ユーイング(読み)Ewing,Sir James Alfred

デジタル大辞泉 「ユーイング」の意味・読み・例文・類語

ユーイング(James Alfred Ewing)

[1855~1935]英国の工学者・地震学者。1878年(明治11)来日し、東大で機械工学電磁気学を教授。また、地震の研究を行い、振り子型地震計を製作した。83年帰国。

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精選版 日本国語大辞典 「ユーイング」の意味・読み・例文・類語

ユーイング

  1. ( Sir James Alfred Ewing サー=ジェームズ=アルフレッド━ ) イギリスの地震学者、物理学者。明治一一年(一八七八)来日、地震計を開発、近代地震計測学の基礎を築いた。(一八五五‐一九三五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーイング」の意味・わかりやすい解説

ユーイング(William Maurice Ewing)
ゆーいんぐ
William Maurice Ewing
(1906―1974)

アメリカの海洋地球物理学者。テキサス州ロクニーに生まれる。ライス・インスティテュートで物理学を専攻、学位を得る。1941年ウッズ・ホール海洋研究所に入り、海洋地球物理学の本格的研究を開始した。1949年ラモント(現、ラモント・ドハティ)地質学研究所の創立と同時に所長に就任し、これを世界有数の海洋地球物理学研究所に育成した。1959年からはコロンビア大学教授も務めた。彼の研究は地球物理学全般にわたり、とくに海洋地球物理学、海洋地質学、地震学、測地学への貢献は大きい。汎(はん)地球的な視点からの大西洋中央海嶺(かいれい)の研究をはじめ、海洋底地殻、海底混濁流ギヨー平頂海山)、地震波中のT相(海水中を伝播(でんぱ)する音波)、SOFAR(ソフアー)(sound fixing and rangingの略。外洋のサウンド・チャンネルを利用する一種の水中聴音器)の諸研究など、現代海洋地球物理学のもっとも基礎的な諸問題に、先駆的な業績を残した。主著に『The Floor of the Ocean : I. The North Atlantic』(1959・共著)がある。

[半澤正男]


ユーイング(Sir James Alfred Ewing)
ゆーいんぐ
Sir James Alfred Ewing
(1855―1935)

イギリスの地震学者、物理学者。スコットランドダンディーに生まれる。エジンバラ大学卒業後しばらく海底電線敷設事業に従事した。1878年(明治11)来日し、1883年まで東京大学機械工学教授として教えた。その間、磁性体の帯磁のヒステリシス現象を研究し、また地震の研究を行う。1880年に結成された日本地震学会に参加、水平振子型地震計(1880)および二重振子型地震計(1881)を考案し地震波動の諸位相の弾性論的解明を行った。1883年帰国後は、ダンディー大学工学教授(1883)、ケンブリッジ大学機構学および応用力学教授(1890)、海軍教育部長(1903)、1916年にはエジンバラ大学教頭兼副総長となった。第一次世界大戦中は暗号電報解読に従事した。

[松澤武雄 2018年8月21日]


ユーイング(Juliana Horatia Ewing)
ゆーいんぐ
Juliana Horatia Ewing
(1841―1885)

イギリスの女流児童文学作家。児童文学作家ギャッティ夫人Margaret Gatty(1809―73)の次女。母親の編集で創刊された『ジュディおばさんの雑誌』Aunt Judy's Magazineに長短編の物語を載せて作家的地位を確立した。『6歳から16歳まで』(1875)、『ジャカネイプス』(1883)ほかで人物と状況を感傷を排して客観的に描き児童文学のリアリティーを高めた。

神宮輝夫

『ユーイング著、石井桃子訳『ティモジーのくつ』(『少年少女世界文学全集8』所収・1961・講談社)』

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朝日日本歴史人物事典 「ユーイング」の解説

ユーイング

没年:1935.1.7(1935.1.7)
生年:1855.3.27
明治期に来日したお雇い外国人。イギリス人物理学者。スコットランドのダンディの牧師の家に生まれ,エジンバラ大学で土木工学のジェンキン教授に師事。その後グラスゴー大学のトムソン教授(ケルビン卿)の輩下として,大西洋海底電線の敷設工事などに従事した。トムソンの推薦により明治11(1878)年9月に東大の教師として来日し,物理学,蒸気機関論,器械学などを講義した。16年6月まで在職し,田中館愛橘らの門弟を育てた。当時滞日中のミルンと同じように地震学に関心を寄せ,日本地震学会の創立に寄与するとともに,地震計を創製し,地震観測所を設立した。 16年に帰国後はダンディ大学の工学教授となり,1890年ケンブリッジ大学に移って機械工学,応用機械学の教授を務めた。磁気学の研究で著名になるとともに,1903年海軍教育部長,16年母校エジンバラ大学の副総理に就任するなど教育面でも活躍。テキスト《The Steam Engine and other Heat Engine》(1894)を著し,広く利用された。1885年にダイアーがグラスゴー大学の2回目の教授選応募の際,推薦者のひとりとなったが,これは不首尾に終わった。<参考文献>T.J.N.Hilkins《Engineering at Cambridge University》,土木学会編『明治以後本邦土木と外人』

(三好信浩)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ユーイング」の意味・わかりやすい解説

ユーイング
James Alfred Ewing
生没年:1855-1935

イギリスの工学者,物理学者。スコットランドのダンディーに牧師の子として生まれる。1871年エジンバラ大学の給費生となり,W.トムソンのもとで大西洋海底電線敷設にあたった。78年招かれて東京大学の機械工学教師となり,79年地震学の研究を始め,地震計を製作したり大学内に地震観測所を設けたりした。83年生地のダンディーのユニバーシティ・カレッジの工学教授となり,90年よりはケンブリッジのキングス・カレッジの機械学・機械工学教授となった。その後海軍教育長官(1903-16),エジンバラ大学副総長(1916-29)を歴任。東京大学在職中から彼の命名になる磁気ヒステリシス現象についての研究を始めていたが,帰国後誘導磁気に関するW.E.ウェーバーの理論を修正し,新しく磁気模型を提示し,磁気分子説を発展させた。
執筆者:


ユーイング
Juliana Horatia Ewing
生没年:1841-85

イギリスの児童文学作家。有名な児童文学作家だった母親ギャティMargaret Gatty(1809-73)の編集した《ジュディおばさんの雑誌》その他に寄稿し,《小人のブラウニー》(1870)などのファンタジー,《ジャカネイプス》(1883),《短い一生の物語》(1885)などのリアリズム作品を残した。人生を愛情豊かな目で凝視し,むだなくひきしまった文体で描写して,児童文学の質を高めた。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユーイング」の意味・わかりやすい解説

ユーイング
Ewing, Sir (James) Alfred

[生]1855.3.27. スコットランド,ダンディー
[没]1935.1.7. ケンブリッジ
イギリスの物理学者。エディンバラ大学卒業後,1878年来日し,東京帝国大学で機械工学を講義。滞日中に金属の磁気的性質を研究し,磁気ヒステリシス (ヒステリシスは彼の命名) の発見者の1人となった。ほかに地震計の考案などがあるが,磁気の研究でみずから世界の最先端をいき,田中館愛橘らの学生にその雰囲気を伝え,日本の物理学の発展に大きな影響を与えた。 83年帰国してダンディーのユニバーシティ・カレッジ教授,ケンブリッジのキングズ・カレッジ教授 (1890) ,エディンバラ大学副学長 (1916) を歴任した。

ユーイング
Ewing, Juliana Horatia

[生]1841
[没]1885
イギリスの女流児童文学者。作品『ダーウィンおじさんのハト小屋』 Daddy Darwin's Dovecote (1884) ,『短い生涯の物語』 The Story of a Short Life (85) など。

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百科事典マイペディア 「ユーイング」の意味・わかりやすい解説

ユーイング

英国の物理学者。エディンバラ大学で学び,1878年来日。東大で機械工学を講じ,J.ミルンらとともに日本地震学会を設立,また地震計の考案,観測所の創設などで日本の地震研究に先駆的役割を果たした。1883年帰国し,ケンブリッジのキングズ・カレッジ教授,海軍教育長官,エディンバラ大学副総長などを歴任。磁気の理論,磁気ヒステリシス,金属の熱電気的性質,金属の結晶構造等の研究もある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ユーイング」の解説

ユーイング Ewing, Sir James Alfred

1855-1935 イギリスの物理学者。
1855年3月27日生まれ。明治11年(1878)東京大学教授となり物理学,機械工学などをおしえる。水平振り子による地震計を考案,13年ミルンらと日本地震学会を創設して日本における地震学の基礎をつくった。磁気学研究にも業績をのこす。16年帰国。のちケンブリッジ大教授,母校エジンバラ大の副総長。1935年1月7日死去。79歳。スコットランド出身。

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世界大百科事典(旧版)内のユーイングの言及

【地震学】より

…地震に関する哲学的考察は古くはギリシア・ローマ時代にさかのぼるが,自然科学としての地震学が芽ばえたのは1880年ころに地震動を正確に記録する地震計が発明されてからである。発明者は日本の明治新政府の御雇教師として来日していたイギリスの物理学者J.A.ユーイングである。その後,適当な周期と倍率をもつ地震計が遠隔の地に起こった大地震による波動を記録することが知られてからは,ドイツや帝政ロシアなどで性能の良い地震計が製作され,世界各地で地震観測が行われるようになった。…

※「ユーイング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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