改訂新版 世界大百科事典 「バレンツ海」の意味・わかりやすい解説
バレンツ海 (バレンツかい)
Barentsevo more
北極海の一部。ヨーロッパ大陸北岸とノルウェーのスバールバル諸島,ロシア連邦のフランツ・ヨシフ諸島,ノバヤ・ゼムリャ島などに囲まれる。面積約142万4000km2,平均深度229m。水深360~400mの部分が広く分布する。最深点はノルウェー北端とスバールバル諸島を結ぶ中央部の約600m。沿岸部は大陸側も島嶼(とうしよ)側もフィヨルドの部分が大半を占めるが,大陸の東岸は低平である。流入する河川のうちでは,ペチョラ川が最大。メキシコ湾流の影響が大きく,南西部の海域では2月の表面水温が3~5℃もあるため結氷しない。海流は左回りに流れる。海水中の塩分は,表面水で約32~35‰である。干満差は最大6.1mほどでかなり大きい。タラ,ニシンなどの漁獲が多いほか,水上輸送に大きく役立ち,ムルマンスク(ロシア),バルデ(ノルウェー)などの良港がある。ロシアでは長い間西ヨーロッパに直航できる唯一の海路であったために重要視された海域であったが,18世紀前半にバルト海沿岸を手に入れてからはその意味での重要性は薄らいだ。
執筆者:渡辺 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報