ペーロン

百科事典マイペディアの解説

ペーロン

長崎地方で行われる(竜)舟競争の年中行事。17世紀の中ごろにはすでに行われていたようであるが,その起源は,当時長崎に居住していた中国人の行う端午節の行事を見習ったものといわれる。18世紀末には長崎近辺の36の町が,それぞれの旗印を舟に立てて競い合うほど盛んに行われた。熱狂のあまりのいさかいも多かったようで,死者が出たことによって禁止令が出されたことさえあった。かつては旧暦の端午節前後に開催されていたが,近年は開催時期にそうしたこだわりはなく,長崎では7月の第4日曜日(ながさきみなとまつり最終日),西彼杵(にしそのぎ)町の島々では7月上旬や旧盆の時期に行われている。とりわけ長崎港内で行われるペーロンは,1977年から一般,職域,中学生の3部門にわけられた県内各地区の選抜チームと県外の特別参加チームが,港内約1300mのコースでその速さを競う選手権大会とされており,優勝チームは香港などで行われる国際大会にも出場している。 ペーロンというこの舟競争の呼び名が,福建語の爬竜の発音pe-lingに近いことや,沖縄各地で行われているこれと同種の舟競争が,爬竜を音読したと思われるハーリーと呼ばれていることからも,中国の華中,華南一帯で行われていた端午節の竜舟競渡(きょうと)(ドラゴンボート・レース)が受容されたものとみなされている。 ペーロンに使われる舟は水の抵抗が少ない細身の約14mの和船で,これに1mほどの(かい)を持った漕(こ)ぎ手の30名前後に加えて,指揮者,舵(かじ)取り,太鼓・銅鑼(どら)打ち,アカ(舟内の水)とりなどが乗り込む。漕法は漕ぎ手が進行方向を向き,前から後ろに水を掻(か)くというもので,銅鑼と太鼓の音によって櫂を操るタイミングやピッチが調整される。舟にはこうした銅鑼や太鼓が積み込まれるほか,中央の柱には御幣や旗,長刀などが取り付けられることもある。
→関連項目長崎[市]

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世界大百科事典 第2版の解説

ペーロン

長崎で6月15日前後の日曜日(以前は旧5月5日の端午(たんご)節)に行われる船競漕の行事。船の長さは約10mで36人が乗り込む。指揮者,舵取り,銅鑼打ち,太鼓打ち,アカ取りが各1名ずつ,漕手が31名という構成になっている。船の中央の柱には御幣や長刀(なぎなた)が取りつけてある。競漕には青少年組と壮年組の2組があり,各組ともに順番を定めて熱狂的に競漕する。勝った組は旗を先頭に,銅鑼や太鼓の音も勇ましく町内を練り歩く。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ペーロン
ぺーろん

長崎県の浦々で行われる競漕(きょうそう)行事。ペーロンの語は、「白竜(パイロン)」「飛竜(フェイロン)」「(チャンロン)」などの中国語の訛(なま)り。端午(たんご)の節に屈原(くつげん)の霊を慰めるために行ったという中国の競漕が伝えられたもので、江戸時代初期の長崎開港後まもなく始められた。船の大きさ・形態、漕(こ)ぎ手の人数、競技距離は浦々や時代によって一定ではない。現在長崎市で行われているものは、舷側(げんそく)に太陽、竜(りゅう)、波形などを描いた長さ13.5メートルの和船に、33名以内(漕ぎ手28名のほかに舵(かじ)取り、太鼓打ち、銅鑼(どら)たたき、閼伽汲(あかく)みなどが加わる)が乗り組むもので、6月第1日曜日から市内の各町内で予選が始まり、7月第4日曜日に長崎港内のグラバー邸の下あたりで、1950メートル(往路1200、復路750)の距離で決勝が行われる。熊本県水俣(みなまた)・津奈木(つなぎ)や兵庫県相生(あいおい)などでも行われている。西日本では船競技が盛んであるが、ペーロンの漕法上の特徴は、櫓(ろ)ではなく、漕ぎ手が前向きになって櫂(かい)を操作する点にあり、その点、沖縄県のハーリー、島根県美保や和歌山県熊野の諸手船(もろたぶね)神事や御船祭のものと似ている。現在では単なる熱狂的な競技となっているペーロンも、元来は竜神信仰などを基底とする農耕儀礼とかかわるものがあったのではないかといわれる。[田中宣一]

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世界大百科事典内のペーロンの言及

【海神】より

…付随して爬竜(ハーリー)と呼ぶ舟漕ぎ競争が催される。ハーリーは中国から伝来したといわれ,長崎のペーロンも同系統のものと思われる。海民の海上での禁忌は厳しく,沖言葉という忌詞(いみことば)がある。…

※「ペーロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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