民俗芸能。島根県松江市佐陀の佐太神社に伝承される神能。9月24,25日に行われ,24日の御座(茣蓙)替神事の夜には七座の神事が,25日の例祭には御座替神事を奉祝して,七座の神事《式三番》神能がいずれも境内の神楽殿で演じられる。御座替神事は神々が座る御座を替える神事で,古くは佐太神社の触下(ふれした)3郡半(秋鹿(あいか),島根,楯縫の3郡と意宇(おう)郡の半分)の神職がことごとく集まって行ったという。七座とは7番の神楽のことで《剣舞》《散供》《御座》《勧請》《清目》《八乙女》《手草》の7番が,採物(とりもの)に特色のある直面(ひためん)の神事舞として演じられる。神能は神話や神社の縁起を能風に仕組んだ面形の舞で,《大社》《真切孁(まきりめ)》《厳島》《恵比須》《八幡》《岩戸》《日本武》《三韓》《八重垣》《荒神》《住吉》《武甕槌(たけみかづち)》の12番から成る。現在は《厳島》《荒神》《住吉》と,七座の《八乙女》が欠落する。神能は近世初期に修験系の神楽能の伝承を,大成後の能の様式を範として神道流に整え直したもので,そのおりに能の《式三番》を加えた。現在は七座の神事を含めて佐陀神能と呼んでいる。囃子は七座が大太鼓(宮太鼓),締太鼓,笛,銅拍子。神能はそれに大鼓,小鼓を加えるが太鼓は用いない。近世を通じて中国地方の神楽に影響を与えたが,直接的には出雲地方に同系統の神楽が残る。国指定重要無形民俗文化財。
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
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