基本情報
正式名称=ベラルーシ共和国Respublika Belarus’/Republic of Belarus
面積=20万7600km2
人口(2010)=949万人
首都=ミンスクMinsk(ベラルーシ語でミェンスク)(日本との時差=-7時間)
主要言語=ベラルーシ語,ロシア語(ともに公用語)
通貨=ベラルーシ・ルーブルBelarusian Rubl’
旧ソ連邦西部の共和国。1991年8月25日,ソ連邦からの独立を宣言した。正称はベラルーシ共和国Respublika Belarus'。英語ではRepublic of Belarus。ラトビア,リトアニア,ポーランド,ウクライナ,ロシアと接している。おもな言語は白ロシア語とロシア語である。
国土の大部分は標高100~200mにあり,最高点のジェルジンスカヤ山でも350mをこえない。このきわめて平たんな国土は,地形学的には大陸氷河に覆われて形成された北西部と,そうではない南東部に分けられる。北西部にはモレーン(堆石)による丸みを帯びた丘陵が連なり,その最大のものが共和国の中央を横切る白ロシア丘陵である。ここは周囲より一段高くて水はけがよく,基幹的な道路と鉄道が走っている。丘陵のはざまには排水不良でできた低湿地がある。南東部にはレス(黄土)の堆積した平野が広がり,さらに南へいくと広大な沼沢地〈ポレシエ低地〉がある。ここは氷河期の氷の融水が低地に大量の砂や礫をもたらしてできたもので,中心となるプリピャチ川は浅く,融雪時には大はんらんをおこす。現在この地域を灌漑して耕地にする作業がすすめられている。気候は大陸性であるが,北部は大西洋の影響をうけていくぶん温暖となる。年平均気温は北東部のビテプスクで4.4℃,南西部のブレストで7.4℃。年較差は東部で26℃,西部で23℃。年降水量は北東部で600~650mm,南西部で550~600mm。植物生長期間は年間178~208日。この地域は混合樹林と広葉樹林の接合点にあたり,植生は全土に散在する松のほか,北部にモミ,南部にはカシ,シラカバ類が見られる。
共和国の民族構成は白ロシア人79.4%,ロシア人11.9%,ポーランド人4.2%,ウクライナ人2.4%,ユダヤ人1.4%,その他0.7%である(1979)。
水資源に富むこの地域は,一般に前1千年紀後半にスラブ人が発祥した所であると考えられている。このスラブ人と白ロシア人の属する東スラブ人の関係については諸説があるが,ともかく9世紀にはこの地域はキエフ・ロシアの支配下に入り,スカンジナビア人とギリシア人の間の交易の通商路として栄えた。13~14世紀にはリトアニア大公国の支配下に入ったが,このころから〈白いルーシ(ロシアの古称)〉の意味のベラルーシという呼称が使われるようになった。この場合の〈白い〉は,一般に〈自由,独立〉を意味すると考えられているが,その自由はモスクワ大公国を支配するタタールからの自由であったとする説と,タタールとリトアニアからの自由であったとする説がある。16世紀にはポーランドの支配下に入り,18世紀末のポーランド分割でロシア領となった。
第1次世界大戦後は東側半分がソ連邦を構成する共和国として成立する一方で,リトアニアと西側半分を含むポーランドが再建されたため,上記の2説は政治的意味ももっている。現在の国境が定まったのは第2次世界大戦後のことである。大戦中,ブレストからミンスクに抜ける道路は主戦場となり,荒廃が著しかったが,現在は都市の復興作業もほぼ完了しており,各地に戦争の記念碑が建てられている。
やせた土壌と冷涼な気候にもかかわらず,古くから農業をおもな産業としてきた。ライムギとジャガイモが主で,現在ではアマ(北部と北東部),テンサイ(中部と西部)などの工芸作物の栽培や牧畜に力が注がれている。工業では,豊かな森林資源と多数の河川を背景に古くから木材加工業が盛んであったが,第2次世界大戦後はソ連邦政府の大規模な投資と相次ぐ鉱物資源の発見で,機械,化学,石油化学工業が急速に発達している。特にミンスクやジョジノの自動車工業,ソリゴルスクの化学工業,ポロツク,ノボポロツク,モージリの石油化学工業は有名である。そのほか農業生産物を利用した繊維工業と食品工業も発達している。
執筆者:横手 慎二
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(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2007年)
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ベロルシア(白ロシア)ともいう。ロシア連邦の西隣りの独立共和国。首都はミンスク。東スラヴ族に属すベロルシア人が居住していたが,18世紀末にロシア帝国領となり,大ロシア化政策のもとで抑圧された。ロシア革命ののち,1919年1月,ベラルーシ社会主義ソヴィエト共和国が成立し,22年ソ連の結成に参加した。ペレストロイカのなかで独立したが,現在ロシア連邦と国家連合を構成している。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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[広義と狭義のロシア]
しかしルーシの名称は,モスクワ国家によって独占されたわけではなく,かつてのキエフ・ロシアの南西部にも残った。この地域はモンゴルの侵入をこうむったあと,14~15世紀にリトアニア(14世紀末にポーランドと合併して統一王国を形成)によって征服されたが,ドニエプル上流地方はやがてベロルシア(白ロシア,今日のベラルーシ)と呼ばれ,キエフを中心とするドニエプル中流地方は小ロシアと呼ばれたのである。白ロシアの名称の起源については定説がない。…
…原子炉とその建屋は一瞬のうちに破壊され,爆発と引き続いた火災にともない,大量の放射能放出が約10日間継続した。最初の放射能雲は西から北西方向に流され,白ロシア(現ベラルーシ)南部を通過しバルト海へ向かった。4月27日には海を越えたスウェーデンで放射能が検出され,これをきっかけにソ連政府は事故発生の公表を余儀なくされた。…
※「ベラルーシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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