五大力(読み)ゴダイリキ

デジタル大辞泉 「五大力」の意味・読み・例文・類語

ご‐だいりき【五大力】


五大力菩薩ぼさつ」の略。
地歌作詞者未詳。白川検校作曲。
長唄を杵屋弥十郎が長唄に作曲。歌舞伎狂言五大力恋緘ごだいりきこいのふうじめ」の中でめりやすとして使われた。
五大力恋緘」の通称。

《五大力菩薩が道祖神の本地とされたところから、その力により手紙が無事に届くとされて》江戸時代、主に女性が、相手に無事届くようにと手紙の封じ目に記した文字。「五大力菩薩」とも記した。
江戸時代、女性が魔よけや貞操の誓いとして、かんざしキセル三味線の裏皮などに彫ったり書いたりした文字。
五大力船」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「五大力」の意味・読み・例文・類語

ごだい‐りき【五大力】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ]ごだいりきぼさつ(五大力菩薩)[ 一 ]」の略。
      1. [初出の実例]「若図五大力之形而懸万戸」(出典:日蓮遺文‐立正安国論(1260))
    2. [ 二 ] 地歌。二上り。季丈(さかい七兵衛)作詞。白川検校作曲。正徳享保一七一一‐三六)以前の作。「一筆(ひとふで)書きそむるは」で始まる書簡体の歌詞で、恋する男と逢う日を待ちつつ、男の身を案ずる優しい女心をうたったもの。
    3. [ 三 ] 長唄。同名の地歌の曲の後半の歌詞を借りて、歌舞伎「五大力恋緘」に用いられた独吟のめりやす。遊女小万が恋する客源五兵衛への心の変わらぬ印にと、三味線の裏皮に「五大力」と書く時に陰でうたわれる。
      1. [初出の実例]「メリヤス五大力『いつまでぐさのいつまでも。生酔(なまゑ)と生酔ものいへぬ』」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)
    4. [ 四 ] 歌舞伎「五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)」の通称。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. ごだいりきぼさつ(五大力菩薩)[ 二 ]」の略。
      1. [初出の実例]「神から渡す一結び、片仮名のより五大力」(出典:浄瑠璃・三世相(1686)三)
    2. ( から転じて ) 魔除け、貞操の誓いとして、キセル、かんざし、小刀、三味線の裏皮などに書きつけた語。
      1. [初出の実例]「芸子の魂は三味線、その三味線の封目(ふうじめ)堅う、心の誓ひは五大力」(出典:歌舞伎・五大力恋緘(1793)二幕)
    3. ごだいりきせん(五大力船)」の略。
      1. [初出の実例]「西宮の五大力、兵庫造り之新造、右之灘にて伝法船へ走当り」(出典:船法御定並諸方聞書(1724頃))

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改訂新版 世界大百科事典 「五大力」の意味・わかりやすい解説

五大力 (ごだいりき)

地歌。のち江戸長唄でもうたわれた。〈五大力〉は五大力菩薩の略。手紙の封じ目にこの3字を書くと,五大力菩薩の加護で無事先方に届くと信じられた。歌詞はしばらく会わずにいる女から男へ送る文。その一節に〈互の心うち解けてうはべは解かぬ五大力〉とある。《歌系図》によれば地歌の作曲は白川検校。享保期(1716-36)の歌謡を集めた《吟曲古今大全》に見えるのが最も古い。狂言作者初世並木五瓶は1794年(寛政6)2月初演の《五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)》で,芸子菊野が三味線の裏皮に心変わらぬ誓いとして〈五大力〉と書く場面に,地歌の曲節をとり入れて〈めりやす〉として使い,翌年江戸で上演の際は2世杵屋(きねや)弥十郎作曲で,この歌の後半を〈いつまで草のいつまでも〉と歌い出す歌詞に改めて使った。これが長唄《五大力》で,普通〈めりやすの五大力〉と呼ばれる。地唄,長唄ともに沈んだ曲調で,そのなかに色めいた気分がただよう。日本名著全集《歌謡音曲集》に収録。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五大力」の意味・わかりやすい解説

五大力
ごだいりき

歌謡,浄瑠璃,歌舞伎狂言の一系統。五大力とは,元来は五大力菩薩の略で,女からの恋文の封じ目に書く文字であり,また貞操の誓いとして簪 (かんざし) ,小刀,三味線の裏皮などにこの字を書いた。寛政6 (1794) 年,上方唄の『五大力』と,小万と源五兵衛の心中事件,曾根崎五人斬り事件とを合せた並木五瓶作『島廻戯聞書 (しまめぐりうそのききがき) 』が大坂中の芝居で初演された。翌年,江戸へ下った五瓶は3世沢村宗十郎のために舞台を江戸に置き換えて改作した『五大力恋緘 (こいのふうじめ) 』を江戸都座で初演。このとき上方唄に加筆し,杵屋弥十郎作曲のメリヤス『五大力』を用いて人気を得た。芝居は紛失した宝刀探しに明け暮れる源五兵衛と三五兵衛に,辰巳芸者小万との愛と義理立てをからませた筋で,隣で唄う五大力を聞きながら三味線の裏皮に五大力と書く趣向が受けた。ほかに文化3 (1806) 年並木五瓶作の『略三五大切 (かきなおしてさんごたいせつ) 』,文政8 (25) 年鶴屋南北作の『盟三五大切 (かみかけてさんごたいせつ) 』の書き換え狂言が有名。

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百科事典マイペディア 「五大力」の意味・わかりやすい解説

五大力【ごだいりき】

初世並木五瓶作の歌舞伎劇。本外題《五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)》。1794年初演。曾根崎遊廓で起こった薩摩武士の痴情殺傷事件を脚色。芸者小万と深い仲になった薩摩侍勝間源五兵衛が,恋敵(こいがたき)笹野三五兵衛の奸策(かんさく)により,心にもない愛想づかしをした小万を殺害する話。世話物(せわもの)の典型。
→関連項目沢村宗十郎

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「五大力」の解説

五大力
メリヤス
ごだいりき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
並木五瓶(1代)
演者
杵屋弥十郎(2代)
初演
寛政7.1(江戸・都座)

五大力
(通称)
ごだいりき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
五大力恋緘 など
初演
寛政6.5(京・西の芝居)

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