ベラルーシ(読み)べらるーし(その他表記)Republic of Belarus 英語

共同通信ニュース用語解説 「ベラルーシ」の解説

ベラルーシ

ロシアの西隣に位置し、人口約935万人。かつてソ連の一部を構成し、1991年8月に独立宣言した。公用語はベラルーシ語とロシア語。94年から大統領職に就くルカシェンコ氏は「欧州最後の独裁者」と呼ばれる。ロシアとの関係が親密で、99年に連合国家創設条約に調印したほか、ロシアを含む旧ソ連6カ国で構成する軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」にも加盟する。今年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した際には出撃拠点となった。(共同)

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精選版 日本国語大辞典 「ベラルーシ」の意味・読み・例文・類語

ベラルーシ

  1. ( Belarus' ) ヨーロッパ東部の共和国。ロシア連邦ポーランドとの間にある。一九九一年、ソ連邦解体に伴い独立。機械・化学工業が盛ん。首都ミンスク。白ロシア。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベラルーシ」の意味・わかりやすい解説

ベラルーシ
べらるーし
Republic of Belarus 英語
Respublika Belarus ベラルーシ語
Республика Беларусь/Respublika Belarus' ロシア語

東ヨーロッパ東部の共和国。白(はく)ロシアともいう。かつてはソビエト連邦を構成した共和国であったが、ソ連崩壊過程にあった1991年8月ソ連から独立を宣言、国名をロシア語のベロルシア・ソビエト社会主義共和国Белорусская ССР/Belorusskaya SSRから自国語のベラルーシ共和国と改称した。西はポーランド、北はラトビアリトアニア、東はロシア、南はウクライナにそれぞれ接している。面積20万7600平方キロメートル、人口1004万5237(1999センサス)、973万3000(2006推計)、938万(2020推計)。人口密度は1平方キロメートル当り45人(2020)。東スラブ族のベラルーシ人の国で、人口の81.2%を占める。ロシア人の比率は高く11.4%、次いでポーランド人が3.9%、ウクライナ人が2.4%、ユダヤ人その他1.1%などが住む。首都はミンスク(人口201万8281、2019センサス)、そのほかにゴメリ、ビテプスクモギリョフボブルイスク、グロドノ、ブレストなどの都市がある。

[山本 茂]

自然

東ヨーロッパ平野の西部に位置し、最大の河川ドニエプル川の諸盆地、西ドビナ川、ネマン川の上流域にある。地形は全体として大陸氷河の産物であり、低平で沼沢地や湖沼が多い。沼沢地は全面積の20%以上になる。北西部はバルト高地、ベラルーシ高地などモレーン(氷堆石(ひょうたいせき))による高地、中央部は平野、南部はポレシエ沼沢地となっている。最高地点はミンスク高地のジェルジンスキー山であるが、標高は345メートルにすぎない。気候はほぼ大陸性気候で、平均気温は1月零下4.4~零下8℃、7月17.0~18.8℃。年降水量は550~650ミリメートル。土壌はポドソル土(全土の約60%)が多く、森林面積は全土の約3分の1を占め、混交林が多い。地下資源は多種多様であるが、なかでもカリ塩(1949年発見)、岩塩、石油、褐炭の存在が知られ、とくにプリピャチ低地が注目されている。

[山本 茂]

歴史

スラブ人原住地に近いこの地方の全域に東スラブ人の祖先が住み着くようになったのはおそらく紀元後まもなくのことであった。彼らはやがてクリビチ人、ラジミチ人、ドレゴビチ人などの部族連合にまとめられていくが、9世紀にキエフ大公国が成立するとともに相次いでその支配に服することとなった。その後の社会・経済発展は目覚ましく、ポーロツク、トゥロフ、ピンスクなど古くからの都市に加えて、ベレスチェ(ブレスト)、ビテプスク、ミンスクなど多数の都市が成立する。キエフ国家瓦解(がかい)後の13世紀、この地方は北西方面から進出してきたリトアニア大公国の支配下に入る。西部ロシアをさして、白ロシアとよぶのはこのころからである。この場合の「白」は、この地方がリトアニアや、タタール・モンゴルの支配から自由であったことを意味すると考える学者が多い。だがほかにも、衣服や毛髪、虹彩(こうさい)また硬貨の色と関連させたり、古来の守護神、さらには雪と関係づける説もあって、定説はない。

 リトアニアは14世紀末から16世紀にかけてポーランド王国と合体していくが、それとともにベラルーシもポーランドの支配下に入る。だが18世紀後半の三次にわたるポーランド分割の結果、今度はロシア帝国に合併される。第一次世界大戦後ベロルシア(ベラルーシ)社会主義共和国が成立し(1919)、1922年にはソ連邦に加盟するが、西半部はポーランドの支配下に入った(1921)。現在の国境線が確定したのは第二次世界大戦後のことである。第二次世界大戦中ベラルーシは独ソ両軍の主戦場となり、ドイツ軍による徹底した破壊を受けたが、戦後急速に復興した。国際連合の創設時(1945)以来の加盟国である。

[栗生沢猛夫]

政治

ソ連においてペレストロイカ(改革)が進んでいたなか、1990年7月にベロルシア(ベラルーシ)最高会議は主権宣言を採択、1991年ソ連で発生した八月クーデター事件後ただちに独立を宣言した。同年12月ソ連解体後、独立国家共同体(CIS)の創設協定に調印、その一員となった。1994年1月には経済危機を解決できなかったとして、最高会議議長シュシケビチStanislav Stanislavovich Shushkevich(1934―2022)が解任され、3月に大統領制の導入を盛り込んだ新憲法の採択が行われた。6~7月の大統領選挙ではロシアとの関係強化を主張したルカシェンコAleksandr G. Lukashenko(1954― )が当選した。その後、ルカシェンコは1995年5月、ロシア語の公用語化、ロシアとの経済統合などについての国民投票を行い、圧倒的多数の支持を得た。さらに1996年11月には大統領の権限を強めるための憲法改正を実施、この国民投票でも70%の支持を得た。この改正により、大統領の任期は2001年まで延長、さらに二院制の新議会が創設された。2001年の大統領選挙でルカシェンコが再選され、また、2004年の議会選挙でも大統領の与党が勝利した。しかし、これらの選挙が公正に行われなかったとして、欧米諸国から批判がおこった。2006年の大統領選挙でルカシェンコが87.5%の得票率で三選を果たしたが、この選挙でもルカシェンコの得票に疑問がもたれ、国内で大規模な抗議行動がみられた。2008年9月の下院選挙では、野党が1議席も獲得できないという結果になった。ベラルーシの一連の選挙に対して、ヨーロッパ安全保障協力機構(OSCE)は選挙監視団を送っているが、毎回、選挙が民主的な国際基準を満たしていないと指摘している。

 対外関係では、1996年2月、ロシアとの間に友好協力条約と国境警備に関する協力協定に調印した。ロシアとは、同年4月にさらに2国間で主権共和国共同体創設条約に調印したが、これは両国の主権を維持しながらも、共通の通貨などの経済制度の統一、外交・軍事などの協力、また合同議会の設立などを目ざすものである。1997年5月には、この共同体創設条約を進めるために、新たにつくる共同体の防衛・経済協力などのあり方を定めた規約文書に調印した。さらに、1997年4月にはロシアとの間に共同体より一歩進んだ「連邦条約」に調印、1999年12月に統合を推進するための「連邦国家創設条約」に調印した。しかし、ロシアはこの構想に消極的で、その後は具体的進展がみられていない。なお、1996年3月には、ロシア、カザフスタン、キルギスとの間で統合強化のための条約に調印、4国間での関税の撤廃、商品・資本・サービスなどの移動の自由化など単一経済圏の創設を掲げ、そのための政策調整機関として国家間評議会を創設、その議長にベラルーシ大統領のルカシェンコがつくなど、ソ連解体後の共和国の再結集に積極的な役割を演じている。1999年、この4国間の経済同盟にタジキスタンが参加、2000年にはユーラシア経済共同体となった。

 日本はベラルーシがソ連から独立した直後の1991年12月に承認、1993年1月に大使館を開設した。一方、ベラルーシも1995年7月に在日大使館を開設している。1998年2月の長野オリンピックのときに、ルカシェンコ大統領が来日している。

[木村英亮]

産業・経済

この国はロシア、ウクライナ両国の工業地帯に近く、東欧とも国境を接しているため、第二次世界大戦後急速に工業が発展した。労働力にも恵まれ、旧ソ連時代には地域分業体制のもとで、高度に専門的な機械、電子、化学の各工業が発達してきた。とくに西部地域の発展が著しく、乗用車、トラクター生産は有力であるが、そのほかに食品、繊維工業なども盛んである。しかし天然原材料の少ないベラルーシは、ソ連解体に伴い経済的な苦境に陥っている。とくに石油はその9割をロシアに依存しており、この点でも対ロシア接近を図らざるをえない状況にある。

 農業はこの国の伝統的基礎産業であり、オート麦、ライ麦、ジャガイモ、ビート(サトウダイコン)が栽培され、畜産では食肉生産と乳牛の飼育、養蜂と毛皮獣飼育が行われている。しかし1986年ウクライナで発生したチェルノブイリ原子力発電所事故によって、ベラルーシも大きな影響を受け、肥沃(ひよく)な耕地の5分の1が汚染され、耕作できなくなり、また国土の半分の地域で放射能の監視が行われることとなった。このため莫大(ばくだい)な資金が必要とされた。

 1992年1月に価格自由化政策を導入、同年5月には独自の通貨ベラルーシ・ルーブルの流通を開始したが、一方、ロシアとの間で通貨統合を目ざして、経済協力関係を強めている。その後、ベラルーシの産業の発展が低調のうえ、1998年におきたロシアの経済危機が重なり、インフレが激化、2000年1月に1000分の1のデノミネーションが実施された。その後、ロシアの経済回復とともに、ベラルーシのインフレも低下している。

[木村英亮]


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改訂新版 世界大百科事典 「ベラルーシ」の意味・わかりやすい解説

ベラルーシ
Belarus’

基本情報
正式名称=ベラルーシ共和国Respublika Belarus’/Republic of Belarus 
面積=20万7600km2 
人口(2010)=949万人 
首都=ミンスクMinsk(ベラルーシ語でミェンスク)(日本との時差=-7時間) 
主要言語=ベラルーシ語,ロシア語(ともに公用語) 
通貨=ベラルーシ・ルーブルBelarusian Rubl’

旧ソ連邦西部の共和国。1991年8月25日,ソ連邦からの独立を宣言した。正称はベラルーシ共和国Respublika Belarus'。英語ではRepublic of Belarus。ラトビア,リトアニア,ポーランド,ウクライナ,ロシアと接している。おもな言語は白ロシア語とロシア語である。

国土の大部分は標高100~200mにあり,最高点のジェルジンスカヤ山でも350mをこえない。このきわめて平たんな国土は,地形学的には大陸氷河に覆われて形成された北西部と,そうではない南東部に分けられる。北西部にはモレーン(堆石)による丸みを帯びた丘陵が連なり,その最大のものが共和国の中央を横切る白ロシア丘陵である。ここは周囲より一段高くて水はけがよく,基幹的な道路と鉄道が走っている。丘陵のはざまには排水不良でできた低湿地がある。南東部にはレス(黄土)の堆積した平野が広がり,さらに南へいくと広大な沼沢地〈ポレシエ低地〉がある。ここは氷河期の氷の融水が低地に大量の砂や礫をもたらしてできたもので,中心となるプリピャチ川は浅く,融雪時には大はんらんをおこす。現在この地域を灌漑して耕地にする作業がすすめられている。気候は大陸性であるが,北部は大西洋の影響をうけていくぶん温暖となる。年平均気温は北東部のビテプスクで4.4℃,南西部のブレストで7.4℃。年較差は東部で26℃,西部で23℃。年降水量は北東部で600~650mm,南西部で550~600mm。植物生長期間は年間178~208日。この地域は混合樹林と広葉樹林の接合点にあたり,植生は全土に散在する松のほか,北部にモミ,南部にはカシ,シラカバ類が見られる。

 共和国の民族構成は白ロシア人79.4%,ロシア人11.9%,ポーランド人4.2%,ウクライナ人2.4%,ユダヤ人1.4%,その他0.7%である(1979)。

水資源に富むこの地域は,一般に前1千年紀後半にスラブ人が発祥した所であると考えられている。このスラブ人と白ロシア人の属する東スラブ人の関係については諸説があるが,ともかく9世紀にはこの地域はキエフ・ロシアの支配下に入り,スカンジナビア人とギリシア人の間の交易の通商路として栄えた。13~14世紀にはリトアニア大公国の支配下に入ったが,このころから〈白いルーシ(ロシアの古称)〉の意味のベラルーシという呼称が使われるようになった。この場合の〈白い〉は,一般に〈自由,独立〉を意味すると考えられているが,その自由はモスクワ大公国を支配するタタールからの自由であったとする説と,タタールとリトアニアからの自由であったとする説がある。16世紀にはポーランドの支配下に入り,18世紀末のポーランド分割でロシア領となった。

 第1次世界大戦後は東側半分がソ連邦を構成する共和国として成立する一方で,リトアニアと西側半分を含むポーランドが再建されたため,上記の2説は政治的意味ももっている。現在の国境が定まったのは第2次世界大戦後のことである。大戦中,ブレストからミンスクに抜ける道路は主戦場となり,荒廃が著しかったが,現在は都市の復興作業もほぼ完了しており,各地に戦争の記念碑が建てられている。

やせた土壌と冷涼な気候にもかかわらず,古くから農業をおもな産業としてきた。ライムギとジャガイモが主で,現在ではアマ(北部と北東部),テンサイ(中部と西部)などの工芸作物の栽培や牧畜に力が注がれている。工業では,豊かな森林資源と多数の河川を背景に古くから木材加工業が盛んであったが,第2次世界大戦後はソ連邦政府の大規模な投資と相次ぐ鉱物資源の発見で,機械,化学,石油化学工業が急速に発達している。特にミンスクやジョジノの自動車工業,ソリゴルスクの化学工業,ポロツク,ノボポロツク,モージリの石油化学工業は有名である。そのほか農業生産物を利用した繊維工業と食品工業も発達している。
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百科事典マイペディア 「ベラルーシ」の意味・わかりやすい解説

ベラルーシ

◎正式名称−ベラルーシ共和国Respublika Belarus'/Republic of Belarus。◎面積−20万7600km2。◎人口−947万人(2014)。◎首都−ミンスクMinsk(192万人,2014)。◎住民−ベラルーシ人81.2%,ロシア人11.4%,ポーランド人3.9%,ウクライナ人2.4%など。◎宗教−ロシア正教約60〜70%,カトリック約10%。◎言語−ベラルーシ語,ロシア語(ともに公用語)。◎通貨−ベラルーシ・ルーブルBelarusian Rubl'。◎元首−大統領,ルカシェンコAleksandr Lukashenko(1954年生れ,1994年7月就任,2015年10月5選,任期5年)。◎首相−コビャコフAndrei Kobyakov(1960年生れ,2014年12月発足)。◎憲法−1994年3月発効,1996年11月改正,2004年10月改正。◎国会−二院制。上院(定員64,うち8は大統領が任命,任期4年),下院(定員110,任期4年)。最近の選挙は2012年9月。◎GDP−603億ドル(2008)。◎1人当りGNP−3380ドル(2006)。◎農林・漁業就業者比率−11.7%(2003)。◎平均寿命−男64.2歳,女75.8歳(2013)。◎乳児死亡率−4‰(2010)。◎識字率−99%以上(2008)。    *    *ヨーロッパ東部の共和国。旧称〈白ロシアBelorussiya〉。北部はバルダイ丘陵の一部で,中央部は平原,南部に低湿地ポレシエがある。全体の3分の1は森林地帯である。住民の約8割は,ベラルーシ語を話すベラルーシ人で,ロシア人1割余,ポーランド人4%など。農業では,小麦,アマ,ジャガイモ,テンサイを主産。牛,豚の家畜もある。トラクター,自動車,セメント,木材,皮革,繊維などの工業が行われる。泥炭,岩塩の鉱産がある。 9−11世紀キエフ・ロシアの支配下に入り,12世紀に独立の公国を形成した。14世紀リトアニア大公国の支配を受け,1569年ポーランドと合体(ルブリン合同),1795年のポーランド分割でロシア領になった。1919年白ロシア・ソビエト社会主義共和国を樹立,1922年ソ連邦結成に参加したが,西部地域は第1次大戦後のポーランド独立により1939年までポーランド領であった。第2次大戦中ドイツ軍に占領された。1991年8月独立を宣言,翌9月国名をベラルーシ共和国と改めた。1994年初の大統領選で親ロシア派のルカシェンコ政権が誕生。1995年ロシアとの経済・軍事面での協力強化をうたった友好善隣協力条約に調印し,1999年にはロシアと連合国家創設条約を締結,2000年1月新連邦が発足したが機能していない。ルカシェンコの強権的独裁的手法に米国をはじめ国際的な批判が集中した。ロシアのプーチン,メドベージェフ政権とも良好な関係とは言えなかったが,2011年後半に関係が修復された。2011年11月にはロシア・カザフスタン・ベラルーシ3国によるユーラシア経済同盟創設宣言に署名し,2012年1月には統一経済圏に移行,2015年にユーラシア経済同盟を発足した。ルカシェンコは2010年12月4選を果たしたが,野党の抗議デモが発生,治安部隊と衝突,野党候補者も含む多数が拘束された。欧米は高官の入国禁止・海外資産の凍結などの厳しい制裁を課したが,その後のベラルーシ政府による政治犯全員の釈放等を評価し,2015年10月には一部の制裁を停止している。2015年の大統領選挙ではルカシェンコが5選を果たした。
→関連項目カーゾン線ゴメリソビエト連邦ビテプスクブレスト(ベラルーシ)モギリョフロシア

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベラルーシ」の意味・わかりやすい解説

ベラルーシ
Belarus

正式名称 ベラルーシ共和国 Respublika Belarus。
面積 20万7600km2
人口 932万4000(2021推計)。
首都 ミンスク

ヨーロッパ東部の内陸国。ロシア語ではベロルシヤ Belorussiya(白ロシア)。ロシアリトアニアラトビアウクライナポーランドに接する。氷河作用を受けた平地からなり,北部に氷堆石丘(→モレーン)がある。中部のミンスク丘陵から西へネマン川水系が,南へドネプル川水系が流れ,南部のプリピャチ川流域はポレシエと呼ばれる湿地となっている。気候は穏やかな大陸性で,平均気温は 1月-4~-8℃,7月 18℃。年降水量は 550~700mm。住民の約 80%はベラルーシ人,約 10%はロシア人で,ほかにポーランド人,ウクライナ人ユダヤ人などが居住する。公用語はベラルーシ語ロシア語。宗教はキリスト教徒がおよそ半数を占める。人口分布は北西部の農業地帯に多く,南のポレシエは少ない。早くから東スラブ人がこの地に住みつき,8~9世紀にはすでにミンスク,ポロツクなどに小公国が形成されていた。13~14世紀リトアニアに併合され,その後リトアニアとポーランドの連合に伴ってポーランドの支配下に入った。18世紀末 3回に及ぶポーランド分割の結果,ロシア領となった。1919年白ロシア=ソビエト社会主義共和国が成立,1922年ソビエト連邦に加盟。その後,1991年8月独立を宣言して現国名に改め,独立国家共同体 CISに加盟した。地下資源として泥炭,岩塩,カリウム塩,リン灰石などがある。農業はアマ,ジャガイモ,サトウダイコン,コムギなどの栽培,ウシ,ブタの飼育が盛ん。機械(ダンプカー,トラクタ,オートバイ,自転車,時計),化学(石油,カリウム),木材加工,繊維(アマ),食品などの工業が発達している。鉄道・道路網が発達し,ロシアのモスクワ東ヨーロッパを結ぶ路線が国内を通る。またバルト海黒海を結ぶ水路も通っている。

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知恵蔵 「ベラルーシ」の解説

ベラルーシ

1994年7月より親ロシア派のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が強権体制を維持している親ロ国家。96年3月にロシア、カザフスタン、キルギスと統合強化条約を、同年4月にはロシアと主権国家共同体条約、97年4月に連邦条約、99年12月には連邦国家創設条約に調印。このロシアとの連邦国家は実質を伴っておらず政治宣言にとどまっている。96年11月に大統領の権限を大幅に強化する新憲法を国民投票で採択。2003年には国民投票で大統領3選禁止条項を削除し、06年3月の大統領選挙でルカシェンコが82.6%の得票で3選を果たした。しかし、選挙を監視した欧州安保協力機構(OSCE)はこの選挙は民主主義の基準を満たしていないと批判した。グルジアのバラ革命、ウクライナでのオレンジ革命といった近隣諸国の政変は、政権と国民に大きな衝撃を与えた。ベラルーシ国内でも野党が政府批判の活動を展開し、グルジア、ウクライナ、ポーランド、バルト諸国も民主化運動に共鳴しているが、ロシアの安いエネルギーで経済が低水準でも比較的安定しているので、独裁体制は続いている。

(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ベラルーシ」の解説

ベラルーシ
Belarus'/Belorussiia[ロシア],White Russia[英]

ベロルシア(白ロシア)ともいう。ロシア連邦の西隣りの独立共和国。首都はミンスク。東スラヴ族に属すベロルシア人が居住していたが,18世紀末にロシア帝国領となり,大ロシア化政策のもとで抑圧された。ロシア革命ののち,1919年1月,ベラルーシ社会主義ソヴィエト共和国が成立し,22年ソ連の結成に参加した。ペレストロイカのなかで独立したが,現在ロシア連邦と国家連合を構成している。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベラルーシの言及

【ロシア】より


[広義と狭義のロシア]
 しかしルーシの名称は,モスクワ国家によって独占されたわけではなく,かつてのキエフ・ロシアの南西部にも残った。この地域はモンゴルの侵入をこうむったあと,14~15世紀にリトアニア(14世紀末にポーランドと合併して統一王国を形成)によって征服されたが,ドニエプル上流地方はやがてベロルシア(白ロシア,今日のベラルーシ)と呼ばれ,キエフを中心とするドニエプル中流地方は小ロシアと呼ばれたのである。白ロシアの名称の起源については定説がない。…

【チェルノブイリ原発事故】より

…原子炉とその建屋は一瞬のうちに破壊され,爆発と引き続いた火災にともない,大量の放射能放出が約10日間継続した。最初の放射能雲は西から北西方向に流され,白ロシア(現ベラルーシ)南部を通過しバルト海へ向かった。4月27日には海を越えたスウェーデンで放射能が検出され,これをきっかけにソ連政府は事故発生の公表を余儀なくされた。…

※「ベラルーシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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