ミンコフスキー(読み)みんこふすきー(英語表記)Hermann Minkowski

デジタル大辞泉 「ミンコフスキー」の意味・読み・例文・類語

ミンコフスキー(Hermann Minkowski)

[1864~1909]ドイツの数学者。ロシアの生まれ。ドイツのゲッティンゲン大学教授。整数論幾何学的概念を導入した。また、ミンコフスキー空間考え方により、特殊相対性理論数学的に基礎づけた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ミンコフスキー」の意味・読み・例文・類語

ミンコフスキー

  1. ( Hermann Minkowski ヘルマン━ ) リトアニア生まれの数学者。数論における幾何学的研究方法を開拓。また、「ミンコフスキー空間」の考え方により特殊相対性理論を数学的に基礎づけた。(一八六四‐一九〇九

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー
みんこふすきー
Hermann Minkowski
(1864―1909)

ロシア出身のドイツの数学者。当時ロシア領であったリトアニアで生まれ、1872年、一家とともにドイツのケーニヒスベルク(現、ロシア領カリーニングラード)に移った。ケーニヒスベルク大学、ベルリン大学に学び、1895年ケーニヒスベルク大学、1896年チューリヒのスイス連邦工科大学、1903年ゲッティンゲン大学教授となった。スイス連邦工科大学教授当時、A・アインシュタインはその学生であったが、ミンコフスキーの講義ぶりはかならずしも優れたものとはいえず、アインシュタインは数学をあきらめ、理論物理学に進む決心をしたとも伝えられる。

 そのミンコフスキーが、アインシュタインの特殊相対性理論は、空間の座標x・y・zと時間tとを座標とする四次元空間において、ローレンツ変換で不変な性質を研究する幾何学とみなしうることを示したことは歴史の皮肉というべきであろうか。このx・y・z・tを座標とする空間は「ミンコフスキー空間(ミンコフスキーの時空世界)」とよばれる。

 この四次元ミンコフスキー空間の考えは、のちにアインシュタインが一般相対性理論を建設する場合にも重要な役割を果たした。すなわち、アインシュタインがその一般相対性理論を建設するときに用いた擬リーマン空間は、その各点における接空間がミンコフスキー空間であるような空間であったのである。なおミンコフスキーは、数論における幾何学的研究方法の開拓者としても知られる。

矢野健太郎

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー
Minkowski, Hermann

[生]1864.6.22. アレクソタス
[没]1909.1.22. ゲッティンゲン
ドイツの数学者。兄オスカルは有名な病理学者。ベルリン大学での3学期間を除き,ケーニヒスベルク大学に学び,ここで D.ヒルベルトや A.フルビッツと親交を結ぶ。 1885年ケーニヒスベルクで学位を取り,ボンで教えたあと,ケーニヒスベルク大学教授 (1894~96) ,チューリヒのスイス連邦工科大学教授 (96~1902) 。スイス連邦工科大学では A.アインシュタインが学生として彼の講義を聞いた。 1902年,ゲッティンゲン大学教授となり,生涯その職にとどまる。学生時代に「1つの整数を5個の整数の平方の和として表わす問題」 (1883) で,パリ科学アカデミーのグランプリを獲得。この問題は 19世紀初めに,C.ガウスが2変数の2次形式の問題として着手して以来,多くの数学者によって研究されていた。ミンコフスキーは,これを一般的に n変数の2次形式としてとらえ,いろいろの形で研究した。この理論に対するミンコフスキーの最も重要な貢献は次の2つである。 (1) 有理係数の2次形式に対し,3個の不変量を用いて,有理係数の1次変換によって同等となる性質の研究。 (2) 実係数の正値2次形式を既約にする理論の完成 (1905) 。彼は2次形式の理論と関連してディオファントス近似を研究し,そのために格子,凸体の概念を導入。これらの概念を用いる理論を彼は「数の幾何学」と呼んだ。またアインシュタインの特殊相対性理論ミンコフスキー空間と呼ばれる四次元空間のなかでとらえ,幾何学的意味を与えた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー
Hermann Minkowski
生没年:1864-1909

ドイツの数学者。リトアニアに生まれ,8歳のときに家族とともにケーニヒスベルク(現,ロシア連邦のカリーニングラード)に移住した。ケーニヒスベルク大学に学び,ここで終生の友となったD.ヒルベルトとフルウィッツA.Hurwitz(1859-1919)に出会った。早くからその才能を示し,18歳でイギリスの数学者スミスJ.Smith(1826-83)とともにアカデミー・デ・シアンスの数理科学大賞を与えられた。ボン大学,チューリヒ工科大学の教授を経て,1902年にはヒルベルトが教授をしていたゲッティンゲン大学の教授となったが,09年盲腸炎のため急死した。ミンコフスキーは,アカデミー大賞の対象となった二次形式の理論をその後も発展させるとともに,これと関連して,幾何学的な考察から数論における深い定理を導き出す方法を考え出し,これを〈数の幾何学〉と呼んだ。また物理学にも興味をもち,ミンコフスキー空間と呼ばれる四次元の空間を考え,アインシュタインの相対性理論に数学的基礎を与えた。著書に《数の幾何学》(1896),《ディオファントス近似論》(1907),《空間と時間》(1909)。
執筆者:


ミンコフスキー
Eugène Minkowski
生没年:1885-1973

フランスで活躍した精神医学者で,L.ビンスワンガーとともに現象学を精神病理学に導入し,その方面で指導的役割を果たした。ロシアのペテルブルグに生まれ,ミュンヘン大学で医学を学び,1914年にチューリヒ大学医学部精神科に入ってE.ブロイラーに師事したが,第1次大戦ではフランス軍に従軍した関係で,その後はおもにパリで生活し,臨床と研究,専門誌の編集などに専念した。27年の《精神分裂病》はブロイラーの精神分裂病(統合失調症)の概念をフランスに初めて紹介するとともに,分裂病の基本障害を〈現実との生ける接触の喪失〉としてとらえたことで有名で,その後の《生きられる時間》(1933),《宇宙論の方へ》(1936)と並ぶ精神病理学の古典的著作である。夫人のミンコフスカFrançoise Minkowska(?-1951)もやはりロシア生れの精神科医で,てんかんの系譜学と性格学,ゴッホの病跡,ロールシャハ・テストの研究などで知られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー

ロシア出身のドイツの数学者。1902年ゲッティンゲン大学教授。整数論に幾何学的概念を導入。1908年に特殊相対性理論における時間・空間の概念を論じ,四次元時空間の幾何学として定式化。→四次元世界

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

367日誕生日大事典 「ミンコフスキー」の解説

ミンコフスキー

生年月日:1885年4月17日
フランスの精神医学者
1972年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のミンコフスキーの言及

【自閉】より

…E.ブロイラーが精神分裂病者の心的生活の基本的特徴として述べた概念である。さらにE.ミンコフスキーは,自閉を〈豊かな自閉autisme riche〉と〈貧しい自閉autisme pauvre〉とに分け,内的に妄想の活発な自閉が前者であるのに対し,内的には空虚で,一見現実との接触を保っているようでいて真の意味のかかわりのないものが後者であり,いずれにも〈現実との生ける接触の喪失〉があることを指摘している。自閉概念はその後さらに意味が深められるとともに,一方では拡大もされ,神経症や性格障害などにも広く適用されるにいたっている。…

【自閉症】より

…彼は,これを他の人間やその世界との接触において自己内界への指向が優勢なものにまで拡大し,正常人でもさまざまな割合で現実思考と自閉思考(非現実思考)が存在するとしたが,一方では自閉の概念は多くの学者によって精神状態の基本障害としてとり上げられるようになった。とりわけE.ミンコフスキーは自閉についての考えを発展させ,自閉を〈現実との生きた接触の喪失〉と規定し,内的生活の豊富な〈豊かな自閉autisme riche〉とそれの乏しい〈貧しい自閉autisme pauvre〉に分けた。 一方,児童精神医学の領域でも,著しい行動異常や情緒的混乱を示す子どもが自閉性ないし自閉思考を中心症状として児童分裂病childhood schizophreniaの名称のもとに記述,報告されるようになった。…

※「ミンコフスキー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android