日本大百科全書(ニッポニカ) 「QT延長症候群」の意味・わかりやすい解説
QT延長症候群
きゅーてぃーえんちょうしょうこうぐん
long QT syndrome
不整脈の一種で、心電図のQ波の開始点からT波の終了点までの時間、すなわちQT間隔の延長(作用)のために、心室性不整脈による失神発作を伴い、ときに心停止に陥る症候群。略称LQTS。
遺伝性のものは遺伝性(先天性)QT延長症候群とよばれ、T波の変調のほか、高頻度で心室性不整脈すなわちトルサード・ド・ポアントTorsades de pointes型心室頻拍(Tdp、倒錯型心室頻拍)や心室細動による失神発作を伴い、ときに心停止から死に至ることもある。イェルベル・ラング‐ニールセン症候群Jervell and Lange-Nielsen syndromeやロマノ‐ワード症候群Romano-Ward syndromeなどの種類があり、前者は常染色体潜性遺伝であるが後者は常染色体顕性遺伝で、前者には先天性聾(ろう)を伴うが後者には伴わない。近年になって、心筋細胞膜にある、カリウムやナトリウムイオンを通す孔(イオンチャネル)を正しく機能させる遺伝子情報の異常によりQT間隔の延長がみられることがわかり、これまで原因不明であった特発性QT延長症候群はこれが原因と考えられている。
ほかにカリウムやナトリウムなどの電解質異常や抗不整脈薬など薬物の作用、あるいは高度の徐脈、脳出血や脳梗塞(のうこうそく)など脳血管障害といった後天的な要素がかかわる二次的QT延長症候群がある。
[編集部]