トパーズ(英語表記)topaz

翻訳|topaz

精選版 日本国語大辞典 「トパーズ」の意味・読み・例文・類語

トパーズ

〘名〙 (topaz) アルミニウム・弗(ふっ)素などを含有する珪酸塩鉱物無色・赤・青・緑・黄色などで透明または半透明ガラス光沢を有する。斜方晶系。柱状結晶で美しいものは宝石用。ペグマタイト石英脈中などに産する。黄玉(おうぎょく)。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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デジタル大辞泉 「トパーズ」の意味・読み・例文・類語

トパーズ(topaz)

黄玉おうぎょく

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改訂新版 世界大百科事典 「トパーズ」の意味・わかりやすい解説

トパーズ
topaz

和名を黄玉という。鉱物の一種。黄玉の名の通り,黄色トパーズは宝石としての価値を有するが,無色透明であることが多い。化学成分Al2SiO4(F,OH2。形態は斜方晶系の柱状。モース硬度8,比重3.5~3.6。ペグマタイト,高温石英脈,花コウ岩や流紋岩の晶洞に産するが,ブラジルの黄色トパーズはこれらより低温の熱水性である。日本の産地としては岐阜県苗木および滋賀県田上山の花コウ岩ペグマタイトが有名。世界最大のトパーズはブラジル産で80cm×60cm×60cm,300kgに達し,ニューヨークの自然科学博物館にある。日本最大のものは7.5cm×10cm×15cm(苗木),8.4cm×6.4cm×5.1cm(田上山)である。日本産の大きなものは20世紀初頭に採集されたもので,現在は採集できても小さなものである。産地の違いによってOH/Fの量比が変化し,それにつれて比重や屈折率などの物理的性質も変わる。OHとFの秩序配列およびO-H結合の配向性で対称性が三斜晶系まで低下するものがある。
執筆者:

紅海のセント・ジョン島からペリドットperidot(カンラン石(オリビン)の一種フォルステライトの宝石種)が産出するが,古い時代にはこの石がトパーズと呼ばれ,現在のトパーズとの混同があった。トパーズはAl2SiO4(OH)2の成分をもつ水酸基(OH)タイプと,Al2SiO4(F)2フッ素(F)タイプの二つに大別される。宝石として価値の高いのは,色が美しくまた永久性のある水酸基タイプのインペリアル・トパーズで,やや赤みを帯びた暖かい黄色をしている。そしてこの黄金色の石は熱処理によりピンク色に変わる。インペリアル・トパーズはブラジルのミナス・ジェライス州オウロ・プレト地区が世界唯一の産地で,屈折率は1.629~1.637と高いが,比重は3.50~3.54と低い。無色,青色およびブラジル産以外の黄色ないし褐色のトパーズはフッ素タイプで,屈折率は1.610~1.620と下がるが,比重は3.56~3.57と高い。フッ素タイプのトパーズは,着色中心による着色をするため色の耐久性は不安定である。また放射線による無色の石の人工処理による着色も行われる。
執筆者:

プリニウスの《博物誌》(第37巻)によると,岸から300スタディオン(約50km)ほど離れた紅海の真ん中にトパゾス島という島があり,昔から多くの航海者によって探索されているが,その付近は霧が深いため,なかなか発見されるにいたらない。トログロデュタイ(穴居エチオピア人)の言葉で〈探索する〉ことを〈トパージン〉というが,この島の名前はそれに由来している。プトレマイオス2世の母たるベレニケ王妃の命により,この島から初めて1個のトパーズ(ただしこれは現在ペリドットと呼ばれているもの)がエジプト王家に将来されたのは前3世紀のことだった。トパーズはいたく王を喜ばせ,王はこの宝石で2mにおよぶ妻アルシノエ2世の像をつくらせて,アルシノエ神殿と名づけた聖域にこれを奉納した。このプリニウスの話に出てくるトパゾス島というのは,たぶんセント・ジョン島ではないかといわれている。なお,トパーズは大きな塊で発見されるので,このアルシノエの像も単一のトパーズの塊からつくられたものと考えられる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トパーズ」の意味・わかりやすい解説

トパーズ
とぱーず
topaz

黄玉(おうぎょく)あるいはトパズともいう。斜方柱状の結晶をなすことが多く、柱の方向に平行な条線がよく発達する。透明のことが多いが、分解すると白濁する。花崗(かこう)岩質ペグマタイト中の晶洞に、石英、長石、雲母(うんも)などを伴い美しい結晶を産する。日本では岐阜県苗木地方と滋賀県田上山(たのかみやま)のものが明治時代から有名。ただ濃色のものが少ないため宝石として利用されることはあまりなかった。ブラジルをはじめ世界的に産地は多い。ほかに、気成鉱脈、流紋岩の空隙(くうげき)中に結晶を産する例がある。また熱水鉱床の母岩の変質物や粘土中に微細な結晶の塊状集合として産する。なお、シトリン・トパーズというのは水晶を熱処理して黄色のトパーズにみせかけたものである。またオリエンタル・トパーズというのは黄色のサファイアのことである。英名はギリシア語のTopazionから由来するが、これは紅海にある島の名前である。11月の誕生石となっている。

[松原 聰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トパーズ」の意味・わかりやすい解説

トパーズ
topaz

Al2SiO4(OH,F)2 。斜方晶系の鉱物。単位格子中に4分子含む。黄玉ともいう。比重 3.49~3.57,硬度8。劈開{011}に完全。条痕は無色。ガラス光沢。無色あるいは淡黄色の柱状透明結晶。柱面{001}に平行な条線が顕著。宝石として用いられる。 850~900℃付近で,揮発成分 (F,OH) を放出してムル石に変化する。アルミニウムは6配位で,そのうち4配位は SiO4 四面体と共有する酸素が占め,残りの2配位は他のアルミニウム八面体と共有するフッ素が占める。フッ素の位置は 30%ぐらいまで OH によって置換される。一般に OH/F の割合が増すと,比重は小さくなり,屈折率は大きくなる。ペグマタイト中に産するほか,スズやタングステン鉱床中に脈石鉱物として産出する。日本産のトパーズは無色の結晶が多いが,外国産のものは淡褐色のものが多い。 11月の誕生石。トパーズは熱せられるとピンク色に変るので,宝石として人工的に熱を加えてピンク色にしたものがある。ブラジルルビーと呼ばれるものにはこのようにしてつくられたものがある。

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色名がわかる辞典 「トパーズ」の解説

トパーズ【topaz】

色名の一つ。宝石のトパーズのような明るく黄色みがかった褐色。多様な色の宝石だが黄色系統が愛好される。16世紀ごろから用いられていた色名。トパーズはフッソアルミニウムなどを含む珪酸塩けいさんえん鉱物で、黄色い宝石の代表といわれる。11月の誕生石。日本では黄玉おうぎょくとも呼ばれる。

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百科事典マイペディア 「トパーズ」の意味・わかりやすい解説

トパーズ

黄玉(おうぎょく)とも。Al2(SiO4)(OH,F)2の化学組成をもつ鉱物。斜方晶系。柱状結晶。硬度8,比重3.4〜3.6。へき開は完全。ガラス光沢を有し,色は黄色が多く,灰,緑,赤,青などの淡色も示す。屈折率は1.60〜1.64。おもに花コウ岩,ペグマタイト,接触変成帯などに産出。美しいものは宝石として用いられる。
→関連項目誕生石

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