フラーレン(英語表記)fullerene

翻訳|fullerene

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フラーレン
fullerene

閉殻空洞状の一連の炭素単体群のこと。炭素原子 60個から成る球状の炭素クラスター分子C60が代表例。これは sp2 炭素原子がサッカーボールの表面模様と同じパターンをつくって球状に結合してできた半径 7.1Åの芳香族性をもつ籠型分子で,C60 にアルカリ金属を添加した結晶薄膜は,18Kで超伝導を示すため注目されている。 C60 以外に C70 や C80 などの高次クラスターや空洞チューブ型クラスター (バッキーチューブ,カーボンナノチューブ) などが知られている。

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百科事典マイペディアの解説

フラーレン

60個あるいはそれより少し多い数の炭素原子が,球状に結合した分子種の総称。C6(/0),C7(/0),C76,C82などがあり,ダイヤモンド,石墨(黒鉛)と同じく炭素の同素体。最も代表的なものは炭素原子60個からなるC6(/0)で,20個の六員環と12個の五員環とをサッカーボール模様に配置した分子構造をしているので,サッカーボール型分子(フットボーレンまたはサッカーボーレン)とも呼ばれる。星間物質の候補と考えられるほか,アルカリ金属を加えると超伝導を示すなど,未来への可能性を秘めた新物質として注目され,盛んに研究されている。また類縁の物質として,炭素原子がフラーレン様の骨格をとりつつ,球状ではなくて管状になった〈カーボンナノチューブ〉を飯島澄男らが報告している。C6(/0)は1970年に大沢映二が分子構造を予言,1985年にH.クロート,R.スモーリー,R.カールが実験室で発見,この3者に1996年ノーベル化学賞が授与された。
→関連項目炭素ニューカーボン

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大辞林 第三版の解説

フラーレン【fullerene】

〔アメリカの技術者フラーにちなむ〕
多数の炭素原子のみからなる球状の分子の総称。六〇個の炭素原子がサッカーボール状に結合した分子(C60)などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フラーレン
ふらーれん
fullerene

炭素の同素体の一つ。初めてみいだされたC60は、その分子を構成する炭素原子の骨格が正五角形と正六角形が組み合わされてできる閉多面体である()。これはサッカーボールの縫目が示す模様と同じなので、はじめサッカーボーレンSoccerballeneあるいはフットボーレンfootballene(芳香族縮合多環炭化水素の名称は語尾を-eneとする)などとよばれていた。またモントリオール万博の球状ドームが同じような骨格であることから、それを設計した建築家バックミンスター・フラーにちなんでバックミンスターフラーレンあるいは略して単にフラーレンともよばれるようになり、現在ではこれが定着して正式名にもなっている。バッキーボールと俗称されることもある。
 C60とC70は同時に発見されたのであるが、それ以降正五角形と正六角形の組合せも各種のものが取り出され、C76、C82、C84、C90、C96などの分子、さらにはC240、C540など炭素数の大きいもの、多重層分子なども取り出されている。C60は正五角形12、正六角形20からなり、直径約7Å(オングストローム)のサッカーボール型をした球状の空間のある分子であるが、C70は正五角形12と正六角形25からなる短径約7Å、長径約8Åのラグビーボール型である()。
 1970年(昭和45)日本の大澤映二(1935― )は、正五角形と正六角形が組み合わされた閉多面体からなるC60分子の安定性と、その存在についての想定を示したが、1985年イギリスのクロートとアメリカのスモーリーらによって、ヘリウム中で黒鉛にレーザーを照射して得られた物質から実際にその存在が明らかにされた。その後多くの方法によって各種の分子を取り出す方法が確立された。発見者のクロート、スモーリー、カールらは1996年これによってノーベル化学賞を受賞している。
 フラーレンは炭素の蒸発-凝縮あるいは炭素含有化合物の分解など多くの方法により得られるが、現在では主として真空中でのアーク放電やレーザー照射による蒸発法などによってつくられている。
 C60は立方晶系(等軸晶系)で、分子内での二つの6員環に共有されているC―C距離は1.391Å、5員環内のC―C距離1.455Åということからすると、これらの炭素間での結合は二重結合性があり、π(パイ)電子が広がっているものと考えられる。フラーレン分子は一般にその内部にほかの原子を取り込むことができるほど充分な広い空間があり、アルカリ金属、希土類金属、その他の金属、希ガスなどの原子を閉じ込めたものがつくられている。これらは導電性や低温での超伝導などの特性を示すことが示されている。たとえばK3C60,K2RbC60あるいはCs2RbC60などであり、なかにはかなりな高温での超伝導を示すものもある。
 フラーレンは一般にベンゼン、トルエン、二硫化炭素などによく溶けるが、たとえばベンゼン中でC60は淡紫色、C70は赤色、その他は淡黄色となる。
 フラーレンにはその構造からくる特性として、気体吸蔵、超伝導性、潤滑性、電気特性、触媒性などが注目され、多くの応用面が開発されている。[中原勝儼]
『谷垣勝己・菊地耕一・阿知波洋次・入山啓治著『フラーレン――魅惑的な新物質群、C60とその仲間達』(1992・産業図書) ▽化学編集部編『C60・フラーレンの化学――サッカーボール分子のすべてがわかる本』(1993・化学同人) ▽ジム・バゴット著、小林茂樹訳『究極のシンメトリー フラーレン発見物語』(1996・白揚社) ▽篠原久典・斎藤弥八著『フラーレンの化学と物理』(1997・名古屋大学出版会) ▽日本化学会編『季刊化学総説 炭素第三の同素体フラーレンの化学』(1999・学会出版センター) ▽山崎昶著『サッカーボール型分子C60――フラーレンから五色の炭素まで』(講談社・ブルーバックス)』

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