日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
九十九島(くじゅうくしま)
くじゅうくしま
長崎県北松浦半島(きたまつうらはんとう)の西岸のリアス海岸に散在する大小200余の島嶼(とうしょ)群。佐々浦(さざうら)を境にして、佐世保(させぼ)市南部の海岸部に分布する南九十九島と、平戸(ひらど)瀬戸に面する北九十九島に区分される。これらの島々は、準平原化された第三紀層の丘陵地が海進を受けて、多数の小島となったもので、砂岩と頁(けつ)岩の差別侵食によってケスタ地形(硬軟の互層をなす地層に生ずる侵食地形)を示している。島々は緑の照葉樹林に覆われ、黄色の海食棚をもち、海の青さに映えて絶妙の景色を展開している。明治時代の名曲『美しき天然』は、この島々を背景に作曲されたといわれる。第二次世界大戦前この一帯は要塞(ようさい)地帯とされたが、戦後西海国立公園(さいかいこくりつこうえん)に含まれ、佐世保市鹿子前(かしまえ)港を出航して島々を巡る観光船があり、陸上からは弓張(ゆみはり)岳、石岳、冷水(ひやみず)岳などからの展望が優れている。
[石井泰義]
『『五島列島―九十九島―平戸島学術調査書』(1952・長崎県)』