上分(読み)ジョウブン

デジタル大辞泉 「上分」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ぶん〔ジヤウ‐〕【上分】

上のほうの部分。〈日葡
古代・中世、神仏に対する貢納物。
中世、年貢所当のこと。「上分米」

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精選版 日本国語大辞典 「上分」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ぶん ジャウ‥【上分】

〘名〙
① 上の方。良い方。うわべ。
※九冊本宝物集(1179頃)八「あたるところの日食を、かならず上分を取て、仏にくやうし奉りし供養(くどく)のゆへに」
※人となる道(1781)不悪口「小児をもあなどらず、畜生をものらず、言辞(ごんじ)上分(じゃうブン)を取ず」
② 公事の系統に属する貢納物。初穂・初物を神仏へ納入した慣行から生じた課役。上分物(じょうぶんもつ)
※廬山寺文書‐天祿三年(972)五月三日・天台座主良源遺告「件庄地子上分、可法華堂四季懴法間燈明料
古今著聞集(1254)一六「上分仏に参らせんとて、鐘打ちならしに参りたりつるぞとこたへける」
海道記(1223頃)逆川より鎌倉「御前をすぐる下船は上分を奉る」
④ 年貢所当のこと。土地下地というのに対して、そこから上がる収益の意。
※北野社家引付‐長享二年(1488)五月五日「殊一乱中自国上分運上由候、若虚言儀候者」

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改訂新版 世界大百科事典 「上分」の意味・わかりやすい解説

上分 (じょうぶん)

中世の年貢の一種。〈地利(ちり)上分〉〈交易上分〉〈供祭(くさい)上分料〉などといわれ,土地や商業活動の収益の一部を,社寺の供祭物,朝廷の供御(くご)として貢納したものを指す。上分はまた〈ハトヲ〉〈御初穂物〉と呼ばれることもあり,原義初穂すなわちその年はじめて収穫した穀物を神仏または朝廷に最初に奉ったものの称であったと思われる。平安末期の飛驒国では,同国の一宮の仏神田に八講田,彼岸田などとならんで上分田が設置されていたし,摂津国勝尾寺文書にある多数の中世の売券,譲状には,田畠の負担として本所当(ほんしよとう),加地子(かじし)のほかに〈春日御年貢の炭,上分米〉があったことが記されている。しかし平安末期から全国的に荘園の形成が進むなかで,伊勢,賀茂,石清水などの大寺社は各地に荘園,御厨(みくりや)を設定してゆき,その所領から納められる官物(かんもつ)(年貢のこと)の一部ないし全体を,寺社の供祭の費用たる〈上分料〉として位置づけていった。例えば伊勢神宮領である下総国相馬御厨では,御厨を寄進した在地の領主千葉氏が神宮の〈供祭上分〉として〈田畠の所当官物〉を納入し,みずからは〈加地子ならびに下司職〉の権利を所持するとしている。このように,荘園制の形成とともに上分は仏神物として寺社領主に納入する年貢そのものの意味をもつように変化したが,さらにこれら寺社は仏神物として集積した年貢を直接に供祭物にあてるよりも,むしろ金融の資本に転用し〈神用のための上分物〉と称してさかんに高利貸活動を行った。すでに12世紀の前半,比叡山延暦寺に属する日吉社(ひえしや)の神人(じにん)たちは上分米を資本に貸付けを行い,高利を取っていた事実がみられる。中世の高利貸(借上(かしあげ))の起源がここにあり,資本たる上分物は仏神物としての宗教的権威づけがなされていたのである。
供給(くごう
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上分」の解説

上分
じょうぶん

中世,神仏に上納した貢進物。また年貢のこと。平安初期から史料に「地利(ちり)上分」「供祭(くさい)上分」などとみえ,本来は,神仏への貢進物をさした。平安後期以後,荘園制が形成されるなかで,諸寺社は所領からの収取物を上分と称することによって,みずからの年貢収取権を宗教的に権威づけた。そのため上分はしだいに年貢そのもののことと考えられるようになり,鎌倉後期頃からは,寺社に納めるものにかぎらず,年貢一般をさすようになった。この場合,しばしば土地を意味する下地(したじ)の対語として用いられた。日吉神人(ひえじにん)のように,神仏への上分を元手に利殖行為を行う者もあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上分」の意味・わかりやすい解説

上分
かみぶん

愛媛県東部、四国中央市の一地区。金生(きんせい)川の流域を占め、阿波(あわ)(徳島県)、土佐(高知県)へ通じる旧道分岐の要地であった。現在は機械漉(す)き製紙業や水引(みずひき)、のし紙など紙加工業が盛ん。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上分」の意味・わかりやすい解説

上分
じょうぶん

荘園制下,収益の対象となる土地からの得分。土地を下地 (したじ) というのに対し,得分を上分といった。特に年貢以外に,国や郡から毎月末に上納したものをいうこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の上分の言及

【歌舞伎】より

…大立者の推挙により立者に昇進し得る最短距離にいた。 相中上分(あいちゆうかみぶん)役者の階級の一つ。1878年東京新富座の開場に際し,相中から分離し上位になった。…

【下地】より

…公領や荘園において,所当(年貢)や公事(夫役,雑公事)などの剰余労働(または剰余生産物)を上分(じようぶん)というのに対し,これらを生み出す土地(田畠などの耕地や山野未開地)をいう。13世紀以降では,さらにすすんで土地とそこで生産活動に従事する人間との結びつきそのものをさすに至る。…

※「上分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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