パータリプトラ(その他表記)Pāṭaliputra

デジタル大辞泉 「パータリプトラ」の意味・読み・例文・類語

パータリプトラ(Pāṭaliputra)

インドガンジス川河畔の古代都市。前5世紀、マガダ国の阿闍世あじゃせ王が築き、北インドの政治経済中心となった。阿育王治世に、第三結集けつじゅうが行われた地としても知られる。現在のビハール州の都市パトナ近郊に遺構が残る。華氏城華子城

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「パータリプトラ」の意味・読み・例文・類語

パータリプトラ

  1. ( Pāṭaliputra ) インドの古代都市。マガダ国首都。前五世紀末から約一千年の間、北インドの政治・経済の中心地となった。ガンジス川中流のパトナ市郊外に遺跡がある。プシュパプラ。華子城。華氏城。パリンボトラ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「パータリプトラ」の意味・わかりやすい解説

パータリプトラ
Pāṭaliputra

古代インドの都市で,マガダ国の首都。パータリPāṭali,パータリプッタPāṭaliputtaなどとも呼ばれ,漢訳仏典では華氏城,華子城と記される。現在のビハール州の州都パトナーの付近で,ガンガー(ガンジス)川南岸に位置する。釈迦時代(前6~前5世紀)にマガダ国のアジャータシャトル阿闍世)王がここに城塞を築き,さらに彼の後を継いだウダーインUdāyin(ウダーヤUdāya)がラージャグリハ(王舎城)から遷都した。それ以後,ナンダ朝マウリヤ朝グプタ朝にいたるまで東インドの城塞都市として,また政治・文化の中心地として栄えた。晩年の釈迦は侍者アーナンダとともにラージャグリハを離れて,パータリ村からガンガー川を渡り,バイシャーリーを経由して入滅の地クシナガラに向かっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「パータリプトラ」の解説

パータリプトラ
Pāṭaliputra 華子(氏)城

クスマプラとも呼ばれる古代インドの都市。現在のビハール州の首都パトナ。ガンジス川に臨み,ソーン,ガンダク両河の合流点に近いところにある。前5世紀アジャータシャトルのときに要塞が築かれ,ほどなくラージャグリハから都が移された。その後マウリヤ朝シュンガ朝カーンヴァ朝グプタ朝の都として栄え,メガステネース法顕(ほっけん)を驚かせた壮麗な宮殿や立派な道路があったが,6世紀には衰えた。のちに,パーラ朝の拠点の一つにもなった。1913~15年,51~55年の2度にわたり発掘されたクムラハール遺跡では,マウリヤ朝の宮殿の大広間やグプタ期の僧院の跡が発見されている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パータリプトラ」の意味・わかりやすい解説

パータリプトラ
Pāṭaliputra

古代インドの都市。中国では華氏城,華子城と意訳されている。今日のビハール州のパトナ。ガンジス川の南岸にあり,前5世紀マガダ国アジャータシャトルが城塞を築いたのに始り,ほどなくマガダ国の都をラージャグリハ (王舎城) からこの地に移した。マウリヤ朝時代に北インドの政治,経済の中心地となり,その繁栄の様子はギリシア人の使節メガステネースによって書かれている。その後もシュンガ朝グプタ朝の都として栄えたが,6世紀グプタ朝の衰亡に伴って衰えた。遺跡は 19世紀末から発掘調査が行われ,クムラーハルやブランディーバーグで城壁の木柵,列柱室などの遺構が発見されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パータリプトラ」の意味・わかりやすい解説

パータリプトラ
ぱーたりぷとら
aliputra

古代インド、マガダ国の都。漢訳仏典では華氏(かし)城、華子(かし)城などと記される。もともとガンジス川河畔の一村落であったが、紀元前5世紀初めにマガダ国のアジャータシャトル(阿闍世(あじゃせ))王によってこの地に城塞(じょうさい)が築かれ、その子ウダーインの時代にラージャグリハ(王舎城)からここに都が移された。その後、ナンダ朝(前4世紀)、マウリヤ朝(前4~前2世紀)などマガダに興った諸王朝の都となり、また後4世紀に興ったグプタ朝(~6世紀)もここを都とした。マウリヤ朝初期にこの地を訪れたギリシア人メガステネスと、グプタ朝中期に訪れた中国僧の法顕(ほっけん)は、ともにこの都市と宮殿の壮大さに驚嘆している。約1000年にわたり北インドの政治、経済の中心であったが、グプタ朝の衰退とともに重要性を失った。今日、パトナ市郊外のクムラハールなどから、宮殿跡や城壁跡が発掘されている。

[山崎元一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社世界史事典 三訂版 「パータリプトラ」の解説

パータリプトラ
Pāṭaliputra

インド北東部にあった古代インドの都市
現在のビハール州の州都パトナにあたる。前5世紀にマガダ国王アジャータシャトル(阿闍世)が城塞を建設したのに始まる。マガダ国やマウリヤ朝の首都として最盛となったが,グプタ朝時代には衰微した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のパータリプトラの言及

【パトナー】より

…人口91万7000(1991)。位置は古代のパータリプトラをほぼ踏襲する。ガンガー(ガンジス)川が北からガンダク川,南からソーン川を合わせる同川中流域平野の要地を占め,古くから都市文明を発展させてきた。…

【マウリヤ朝】より


[帝国の成立]
 マウリヤ朝はナンダ朝を倒したチャンドラグプタ(在位,前317ころ‐前293ころ)によって創始された。彼は都のパータリプトラで即位したのち,ただちに西北インドからギリシア勢力を一掃した。また前305年ごろシリアのセレウコス朝の軍を退けてこれと講和を結び,アフガニスタンの東半を含むインダス川西方の地を獲得した。…

※「パータリプトラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android