古代インドの都市で,マガダ国の首都。パータリPāṭali,パータリプッタPāṭaliputtaなどとも呼ばれ,漢訳仏典では華氏城,華子城と記される。現在のビハール州の州都パトナーの付近で,ガンガー(ガンジス)川南岸に位置する。釈迦時代(前6~前5世紀)にマガダ国のアジャータシャトル(阿闍世)王がここに城塞を築き,さらに彼の後を継いだウダーインUdāyin(ウダーヤUdāya)がラージャグリハ(王舎城)から遷都した。それ以後,ナンダ朝,マウリヤ朝,グプタ朝にいたるまで東インドの城塞都市として,また政治・文化の中心地として栄えた。晩年の釈迦は侍者アーナンダとともにラージャグリハを離れて,パータリ村からガンガー川を渡り,バイシャーリーを経由して入滅の地クシナガラに向かっている。
執筆者:三友 量順
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
クスマプラとも呼ばれる古代インドの都市。現在のビハール州の首都パトナ。ガンジス川に臨み,ソーン,ガンダク両河の合流点に近いところにある。前5世紀アジャータシャトルのときに要塞が築かれ,ほどなくラージャグリハから都が移された。その後マウリヤ朝,シュンガ朝,カーンヴァ朝,グプタ朝の都として栄え,メガステネースや法顕(ほっけん)を驚かせた壮麗な宮殿や立派な道路があったが,6世紀には衰えた。のちに,パーラ朝の拠点の一つにもなった。1913~15年,51~55年の2度にわたり発掘されたクムラハール遺跡では,マウリヤ朝の宮殿の大広間やグプタ期の僧院の跡が発見されている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
古代インド、マガダ国の都。漢訳仏典では華氏(かし)城、華子(かし)城などと記される。もともとガンジス川河畔の一村落であったが、紀元前5世紀初めにマガダ国のアジャータシャトル(阿闍世(あじゃせ))王によってこの地に城塞(じょうさい)が築かれ、その子ウダーインの時代にラージャグリハ(王舎城)からここに都が移された。その後、ナンダ朝(前4世紀)、マウリヤ朝(前4~前2世紀)などマガダに興った諸王朝の都となり、また後4世紀に興ったグプタ朝(~6世紀)もここを都とした。マウリヤ朝初期にこの地を訪れたギリシア人メガステネスと、グプタ朝中期に訪れた中国僧の法顕(ほっけん)は、ともにこの都市と宮殿の壮大さに驚嘆している。約1000年にわたり北インドの政治、経済の中心であったが、グプタ朝の衰退とともに重要性を失った。今日、パトナ市郊外のクムラハールなどから、宮殿跡や城壁跡が発掘されている。
[山崎元一]
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…人口91万7000(1991)。位置は古代のパータリプトラをほぼ踏襲する。ガンガー(ガンジス)川が北からガンダク川,南からソーン川を合わせる同川中流域平野の要地を占め,古くから都市文明を発展させてきた。…
…
[帝国の成立]
マウリヤ朝はナンダ朝を倒したチャンドラグプタ(在位,前317ころ‐前293ころ)によって創始された。彼は都のパータリプトラで即位したのち,ただちに西北インドからギリシア勢力を一掃した。また前305年ごろシリアのセレウコス朝の軍を退けてこれと講和を結び,アフガニスタンの東半を含むインダス川西方の地を獲得した。…
※「パータリプトラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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