日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーカー」の意味・わかりやすい解説
バーカー(Ernest Barker)
ばーかー
Ernest Barker
(1874―1960)
イギリスの政治学者。1898年オックスフォード大学卒業。1920~1927年ロンドン大学キングズ・カレッジ学長。その後ケンブリッジ大学、コローヌ大学教授などを歴任。政治学史(政治思想史)、とくにギリシア政治思想の権威で、アリストテレスの『政治学』の英訳は定評がある。著書としては、『プラトンとアリストテレスの政治思想』Political Thought of Plato and Aristotle(1906)、『ギリシアの政治理論』Greek Political Theory(1918)、のほか1913年発表の論文「信用失墜の国家」Discredited State(『Church, State and Studies』所収・1930)は、『イギリス政治思想――H・スペンサーから現代まで』Political Thought in England from Spencer to Today(1915)とともに多元的国家論の考え方を展開したもので、ラスキ、コールなどに影響を与えたといわれる。ほかに『現代政治の考察』Reflextion on Government(1942)、『社会・政治理論の原理』Principle of Social and Political Theory(1951)などの、現代政治や現代民主主義思想の優れた分析や考察に関する著書もある。
[田中 浩]
『堀豊彦・杣正夫訳『イギリス政治思想 第4巻 H・スペンサーから1914年まで』(1954・岩波書店)』▽『足立忠夫訳『現代政治の考察』(1963・勁草書房)』
バーカー(George Granville Barker)
ばーかー
George Granville Barker
(1913―1991)
イギリスの詩人、小説家。14歳で社会に出て苦学し、1939年(昭和14)来日して、東北帝国大学でイギリス文学を講じたこともある。30年代に詩人として出発したが、当時詩壇を支配していたオーデン一派の社会主義的な詩とはまったく異なる詩風の持ち主で、神秘主義的、宗教的熱烈さを示すとともに、難解なシュルレアリスム的な心像を用いた詩を多く書いた。自伝的な長編詩『ジョージ・バーカーの真実の告白』(1950)は自らの性的経験を露骨に語っており、BBCで放送されたとき、ポルノ風であるとして議会から批判の声があがった。作品には小説『死せる鴎(かもめ)』(1950)、『全詩集』(1987)などがある。
[富士川義之]