デジタル大辞泉
「人」の意味・読み・例文・類語
じん【人】
1 物事を「天・地・人」の三段階に分けたときの第三位。評価する場合や、3冊の本の3番目に用いる。
2 国籍・地域・職業・分野などを示す語と複合して用い、それに該当する人間、それをもつ人間であることを表す。「九州人」「アーリア人」「経済人」「現代人」「自由人」
り【▽人】
[接尾]助数詞。人を数えるのに用いる。「一人」「二人」
[補説]和語の数詞に付くが、「ひとり」「ふたり」の場合だけであって、三人以上は「みたり」「よたり」などのように、「たり」を用いる。なお、「ふたり」の場合も、「ふ」に「たり」の付いたものとする説がある。
たり【▽人】
[接尾]助数詞。「三」「四」など和語の数詞に付いて、人を数えるのに用いる。「み人」「よ人」
と【▽人】
[語素]《「ど」とも》他の語に付いて、ひとの意を表す。「助っ人」「盗っ人」「東人」
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ひと【人】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ]
- ① 生物中の一類としての人間。下肢で直立歩行し、上肢は手の機能を果たすようになり、地上生活を営み、道具を使用し、さらに大脳の著しい発達によって、言語、思考、理性の能力、また文化的創造の能力を有するに至ったもの。人間。生物学上は、脊椎動物門哺乳綱霊長目ヒト科に分類される。ひとの進化の段階として、一般に猿人、原人、旧人、新人が考えられており、これら化石人類は数属に分かれるが、現生人類はすべて一属一種、すなわちホモ‐サピエンスであり、狭義にはこれを「ひと」という。現生人類における人種は、生物学上の亜種または変種に相当する。自然科学の対象以外では、「ひと」は動物や植物などと同位概念として、あるいは自然と対立する概念として用いられる場合が多い。
- [初出の実例]「一つ松 比登(ヒト)にありせば 太刀佩けましを 衣着せましを」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし」(出典:徒然草(1331頃)七)
- ② 人類以外の生物で、人間に準ずる体形や能力を有すると考えられるもの。人類から類推した天人、火星人など。
- [初出の実例]「月の都の人也」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- [ 二 ] 社会的に生存する人間。
- ① 存在、行為、思考、あるいは性質、状態などの主体としての人間。個人、またはその集合。
- [初出の実例]「忍坂の 大室屋に 比登(ヒト)多(さは)に 来入り居り」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「心ある人はいかにか見けむ」(出典:舞姫(1890)〈森鴎外〉)
- ② 具体的な存在ではなく、抽象的な概念としての人間。
- (イ) 人間一般。人間たるもの。
- [初出の実例]「恋にもそ人(ひと)は死にする水無瀬河下ゆ吾痩す月に日にけに」(出典:万葉集(8C後)四・五九八)
- (ロ) 格助詞「の」を伴って連体修飾語となり、物事の帰属する主体が一般的な人間であることを表わす。多く慣用句として用いられ、きわめて軽い意味を加えるにすぎない。
- [初出の実例]「如何ぞ人(ヒト)の兄(いろ)として弟に事へむや」(出典:日本書紀(720)神代下(丹鶴本訓))
- ③ 世の人々。一般の人間。また、世間。世俗。
- [初出の実例]「百済の俗(ヒト)、此の鳥を号けて倶知と曰ふ」(出典:日本書紀(720)仁徳四三年九月(前田本訓))
- ④ 人民。国民。あおひとぐさ。ひとくさ。たみくさ。
- [初出の実例]「食(を)す国も 四方の人をも あぶさはず 恵みたまへば」(出典:万葉集(8C後)一九・四二五四)
- ⑤ 人間として、またはある事に関して、必要な条件を備えたもの。完成した人格。一人前の人間。
- (イ) 成年に達したもの。成人。おとな。
- (ロ) 人らしい人。とりたてていうに値する人。立派な人物。また、特にある事について、しかるべき人。適当な人。すぐれた人。人材。
- [初出の実例]「あれをおきて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)
- 「あに二人の子孫には、人とおぼゆる器量は一人もなし」(出典:愚管抄(1220)七)
- ⑥ 人間であるための重要な条件をいう。
- (イ) 人間の品格。人柄。人品。
- [初出の実例]「人もたちまさり、心ばせまことにゆゑありと見えぬべく」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
- (ロ) 人の身分、家柄。
- [初出の実例]「人の程よりは、さいはひのこよなくおくれ給へるなんめりかし」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一一月一七日)
- 「人も賤しからぬ筋に、かたちなどねびたれど清げにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
- (ハ) 人間の性質。ひととなり。特に、気性、心だてをいう。「人がよい」「人が悪い」
- [初出の実例]「君は然云ふ不実な人物(ヒト)とは思はんだった」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
- ⑦ 当人に対して、それ以外の人。他の人。
- (イ) 他人。当人以外の不特定の人。また、当事者に対して、まわりの人。
- [初出の実例]「天飛(だ)む 軽の嬢子(をとめ) 甚(いた)泣かば 比登(ヒト)知りぬべし」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「人から誘はれた事もあるが断った」(出典:倫敦塔(1905)〈夏目漱石〉)
- (ロ) ほか。よそ。他。特に人間を具体的に意識することなくいう。
- [初出の実例]「人の国へいきけるを、いとあはれと思ひて別れにけり」(出典:伊勢物語(10C前)四六)
- ⑧ 法律でいう。
- (イ) 広義には、自然人と法人を含む法律上の人格者。権利および義務の主体となるもの。
- [初出の実例]「人の権利義務に関する証書類を毀棄滅尽したる者は」(出典:刑法(明治一三年)(1880)四二四条)
- (ロ) 狭義には、法人に対して自然人。出生から死亡に至るまでの個人。
- [初出の実例]「予め謀て人を殺したる者は謀殺の罪と為し死刑に処す」(出典:刑法(明治一三年)(1880)二九二条)
- [ 三 ] ある人物、またはある種の人間を、一般化、または客観化して表現する。
- ① 不特定の人物をいう。ある人。だれか。特定の人物を、ことさらに不特定化して、ぼかしていう場合がある。
- [初出の実例]「大鳥の 羽易(はがひ)の山に 吾が恋ふる 妹はいますと 人の云へば」(出典:万葉集(8C後)二・二一〇)
- 「うまのはなむけせんとて人を待ちけるに、来ざりければ」(出典:伊勢物語(10C前)四八)
- ② すでに話題に上っている特定の人物をさして、一般的にぼかしていう。この人。あの人。
- [初出の実例]「わたの原八十島かけて漕ぎいでぬと人にはつげよあまの釣舟〈小野篁〉」(出典:古今和歌集(905‐914)羇旅・四〇七)
- ③ 自分自身を客観化していう。現代語では、「人を馬鹿にする」「人の気も知らないで」など、自分に対する他人の態度をとがめるときに用いることが多い。
- [初出の実例]「暇なく人の眉根を徒に掻かしめつつも逢はぬ妹かも」(出典:万葉集(8C後)四・五六二)
- ④ 自分に対して対者をいう。また、男女の相聞などで、相手を客観化していう。あなた。
- [初出の実例]「ひとはいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・四二)
- 「秋の草をも掘り移していたづらなる野辺の虫をも棲ませて、人に御覧ぜさせむと思ひたまふるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)
- ⑤ さまざまの相対的関係にある人物の一方をいう。
- (イ) 恋人。また、夫、あるいは妻。
- [初出の実例]「人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり」(出典:万葉集(8C後)三・四五一)
- (ロ) 君主、主人に対して、それに従うもの、使われるもの。臣下、家来、女房、供人、召使い、使用人など。
- [初出の実例]「つるかめにつけて、きみをおもひ、人をもいはひ」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
- (ハ) 使者。代理人。
- [初出の実例]「かしこより人おこせばこれをやれ」(出典:伊勢物語(10C前)九六)
- (ニ) 客人。「一日中人があった」
にん【人】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ひと。ひとがら。じん。
- [初出の実例]「我見、人見、衆生見者、多堕二邪見一」(出典:往生要集(984‐985)大文四)
- 「大抵己(おのれ)の人(ニン)に無い、柄に無い事は頓と出来ません」(出典:落語・化物娘(1893)〈禽語楼小さん〉)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 人数をかぞえるのに用いる。
- [初出の実例]「色好みといはるる限り五人」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
たり【人】
- 〘 接尾語 〙 和語の数詞に付いて、人を数えるのに用いる。「みたり」「よたり」「いくたり」など。
人の語誌
「ふたり」の場合は、「ひとり」とともに、数詞の語幹に接尾語「り」が付いたものとするのがふつうだが、「ふ‐たり」とする説もある。なお五人を意味する「いつたり」という語は中世以後にしか見えず、古くは「いとり」といったらしい。平安時代以前に六人以上の人数について「たり」をつけた言い方があったのかどうかは不明であるが、近世の文学作品には「むたり」「ななたり」「やたり」などの形も見える。
り【人】
- 〘 接尾語 〙 人を数えるのに用いる。和語の数詞に付くが、「ひとり」「ふたり」の場合だけであって、三人以上は「みたり」「よたり」など「たり」の形を用いる。
人の補助注記
「ふたり」の場合は「ふ」に「たり」の付いたものとする説もある。
と【人】
- 〘 造語要素 〙 他の語に付いて、ひと(人)の意を表わす。連濁で「ど」ともなる。「たびと(旅人)」「ぬすっと(盗人)」「はやと(隼人)」「すけっと(助人)」「あずまと(東人)」など。
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人 (ひと)
動物の1種としてのヒトについては〈ヒト〉および〈人類〉の項,ヒトの身体については〈からだ〉の項をそれぞれ参照されたい。そのほか〈人間学〉〈人間科学〉などの項も参照。ここでは法律上の〈人〉について記述する。
法律上の,人とは広義には自然人natürliche Person(われわれのような生物学的存在)のほか法人juristische Personをも含めて,権利義務の主体をさすが,狭義には自然人のみをさす(ドイツ民法第1編第1章の〈人〉は広義,フランス民法第1編の〈人〉と日本民法第1編第1章の〈人〉は狭義)。自然人たると法人たるとを問わず,権利義務の主体(人)として法的に承認されていることの意味は,その名において財産権を取得してこれを保有し,当該の財産権の侵害に対しては国家裁判機関の助力を得て強制的にこれを排除しうることである。これに加え,狭義の人すなわち自然人においては,財産法上の関係においてのみならず,生命・身体・自由等々の人格的諸利益の完全な享受をまず保障され,あるいはまた,法的に承認され保護された家族関係上の地位に立ち,これに伴う諸利益の享受を保障されている。すなわち,〈人〉とは,自然人・法人のそれぞれが以上のような意味での法的保護を受けるに必要な資格を意味する法技術概念である。そして,この〈人〉という資格がすべての自然人に固有・当然の属性であるとする法体系や社会制度が出現したのは,すべての生物学的存在としての人間を自由平等なものとして取り扱うべきことを自明視する近代市民社会(イデオロギー的には近世自然法思想)においてであった。
→権利能力 →出生
執筆者:須永 醇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人
ひと
法的な権利義務の帰属主体を、人あるいは法的人格という。それは、法的に構成された概念であって、生きている人間個人とは区別されなければならない。権利義務の帰属主体には自然人と法人とがある。
自然人とは、いわゆる人間であり、近代法ではすべての自然人が法的な権利義務の帰属主体となる。その始期は出生であり(民法3条1項)、終期は死亡である。胎児は原則として法的人格を有しないが、この原則を厳格に貫くと、胎児の不利益が甚だしいので、民法は、損害賠償請求、相続など重要な場合には、胎児をすでに生まれたものとみなした(同法721条、886条、965条など)。したがって、たとえば、胎児中に不法行為で父親を失った者が生きて生まれると、加害者に対して損害賠償を請求することができ、また、父親の財産を相続することができる。
法人は、自然人以外のものであって法的人格を有するものである。法人格の現実の担い手は、人の集合(団体)もしくは財産の集合(財団)である。前者を社団法人、後者を財団法人という。
[淡路剛久]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の人の言及
【体】より
…しかし,体には広狭2種の意味合いがある。広義では生物体とほぼ同義であり,狭義ではヒトを中心とする高等動物の身体をさす。広義で,生物体としての体は,単細胞と多細胞,植物と動物とをとわず,すべての生物個体の物質的実体である。…
【死】より
…(2)は型の曲線で,老化により死の起こる集団があてはまり,(3)は偶然の死因と年齢に依存した死因の複合した中間型の曲線で,多くの動物集団でみられるものである。ヒトの場合,社会の生活水準と工業水準とによって異なり,人口密度,衛生状態,栄養状態,医療などが曲線の形を決定し,社会が進歩するにしたがって曲線(1)から(3),さらに(2)の型へと移る。1825年にゴンペルツB.Gompertzによって,成熟後のヒトの死亡率が,年齢とともに指数関数的に増大することが見いだされた。…
【人類】より
…ヒト(人)ともいう。動物学上は霊長目真猿亜目ヒト上科ヒト科に属し,学名はホモ・サピエンス・サピエンスHomo sapiens sapiens。…
※「人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」