寒帯の気候区分の一つ。寒帯気候はツンドラ気候と氷雪気候に二分されるが、夏季の月平均気温が0℃以上10℃未満で、凍土の表層部分が一時的に融解し、コケ植物や地衣類が生育する地域の気候をツンドラ気候(ケッペンのET気候)という。冬は極度に寒く、気温が零下45℃以下になる日もある。この気候はスカンジナビア、グリーンランド、ロシア、アラスカ、カナダなどの北極海沿岸を中心に分布している。このような気候下では農耕は不可能で、サーミやエスキモーなどの少数の先住民は、漁獲や狩猟に生活を依存してきた。石油などの地下資源、軍事や科学研究、北極航路、航空路などにとって重要な地域であり、人々の生活様式も西欧化が進んでいる。しかし、地球温暖化の影響を強く受けるとされ、一部では永久凍土層の崩壊も伝えられている。
[山下脩二]
寒帯気候のうちの一つ。ケッペン式区分ではETである。最暖月平均気温が0℃から10℃未満で,0℃に達しない氷雪気候(EF)と区別される。最寒月と最暖月の平均気温をそれぞれC,Wとしたとき,W=9.5-C/30の等値線(樹木限界)の外側に分布し,森林はないが,永久凍土層の1mくらいがとける夏季には,数週間,地衣・蘚苔類の生育がみられる。土壌は酸性でやせている。寒帯気候は両極から緯度60°付近の間に分布しているが,ツンドラ気候は南半球では南極大陸の縁辺にわずかに存在するだけで,大半が北半球,北アメリカ大陸やユーラシア大陸の北極海の沿岸部とか,グリーンランド沿岸部などに分布する。重要航空基地となっているフェアバンクスやレイキャビークなどを除いては人口希薄地域で,トナカイの遊牧やアザラシの狩猟・漁労を中心としているラップ人やサモエード,エスキモーなどの少数民族しか住んでいない。
執筆者:福岡 義隆
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