食封(読み)ジキフ(英語表記)shí fēng

デジタル大辞泉 「食封」の意味・読み・例文・類語

じき‐ふ【食封】

律令制で、皇族・高位高官者・社寺などに禄として封戸ふこを与えた制度位封職封功封・別勅封などがあった。しょくほう。へひと。

しょく‐ほう【食封】

じきふ(食封)

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精選版 日本国語大辞典 「食封」の意味・読み・例文・類語

じき‐ふ【食封】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「じき」は「食」の呉音 ) 令制で、王族諸臣俸祿として賜わった封戸(ふご)。租の半分(のちに全給)と庸調のすべてを収取し、また仕丁も徴発できた。位封・職封・功封の別がある。位封は位階に、職封は職官に、功封は勲功に対して賜わるもので、戸数にはそれぞれの規定がある。しょくほう。へひと。→職封(しきふ)
    1. [初出の実例]「食封租壱仟壱拾肆斛玖斗陸升」(出典:正倉院文書‐天平三年(731)二月二六日・越前国正税帳)

しょく‐ほう【食封】

  1. 〘 名詞 〙じきふ(食封)

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改訂新版 世界大百科事典 「食封」の意味・わかりやすい解説

食封 (しょくほう)
shí fēng

食実封の略称。中国において王公に封ぜられた者が領内の封戸から収取する所得をいい,周・漢の食邑(しよくゆう)に当たる。六朝以降一般に封邑が名目的となり虚封が大半を占めるに至り,それと区別するため収入を伴う場合とくに〈食実封○○戸〉と称し,皇族や功臣の優遇に用いられた。唐制では実封戸の租庸調の1/3が領主に入り,2/3は中央政府の収入となった。はじめ封主が官を派遣して徴収に当たったが,のち中央が一括徴収して分与する制に改められた。唐制をとり入れた日本では食封(じきふ)(封戸(ふこ))と呼ばれた。
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食封 (じきふ)

封戸(ふこ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食封」の意味・わかりやすい解説

食封
じきふ

律令制(りつりょうせい)における俸禄(ほうろく)の一つ。令の禄令に定められている。親王、貴族寺院などに支給されることになっていた。特定の戸(こ)を公戸のうちから設定して封戸(ふこ)とし、そこからの租の半分、庸・調の全部、および仕丁(しちょう)を支給したものである。親王・貴族に与えられるものとしては、四品(しほん)ないし従三位(じゅさんみ)以上の位階にある者に位封(いふ)、太政大臣(だいじょうだいじん)・左右大臣に職封(しきふ)が与えられ、寺院には5年を限って封戸が支給された。また特別の功臣や天皇の命令によって別に支給される功封(こうふ)もあった。これらの食封は、中国の食封の制に倣ったもので、貴族・皇族の経済的基盤として大きな意味をもっていたが、平安中期以後しだいに衰退し、荘園(しょうえん)制度のなかに解消していった。

[鬼頭清明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「食封」の意味・わかりやすい解説

食封
じきふ

古代の封禄制度。皇族,諸臣の位階,官職,勲功者,社寺などに与えられた封戸。大化改新のとき,豪族の私地,私民を収公した代償として大夫以上に与えたことに始る。位封職封,功封,別勅封,院宮封などがあった。『養老令』では,親王にはその品位 (ほんい) によって 800~400戸,内親王には親王の半分,太政大臣 3000戸,左右大臣 2000戸,大納言 800戸,正一位~従三位には 300~100戸と規定されていたが,のちには寺社などにも与えられた。与えられた封戸は封主の直接支配におかれず,封物は国司,郡司を経て納入される形態をとったが,律令貴族の重要な経済基盤であった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「食封」の解説

食封
じきふ

「へひと」とも。封とも。律令制下の給与制度。皇族や貴族層に,封戸(ふこ)をあてて調・庸の全額,租の半分(739年以降は全給),仕丁を給付した。大化の改新後に設けられたとされ,天武朝の改革をへて大宝令で整備された。禄令に定める品封(ほんぷ)・位封・職封・中宮湯沐(とうもく)・功封・寺封・別勅封のほか,神封も存在した。その後,内臣(内大臣)・中納言・参議の職封や,東宮湯沐,無品親王の食封が新設され,太上天皇にも食封が支給された。封物量は封戸ごとに一定せず,のちに定額化が図られた。


食封
へひと

食封(じきふ)

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旺文社日本史事典 三訂版 「食封」の解説

食封
じきふ

律令制下,皇族・高位高官者・寺社などに与えられた封禄の一つ
大化の改新のとき,私地私民を廃止した代償として大夫以上に支給したのが始まりで,大宝令で完備。一定数の郷戸を封戸 (ふこ) に指定して,その租の半分,庸・調の全部および仕丁 (しちよう) を支給した。律令貴族の重要な経済的基盤で,一部の封戸はのち荘園化した。

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普及版 字通 「食封」の読み・字形・画数・意味

【食封】しよくほう

食禄として与えられた封地。

字通「食」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「食封」の意味・わかりやすい解説

食封【じきふ】

封戸(ふこ)

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世界大百科事典(旧版)内の食封の言及

【位階】より

…貴族階級とされるのは五位以上のものを指すと考えてよい。有位者は食封(じきふ),位禄,季禄,位田等を給されたが,食封は親王(800~300戸)と三位以上(300~100戸),位禄は四位・五位,位田(品田)は親王(80~40町)と五位以上(80~8町)を対象とした。季禄は春秋2季に,各人の官職の相当官位に応じて支給されるもので,六位以下の官人もその対象となった。…

【封戸】より

…日本古代の給与制度の一つである食封(じきふ)によって指定された戸を,封戸という。646年(大化2)のいわゆる大化改新の詔の中で,それまでの貴族等のもっていた私有地,私有民を廃止し,かわりに大夫以上に食封を支給することにしたことがみえる。…

【相続】より

…爵の種類は唐代を例にとると,国王,郡王,国公,郡公,県公,県侯,県伯,県子,県男の9等である。この爵位につき付与される〈食封(しよくほう)〉は後継者2,他の兄弟1の割合で分割相続する。後継者の基本は嫡妻(正妻)の長子で,これを〈嫡子〉といい,嫡子が死亡したり,刑を受けたり,病があったりすると嫡孫が後を継ぐ。…

※「食封」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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