧搾してホエー(乳清液)を除いた後,10 ℃ 前後で数か月間熟成したもの.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「チーズ」の解説

チーズ

 牛乳のタンパク質を固めて製造する固形食品で,通常発酵させるが,発酵させないカテージチーズのような製品もある.凝乳には通常酵素(子牛の胃からとるキモシンや微生物からとるムコールレンニンなど)を使う.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のチーズの言及

【乳】より

… 乳の加工技術は一見,道具やいくつかの手法の組合せで,多様にみえるが,基本的には,(1)乳酸発酵させて,凝乳化させる酸凝乳技術系,(2)子の第四胃からとった凝固剤を入れて,凝乳化させる酵素凝乳技術系,(3)放置して浮上したクリームを分離し,のちに攪拌(かくはん)してバターを分離するクリーム分離技術系とに分けられる。(1)はヨーグルト,(2)はチーズ,(3)はクリームによって代表される。 牧夫は一般に乳は加工して食べ,生乳は飲まない。…

【乳業】より

…牛乳およびバター,チーズなど,牛乳を加工した乳製品を製造する産業。日本の1995年の原乳生産量は838万tで,うち514万tが飲用向け,311万tが乳製品向けとなっている。…

【フォンデュ】より

…スイス名物のチーズ料理。名称は〈溶けた〉という意味のフランス語で,なべにチーズを溶かし,パンにつけて食べる。…

※「チーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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