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小アジアのエーゲ海沿岸に建設された古代ギリシアのイオニア諸市の中で,最も南に位置した主要都市。伝説では最初クレタ人あるいはカリア人によって建設され,イオニア植民市としては,アテナイ王コドロスKodrosの子ネレウスNēleusがカリア人の手から奪取して,前11世紀に建設したという。前8世紀ころより海上交易を盛んに行い,前7~前6世紀に黒海沿岸とその付近にキュジコス,パンティカパイオン,オルビアなど多数の植民市を建設した。エジプトのナウクラティスヘのギリシア人進出の先鞭をつけ,イタリアのシュバリスとも密接な関係を結んだ。前6世紀には文化の先進地としてタレス,アナクシマンドロスらミレトス学派の哲学者,地理学者ヘカタイオスなどを輩出した。前499年のイオニアの反乱を主導したミレトスは5年後に陥落し,徹底的に破壊された。イオニア解放後デロス同盟に参加し,前412年に離反するが,再びペルシアに支配され,前313年アレクサンドロス大王に攻略された。ヘレニズム,ローマ時代を通じて繁栄し,壮大な都市の景観を誇ったが,港湾の泥土沈積の結果衰退し,現在はほとんど無人同然の廃墟となっている。
執筆者:桜井 万里子
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小アジア(現在のトルコ)西岸部、イオニア地方にあった古代ギリシアの代表的ポリス(都市国家)。英語名ミリータスMiletus。紀元前11世紀ごろ建設されたとされるが、前700年ごろまで初期の歴史は不明。前8~前6世紀の植民時代には、プロポンティス(現在のマルマラ海)、黒海沿岸に多数の植民市を建設し、エジプトにも進出してナウクラティス市に足場を築いている。当時のミレトスは、有名な羊毛織物の生産、またギリシア哲学や歴史・地誌学を創始したタレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス、ヘカタイオスらミレトス学派の輩出によって、商工業の発達と精神文化の高揚が察せられる。政治的には前6世紀に隣国リディア、次にペルシアに屈したが、かなり優遇された状態にあった。内政ではトラシュブロス、ヒスティアイオス、アリスタゴラスなどの僭主(せんしゅ)が出現したが、アリスタゴラスがイオニア反乱(前499~前494)の張本人であった。結局反乱は失敗に終わり、以後往時の繁栄を回復することはなかった。のち強国の間にあって独立を維持したが、前129年以降ローマの属州都市となった。
[豊田和二]
イオニア南部の重要なポリス。ミケーネ文明の時代すでに先住カリア人にまじってギリシア人の定住がなされたらしい。植民時代には,前7世紀末以降,黒海沿岸に多数の植民市を建設し,ナイル・デルタにナウクラティスの基礎を置いた。前6世紀初め僭主(せんしゅ)が現れ,ついで貴族と平民の抗争が続いた。ペルシア戦争のきっかけとなったイオニアの反乱では指導的役割を演じたが,ラデ沖の海戦に敗れて(前494),市はペルシアの手中に落ち,以後衰えた。
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…伝承によれば,アテナイの王族の一人ネレウスが避難民を含むアッティカ在住の人々の一部を率いて海を渡り,この地方への植民を行ったという。植民活動は,その後もイオニア系ギリシア人によって波状的に行われ,前8世紀半ばには,ギリシアの他の地方に先がけて,キオス,サモス,ミレトス,プリエネ,エフェソスといった諸ポリスの成立を見る。ホメロスの詩編は,このころイオニアで成立したと推定されている。…
…(1)植民市期の科学(前600‐前450),(2)アテナイ期の科学(前450‐前300),(3)アレクサンドリア期の科学(前300‐後250)。(1)植民市期の科学 ギリシア科学はイオニアの都市ミレトスに始まった。ここは〈当時生を享けたあらゆる賢者〉の集まったリュディアの都サルディスに近く,そこを介して早くからオリエントの進んだ文化を吸収したのみならず,植民市の中でもその産業(毛織物)によってもっとも栄え,エジプトをはじめ広く地中海周辺に活発な通商活動を行っていた。…
…ペルシア戦争を書き綴った〈歴史の父〉ヘロドトスも,前479年のセストス陥落をペルシア戦争最後の事件として取り扱っている。
[イオニア反乱(前499‐前494)]
前499年,アケメネス朝ペルシアの支配下にあって経済的繁栄を回復し,〈イオニアの華〉に返り咲いていたミレトス市の僭主代行アリスタゴラス(僭主ヒスティアイオスはダレイオス1世の側近に登用され,スーサにあって留守)は,市の有力市民と協議のうえ,ペルシアに対して反乱蜂起することを決定した。彼が提唱してペルシア軍まで動員させて敢行したナクソス島遠征が完全な失敗に終わったので,ペルシア側からの責任追及を恐れたのが直接のきっかけとして伝えられている。…
※「ミレトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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