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パーキンソン症候群 パーキンソンしょうこうぐんParkinson's syndrome

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

パーキンソン症候群
パーキンソンしょうこうぐん
Parkinson's syndrome

錐体外路症候群の1つ。四肢の筋肉が強直し,顔貌は表情がなく仮面様で,静止時には上半身,特に指先に「銭を数えるような」もしくは「丸薬を丸めようとするような (ピル・ローリング) 」と形容される,特徴的な振戦 (震え) がみられる。イギリスの医師 J.パーキンソンが 1817年に初めて振戦麻痺を記載した。歩行時には手の振りが小さく,前かがみで小刻みな歩行をする。通常は,これらの症状のうちいずれかが前景に立つ。原因は淡蒼球や黒質の変性が多く,50~60歳に好発するが,40歳代以下で発症する「若年性パーキンソン病」もある。脳炎や脳動脈硬化に併発する続発性のものもある。近年,パーキンソン症候群患者の大脳基底核ドーパミンが不足していることが判明したため,その増量を目的としてL-ドーパが投与されるようになり,効果を上げている。また,ノルアドレナリンという神経刺激伝達物質を産生する副腎髄質の細胞を脳の線条体に移植する脳移植も行われているが,その評価はまだ定まっていない。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

パーキンソン症候群

症状としては、手足の震え、動作の緩慢、筋肉の固縮、姿勢保持障害、うつ状態など。パーキンソン病の治療薬が投与されるケースが多いが、効果が表れにくい。厚生労働省の特定疾患(難病)の認定を受けているパーキンソン病は、神経伝達物質ドーパミンの機能を促進する治療薬の効き目や、脳MRI画像でほかの疾患が見あたらないことなどが診断基準となる。これに対し、パーキンソン症候群は特定疾患の対象外のため、厚労省の医療費公費補助を受けられない。厚労省によると、パーキンソン病の公費補助を受けている患者は全国で約7万5千人。これに対し、パーキンソン症候群については「患者数も把握していない」としている。

(2006-09-20 朝日新聞 朝刊 横浜 1地方)

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栄養・生化学辞典の解説

パーキンソン症候群

 向精神薬などの原因で,パーキンソン病の症状が発症した状態.

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家庭医学館の解説

ぱーきんそんしょうこうぐん【パーキンソン症候群 Parkinson Syndrome】

[どんな病気か]
 パーキンソン病の四徴候(「パーキンソン病(特発性パーキンソニズム)」)が、パーキンソン病以外でおこることがあります。これらをまとめてパーキンソン症候群といいます。脳血管性パーキンソニズムと薬剤性パーキンソニズムが、その代表です。
脳血管性(のうけっかんせい)パーキンソニズム
 脳血管障害(脳卒中(のうそっちゅう))の後遺症としておこるもので、60歳以上の人によくみられます。
[症状]
 筋肉がかたくなる、からだが動かしにくくなる、方向転換時にふらつく、などの症状がみられますが、震(ふる)えが出現することは少ないようです。
 過去に脳卒中にかかったことのある人が多く、すでにまひや感覚障害をともなっていることもあります。まひはなくても、狭い歩幅でちょこちょこと歩くのが特徴です。
[治療]
 程度の差はあっても、基本的には脳血管障害がベースにあるので、脳循環改善薬や脳代謝改善薬(のうたいしゃかいぜんやく)などを使用してようすをみます。
 パーキンソン病ほどではありませんが、症状が軽くなったという報告もあるので、レボドパ剤の使用を試みる場合もあります。
薬剤性(やくざいせい)パーキンソニズム
 精神安定剤や抗精神病薬(「向精神薬のいろいろ」)の副作用としておこるものです。
[症状]
 パーキンソン病(「パーキンソン病(特発性パーキンソニズム)」)とほとんど同じ症状ですが、眼球が上転し、不規則に細かく回転する眼球回転症(がんきゅうかいてんしょう)がおこるのが特徴とされています。
[治療]
 現在服用中の薬を点検し、まず疑わしい薬の使用量を少しずつ減量していきます。
 症状が軽減、または消失すれば、それが原因薬剤であることがはっきりします。
 原因薬剤の減量あるいは中止が治療となります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

パーキンソンしょうこうぐん【パーキンソン症候群 Parkinson’s syndrome】

原因不明の疾患であるパーキンソン病や,その他いくつかの神経疾患でみられるパーキンソン病類似の症候群をいう。パーキンソニズムparkinsonismともいわれる。パーキンソン病Parkinson’s diseaseは1817年イギリスのパーキンソンJames Parkinson(1755‐1824)により初めて記載された疾患である。中年以後に発症し徐々に進行するもので,筋硬直(こわばり),随意運動の減少,振戦(ふるえ)が三大徴候である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

パーキンソン症候群
ぱーきんそんしょうこうぐん
parkinsonism

錐体(すいたい)外路症状である筋硬直、振戦(しんせん)(ふるえ)、寡動(動きがにぶく少ない)を特徴とするパーキンソン病とそれにきわめて類似した状態の総称、あるいはパーキンソン病に類似した状態だけをさす。[海老原進一郎]

定義

1817年、イギリスの医師パーキンソンJames Parkinson(1755―1824)は、筋硬直、振戦、寡動の三つの症状で特徴づけられる原因不明の病気を初めて明らかにし振戦麻痺(まひ)とよんだが、今日ではパーキンソン病といわれることのほうが多い。これに対してその後、この病気にきわめて類似した状態が、嗜眠(しみん)性脳炎、脳動脈硬化症、薬物・一酸化炭素・マンガン・シアン化合物などの中毒、脳腫瘍(しゅよう)、頭部外傷後、梅毒などによっても引き起こされることがわかってきた。これらを含めて筋硬直、振戦、寡動などの症状が種々の組合せで出現する状態がパーキンソン症候群またはパーキンソニズムである。原因不明の振戦麻痺(パーキンソン病)は、このなかに含まれる場合と含まれない場合がある。全体を一括してパーキンソン症候群とする立場では、パーキンソン症候群は本態性(特発性)と症候性(二次性)に分けられる。これらのうち、もっとも頻度が高いのは本態性パーキンソン症候群、すなわちパーキンソン病で、その有病率は日本では人口10万当り100~150人とされており、欧米では150~200人とされる。[海老原進一郎]

症状と治療

パーキンソン病は一般にゆっくりと進行し、やがて介助が必要となり、臥床生活に至ることが多い。ただし、病状の進み方には大きな個人差がある。現時点では、原因は不明であり、病期の進行を止めたり根本的に治癒させる治療法はないが、進行を遅らせたり症状を改善する目的の薬物療法など対症療法が行われる。日本神経学会による治療ガイドラインが提示されており、2009年現在、おもにL-ドーパとドーパミンアゴストが基本薬として用いられる。とくにL‐ドーパは、脳内(線状体)で不足しているドーパミンを補充する治療法で、もっとも顕著な効果がみられ、パーキンソン病治療の主軸として長期にわたって用いられる。しかし、L‐ドーパも長期間服用していると効果が落ち、精神症状や不随意運動などの副作用を起こすこともある。薬剤は、効果がある反面、副作用や禁忌もあるので、それぞれの場合に応じた使い分けが必要である。
 前述のような原因不明のパーキンソン病に対して、症候性パーキンソン症候群では病気の経過や治療法が、原因とみなされる病気によってさまざまである。症候性パーキンソン症候群(パーキンソニズム)のうち、とくに重要なものは薬物によって引き起こされる薬剤性パーキンソニズムと、脳血管障害が引き金となって発病する脳血管性パーキンソニズムである。パーキンソン病類似の状態を引き起こす薬としては血圧を下げる薬(ラウオルフィア製剤、α‐メチルドパ)、悪心や嘔吐(おうと)を抑えたり鎮静のために使う薬(フェノチアジン系製剤)、消化器疾患によく使われる薬(スルピリド、メトクロプラミド)、精神科で使う薬(フェノチアジン系やブチロフェノン系製剤)などがあげられる。このような薬を長期間連用してパーキンソニズムがみられる患者では、たいていの場合、原因とみなされる薬の投薬をやめれば軽快する。薬物療法としてはL‐ドーパよりも抗コリン剤のほうが効果がある。
 脳血管障害が原因と推定されるパーキンソニズムでは、脳卒中の発作が契機となって発病するものもあるが、明らかな脳卒中発作がなくて普通のパーキンソン病と同様に、いつとはなしに病気が始まってくるものもあり、動脈硬化性パーキンソニズムともよばれる。60歳以上の高齢になってから症状が現れ、高血圧や記憶障害、軽い四肢の麻痺を伴っていることが多く、パーキンソン病に使う治療薬の効果はあまり期待できない。また、嗜眠性脳炎によるパーキンソン症候群は、嗜眠性脳炎が流行して50年以上を経過した現在、ほとんどみる機会はなくなった。[海老原進一郎]

補説

なお、パーキンソン病は特定疾患(難病)指定されているが、2003年度(平成15)より、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症とともに、パーキンソン病関連疾患という名称のもとに特定疾患分類されている。[編集部]

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世界大百科事典内のパーキンソン症候群の言及

【アトロピン】より

…(3)瞳孔散大薬として1%溶液を検眼の際に用いる。(4)パーキンソン症候群の振戦や固縮にも使用される。常用量では強い副作用はないが,口渇,視力障害,排尿困難(老人で)をおこすことがある。…

【運動障害】より

…しかし,この過動症と無動症はけっして対立するものではなく,一つの疾患のなかで共存することもある。たとえばパーキンソン症候群は大脳基底核がおかされる病気であるが,無動症のために随意運動が行えないのと同時に,手足の振戦(震え)という過動症が加わって,いっそう重篤にしている。大脳基底核の病変では,これ以外に種々の姿勢異常や筋緊張の変化などが生じることが知られている。…

【筋固縮】より

…一般的には,不随意な運動に関係する錐体外路系の障害の際にみられ,不随意運動や寡動などを伴うことが多い。たとえば,典型的な固縮のみられるパーキンソン症候群では,振戦(不随意なリズミカルな運動)も加わって一つ一つひっかかっていく間欠的な抵抗として感ずることもある(歯車現象cog‐wheel phenomenon)。【水沢 英洋】。…

【ジストニー】より

…一定の肢位(たとえば起立位)をとるときに,筋緊張が異常に高まり,随意運動が妨げられ,変形した肢位に固定される。ひとつの症候群で,痙性斜頸spasmodic torticollis,ウィルソン病パーキンソン症候群など,種々の疾患にともなって出現する。また,ジストニーを呈する疾患のひとつである捻転ジストニーtorsion dystoniaあるいは変形性筋ジストニーdystonia musculorum deformansは,腰部前彎,胸部後屈,骨盤捻転,四肢の内転・内旋など,全身性のジストニーを呈し,起立時,歩行時に著しい。…

【痴呆】より


[痴呆の種類]
 痴呆を示す疾患は種々あるが,40歳代で発病し急速に進行するものには初老期痴呆という脳の変性疾患(アルツハイマー病,ピック病)がある。また,30歳代で発病し,慢性進行性に経過するハンチントン舞踏病,50歳代に発病するパーキンソン症候群などの変性疾患も痴呆をきたす。特殊型では,パーキンソニズム痴呆複合病(グアム島で発見された),進行性ミオクロヌス癲癇(てんかん),脊髄小脳変性症や進行性核上性麻痺などがある。…

※「パーキンソン症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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