伊賀越道中双六(読み)いがごえどうちゅうすごろく

日本大百科全書(ニッポニカ)「伊賀越道中双六」の解説

伊賀越道中双六
いがごえどうちゅうすごろく

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。時代物。10。近松半二、近松加助合作。1783年(天明3)4月大坂・竹本座初演。1634年(寛永11)荒木又右衛門(またえもん)が義弟渡辺数馬(かずま)を助けて舅(しゅうと)の仇(あだ)河合又五郎を討った事件を脚色。奈河亀輔(ながわかめすけ)作の歌舞伎(かぶき)脚本『伊賀越乗掛合羽(のりかけがっぱ)』(1776初演)を土台にした作で、題名どおり仇討の過程を道中双六に見立て、鎌倉から郡山(こおりやま)、沼津岡崎などを経て伊賀上野の敵討(かたきうち)で終わる。同年9月には歌舞伎に移され、以後「伊賀越物」の代表作になった。

 第一(鎌倉)~第五(郡山)―上杉の臣沢井股五郎(さわいまたごろう)は同藩の老臣和田行家(ゆきえ)を殺して逐電する。行家の娘お谷の夫唐木政右衛門(からきまさえもん)は義弟志津馬(しづま)の助太刀(すけだち)をするため、主君誉田内記(ほんだないき)から暇(いとま)をもらう。第六(沼津)―志津馬の愛人お米(よね)は、沼津に住む父親の雲助平作(へいさく)のもとで敵股五郎の行方を探している。ある日、平作が昔、他家へ養子にやった息子の呉服屋十兵衛がこの家に泊まる。平作は十兵衛が沢井にゆかりある者と知り、千本松原で敵のありかを聞こうとするが、義心厚い十兵衛が明かそうとしないので、自害して末期の耳に股五郎の行方を聞き、お米に立ち聞きさせる。第八(岡崎)―敵を尋ね、藤川の関所を破った政右衛門は、岡崎で偶然にも旧師の山田幸兵衛の家に泊まる。幸兵衛は娘の許婚(いいなずけ)の股五郎に味方しようと、いったんは政右衛門に助太刀を頼むが、妻のお谷を追い返し嬰児(えいじ)のわが子まで殺した政右衛門の義心に感じ、助太刀を断念する。「沼津」は平作の気骨と、義理と恩愛の板挟みになる十兵衛の苦衷を劇的に描いた名場面で、とくに歌舞伎では花道と客席を使って旅の情趣を色濃く表現する。「岡崎」は雪を背景にした重厚な悲劇で、義太夫では有数の難曲になっている。

[松井俊諭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「伊賀越道中双六」の解説

伊賀越道中双六
いがごえどうちゅうすごろく

浄瑠璃。時代物 (仇討物) 。 10段。近松半二近松加作合作。天明3 (1783) 年大坂竹本座初演。荒木又右衛門と渡辺数馬による,いわゆる「伊賀越」の仇討ちを脚色した歌舞伎『伊賀越乗掛合羽』 (76) ,同題の浄瑠璃 (77) を題材とする。主題を仇討ちに絞り,6段目「沼津」では長く音信不通であった父子・兄妹の情愛と,義理ゆえに命を捨てる父親の悲哀を描く。また,敵同士となった師弟本心を明かさぬやりとりや,子を殺しても敵の手掛りを得ようとする政右衛門 (又右衛門) の苦衷を描く8段目「岡崎」を加えて山場とする。

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百科事典マイペディア「伊賀越道中双六」の解説

伊賀越道中双六【いがごえどうちゅうすごろく】

近松半二,近松加作作の浄瑠璃。またこれに基づく歌舞伎劇。1783年初演。通称《伊賀越》。唐木政右衛門(荒木又右衛門)が義弟和田志津馬にすけだちして,伊賀上野で敵(かたき)沢井股五郎を討つという筋で,雲助の平作が娘婿の志津馬のため命を捨てて敵のゆくえを聞き出す〈沼津〉の場が有名。

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デジタル大辞泉「伊賀越道中双六」の解説

いがごえどうちゅうすごろく〔いがごえダウチユウスゴロク〕【伊賀越道中双六】

浄瑠璃時代物。10段。近松半二らの合作。天明3年(1783)大坂竹本座初演。伊賀越の仇討ちを題材に、奈河亀輔ながわかめすけ歌舞伎狂言「伊賀越乗掛合羽のりかけがっぱ」の改作。「沼津」「岡崎」などの段が有名。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典「伊賀越道中双六」の解説

伊賀越道中双六
いがごえ どうちゅうすごろく

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
近松半二 ほか
補作者
並木三四助 ほか
初演
天明3.9(大坂・嵐座)

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世界大百科事典 第2版「伊賀越道中双六」の解説

いがごえどうちゅうすごろく【伊賀越道中双六】

(1)人形浄瑠璃。時代物。10段。近松半二・近松加作の作。1783年(天明3)4月大坂竹本座初演。上杉家家老和田行家の子息志津馬が姉婿唐木政右衛門の助力を得て父の敵沢井股五郎を討つまでを描いた作品。1776年(安永5)12月大坂嵐座上演の奈河亀輔作の歌舞伎を翌年3月に大坂豊竹此吉座で人形浄瑠璃化した当り作《伊賀越乗掛合羽(いがごえのりがけがつぱ)》に依拠するところが大きいが,敵を追う主人公たちの移動につれてさまざまな人々の義理と恩愛とにからんだ悲劇が次々と東海道筋に展開されていくという構想は本作独自の風趣を生み出すものとなっている。

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