メロン(ウリ科)(読み)めろん(英語表記)melon

翻訳|melon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メロン(ウリ科)」の意味・わかりやすい解説

メロン(ウリ科)
めろん
melon
[学] Cucumis melo L.

ウリ科(APG分類:ウリ科)の一年生つる草。アフリカのギニア地方原産で、日本には明治初期にアメリカから初めて伝来し、また明治後期にヨーロッパから導入した温室メロンが普及定着した。メロンにはカンタループ系、フユ(冬)メロン系、アミ(網)メロン系の3系統がある。なお、アミメロン系とカンタループ系のメロンは香りが優れるので麝香(じゃこう)(musk)にちなんでマスクメロンとよばれる。日本ではメロンといえば、従来温室栽培のアミメロンのことであった。アミメロンは多湿な日本の気候のもとでは栽培が困難であったため、ガラス温室内で手をかけて栽培された。そのため高価であり、その気品のある味とともに最高級の果物として扱われ、初めは貴族の趣味園芸の栽培であったが、大正年代から市場出荷もされるようになった。代表的品種はアールス・フェボリットで、今日の日本の温室栽培用アミメロンの基幹品種で、日本における高級果物メロンのイメージのもとになった。温室メロンの主産地は静岡、愛知両県で、ほかに高知、千葉県も出荷量が多い。

 第二次世界大戦後、アミメロンとフユメロンおよび近縁マクワウリを人工交配して、病気や湿気に強く栽培しやすい改良品種がつくられ、露地栽培用メロンが広く普及した。これがいわゆる露地メロンである。露地メロンは大別してマクワウリの血を引くものと引かないものとに分けるが、前者の代表品種はプリンスメロン(1962育成)である。果表に網状の模様はないが、病気に強く豊産で、在来のマクワウリに比べて味が優れているため広く普及した。後者の露地メロンは、外観、品質ともアミメロンに似た品種が多くあり、それらはアミメロンの大衆化に効果をもたらした。

 日本におけるメロンの生産量は6950ヘクタール、15万8200トン(2016)で、主産地は茨城、熊本両県と北海道である。ほかに山形・青森・愛知・静岡・千葉県も出荷量が多い。

[星川清親 2020年2月17日]

メロンの起源と伝播

メロンはマクワウリvar. makuwa Makinoとシロウリvar. utilissimus (Roxb.) Duthie et Fuller(var. conomon Makino)の2変種を含み、これら3種の間は互いによく交雑する。メロンはアフリカのニジェール川沿いのギニアが起源地で、その野生型が自生するが、インドに第二次中心地があり、ここでメロンからマクワウリとシロウリが分化したと推定される。メロン類の作物化は比較的遅かったが、急速に全世界に伝播(でんぱ)し、さまざまに分化して重要な作物となった。まず古代にエジプト、中央アジア、アフガニスタン、中国に伝播した。古代エジプトで発達したメロンは、14~16世紀にヨーロッパで栽培が盛んになり、カンタループ、フユメロン、アミメロンが成立し、アミメロンはイギリスで温室メロンとして発達した。アメリカには16世紀にアミメロンが入り、露地メロンとして発達した。

 インドにおいて成立したマクワウリは紀元前から中国中央部および東部、朝鮮半島、日本などに伝播し、中国では多くの品種ができた。日本への伝来は古く、重要な作物であったが、現在はメロンとマクワウリの雑種から育成された品種に占められ、マクワウリの栽培はきわめて少なくなった。シロウリはインドでメロン類から分化したもので、東南アジアに伝播し、6~7世紀に中国から日本に伝来した。果実が成熟しても糖を形成しない。

[田中正武 2020年2月17日]

食品

特有の芳香をもち、多汁で上品な甘味をもつが、これらの持ち味を出すには摘果後、追熟する。これにより、細胞中のプロトペクチンは分解して果肉は柔らかくなり、香りも出てくる。食べごろは花落ちの部分が柔らかくなったころ。主として冷やして生食するが、アイスクリーム、シャーベット、ジュースなどにも利用される。

[河野友美 2020年2月17日]

『農山漁村文化協会編・刊『野菜園芸大百科4 メロン』第2版(2004)』


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