大きい
原因として、約10%で染色体異常(CATCH22)に合併して生じます。
本症でのチアノーゼ出現の時期はさまざまで、3分の1は生後1カ月以内に、3分の1は生後1カ月ないし1年に、残りは生後1年以後に現れます。乳児期には泣いた時や運動時にだけみられるチアノーゼが、のちには常時認められるようになります。
本症の約30%には、特有のチアノーゼ発作(スペル発作:唇などが黒くなり、一時的に意識を失う発作)が3カ月~3歳で生じます。チアノーゼが出現して6カ月以上たつと手足の指先が丸く変形し、これは太鼓バチ指と呼ばれます。
1歳過ぎに歩行を始めると、走ったり歩いたりして息が切れるとしゃがみ、いわゆる相撲の
診断の確定には心臓超音波(心エコー)や心臓カテーテル、心血管造影検査(精密検査)が必要です。その他のチアノーゼ性心疾患(
乳幼児期には、チアノーゼ発作に対する予防と治療が必要です。家庭でのチアノーゼ発作に対する処置は、第一に抱き上げて
チアノーゼ発作が薬物でおさまらない場合は、乳児期早期に開胸してシャント手術を行います。通常は1歳前後、体重8~10㎏で人工心肺を使用して根治手術を受けます。手術の危険率は2~5%ですが、肺動脈の形態や合併する奇形によって危険率は変わります。
根治手術が成功すれば、チアノーゼの消失、右心室圧の低下が得られ、自覚症状もほとんどありませんが、運動負荷試験では軽度の心機能の低下が認められます。
新岡 俊治
ファロー四徴症はチアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になる)が出る先天性心疾患であり、
多くの場合、出生後早い時期に心雑音やチアノーゼがきっかけで診断されます。右心室流出路の狭窄が軽い場合は、心室中隔欠損と同じ血液の流れ方になります。ミルクを飲む量が少なく、体重の増えが少なく、汗が多いといった
乳児期以降に、突然全身が黒くなる
X線検査、心臓超音波検査、心電図などで診断します。症状と検査の結果により、さらに心臓カテーテル検査が予定され治療方針を決定します。
右心室流出路狭窄の程度により、大きく治療方針が違います。内科的治療では症状に応じた薬物療法を行います。しかし、基本的な治療は外科治療が中心で、内科的治療は手術に向けての暫定的な意味合いになります。
手術では心室中隔欠損を閉じ、右室流出路の形成が行われます。チアノーゼが強い場合には、その前にBTシャント手術(肺へ流れる血液を増やす手術)を行い、チアノーゼを改善させ、成長を待つことがあります。
症状や検査結果をもとに治療の方針を決定していきます。
気になる症状がある場合には、近隣の小児科を受診してください。
鈴木 博
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
心室中隔欠損、肺動脈狭窄(きょうさく)、大動脈右方転位(騎乗)、右心室肥大の四病変を伴った異常で、1888年フランスの医師ファローÉtienne Louis Arthur Fallot(1850―1911)によって詳細な記述が行われたのでこの名でよばれる。チアノーゼを伴う先天性心疾患のうちでは、もっとも普通にみられる疾患である。現在では手術によって治療できるようになったが、放置すれば予後は悪く、20歳以上の生存例は10~20%といわれ、大人になるまで生存する例は非常にまれである。
心室のレベルで右心側から左心側へ血液が流れる短絡(シャント)があり、顕著なチアノーゼがみられる。症状としてはこのほか、太鼓の撥指(ばちゆび)や眼球結膜の充血がみられ、呼吸困難とこれによる運動制限も著明で、運動すると呼吸が苦しくなってしゃがみ込んでしまうことがある。このうずくまった姿勢(蹲踞(そんきょ))はこの疾患に特有のものとされる。また、呼吸困難とともにチアノーゼが高度となり、失神やけいれんをおこす無酸素症発作もしばしばみられる。聴診で、胸骨左縁第三肋間(ろっかん)付近に最強点を示す肺動脈狭窄による収縮期雑音が聴取され、この雑音は肺動脈弁口部で第二音が強く聴取される。X線像では肺野は明るく、左第二弓(肺動脈弓)は陥凹し、心尖(しんせん)部は挙上して鈍円となり、木靴形の心臓とよばれる。心電図は右心室肥大像を示す。血行動態的には右心室と左心室の収縮期圧は等しい。
外科治療は根治手術と姑息(こそく)手術(待期手術)とがある。乳幼児の重症例で根治手術の危険性が高い場合には、姑息手術を行って将来の根治手術に備える。姑息手術には肺血流量の増加を図る短絡手術として、ブラロック‐タウシックBlalock-Taussig手術、ポッツPotts手術、ウォーターストンWaterston手術などがある。また、非直視下に肺動脈狭窄を解除する方法としてブロックBrock手術がある。根治手術は、直視下に右心室を開いて円錐(えんすい)狭窄を切除し、弁狭窄があれば切開する。心室中隔欠損孔に対しては、合成繊維のパッチを縫着して閉鎖する。右心室流出路や肺動脈弁輪部が狭小であったり、肺動脈形成不全のある場合には、パッチによる右心室流出路、肺動脈拡大形成術を加える。近年、ファロー四徴症の手術成績は著しく向上している。
[竹内慶治]
先天性心疾患の一種で,チアノーゼを示す疾患の代表的なものである。1888年にフランスのファローÉtienne L.A.Fallot(1850-1911)がこの疾患について四つの解剖学的特徴を記載して以来,彼の名が疾患名として用いられている。四徴とは,肺動脈狭窄または閉鎖,心室中隔欠損,大動脈騎乗,右心室肥大のことであるが,これらのうち本質的病変は前2者であって,後2者は二次的な病変である。右心室流出路が狭窄または閉鎖しており,大きな心室中隔欠損があるために,右心室圧が高くなり,静脈血の一部が右心室から心室中隔欠損を通って大動脈に出ていく。そのためチアノーゼを生じ,一方,肺の血流量は減少する。チアノーゼの程度は非常に軽いものから高度なものまでさまざまで,出現時期も,生まれたときすでにみられるものから,乳児期に現れるもの,幼児期になって現れるものもある。チアノーゼとともに手足の指先が丸く太くなって,太鼓ばち指と呼ばれる。また疲れやすく,息切れしやすい。運動している途中で急にしゃがみ込み,しばらくしてまた立ち上がって運動を続ける症状が特徴的で,このしゃがみこんだ姿勢を蹲踞(そんきよ)という。乳幼児期には,無酸素発作といって,眠りから覚めたときなどに,啼泣,哺乳,排便などがきっかけになって,チアノーゼが増強し,呼吸が苦しくなり,ぐったりする発作を起こすことがある。発作は数分から数時間も続き,重い発作の場合には,意識消失,痙攣(けいれん)をきたし,ときに死に至ることもある。ファロー四徴症を治すためには手術が必要である。手術には2種類あって,チアノーゼが高度な乳児,とくに無酸素発作をくり返す場合には,肺血流量を増やして一時的に症状を軽くする手術(短絡手術と呼ばれる)が行われる。人工心肺を用いて,肺動脈狭窄を除去し,心室中隔欠損を閉鎖する根治手術は,通常乳児期を過ぎてから行われる。手術をしない場合は,徐々に進行し,20歳前後で低酸素症,中枢神経合併症,細菌性心内膜炎,肺出血などで死亡する。
→心臓外科
執筆者:柳沢 正義
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…それらはさまざまな立場から分類されているが,従来よく行われているのは,チアノーゼを示す群(チアノーゼ性先天性心疾患)と示さない群(非チアノーゼ性先天性心疾患)に分けるものである。前者にはファロー四徴症,完全大血管転位,総肺静脈還流異常,三尖弁閉鎖,右胸心などがあり,後者には心室中隔欠損,心房中隔欠損,心内膜床欠損,動脈管開存,肺動脈狭窄,大動脈狭窄,大動脈縮窄などが含まれる。ただしチアノーゼの有無は決定的な違いではなく,前者に分類される疾患においても,ほとんどチアノーゼのみられない例もあり,また後者に分類される心室中隔欠損などにおいても病気が進行した状態においてはチアノーゼが現れることもある。…
※「ファロー四徴症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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