リコール(読み)りこーる(英語表記)recall

翻訳|recall

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リコール(国民罷免)
りこーる
recall

国民罷免あるいは国民解職ともいう。公職者(公務員)が国民や住民の信頼を裏切る行為をしたとき、任期満了前に国民または住民の発意によって呼び戻す(recall)方法である。レファレンダム、イニシアティブと並んで、直接民主制の一つである。スイスで1852年にアールガウAargauおよびシャフハウゼンSchaffhausenの2州が採用したのが最初である。他の多くの州にも伝わったが、ほとんど活用されなかった。他方、この制度はアメリカ合衆国において広く普及し、かつ利用されている。連邦政府ではなく、州や都市に多い。1903年ロサンゼルス市がリコール制を創設し、州法に規定を設けたのは08年のオレゴン州が最初である。その手続は一定数以上の州民(有権者)が発議し、これが成立すると国民投票または住民投票に付して、リコールの可否を決定する。多くの州は判事に対して適用しない。旧ソビエト社会主義共和国連邦憲法では「すべて議員は、……法律の定める手続により、選挙人の多数決に基づき、随意に罷免されうる」(124条)と規定している。日本国憲法では「公務員を選し罷免することは国民固有の権利である」(15条1項)と規定し、リコールを制度化した。最高裁判所裁判官の国民審査(憲法79条2項)も一種の法定リコールである。また地方自治法では、長および議員の解職請求(131条2項・3項、80条~88条)が実現されている。リコールの長所としてあげられるのは、国民または住民は公務員を監督することができることである。したがって、公務員は責任感を喚起せられ、職務に忠実に、行動を慎むようになる。法律違反は裁判所が処理するが、政治的責任や道義的責任は、リコールによって問うほかはない。短所として、扇動家(デマゴーグ)の中傷、反感による攻撃によって事実が曲げられ、無責任な立場で、公務員を解職するようになることもある。そのため公務員はデマゴーグや世論に迎合するようになることが指摘される。[伊藤 勲]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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